1話 ネバダ州ラスベガス『氣道』
2024/11/24
大幅に改稿を行いました。
会話パートが消えてバトル・シーンが読みやすくなってハッピーハッピーやんケ
2024/12/5
1話を大規模改稿した事で連鎖的に大規模改稿を行いました。バトル・シーンも更に合理的に進化しているぜ!
男はラスベガスの南で"掃除"を行っていた。酔っ払いや薬物中毒者をパーではたいて気絶させ、銃やナイフを持っているゴロツキ連中をグーでボコボコにし、自由気ままに旅を続ける日々を送っていた。
べつに誰に頼まれたわけでもない。ただ自分の快不快で戦っていただけである。だが、そんな彼はゴロツキよりも恐れられていた…
"掃除"からの帰り道、男は自分について考える。
俺の骨はどうやら金属製のようだった。人間の骨は普通カルシウムで作られるので自然にこうなることはありえない。昔どこかで手術でも受けたのだろうか、あの夢のような出来事と関係しているのだろうか。あれは夢だったのだろうか、現実だったのだろうか・・・
それに、俺には過去の記憶がない。知っている事は、前の俺は『ある男を殺さなければならない』と思っていたということだ。かつて殺意を覚えていたとしても、今では誰なのかもわからない人間をなぜ殺す必要があったのだろうか。
尽きない疑問を思っていると、突然右ストレートが男のみぞおちに直撃する。急所を殴られたが、鍛え抜かれた筋肉によってダメージは受け流された。
「ヒャー 普通一発食らったら失神するのにな まるで鉄のかたまりを相手にしているみたいだ」
「自分は黒沢と言います この町の人達に頼まれてあなたを殺しに来ました」
「あなたデス・ファイターって呼ばれてるんだってね」
「デス・ファイター?」男の闘争心に火がつく。
「死に急ぎの・ケンカ野郎ってことさ」
「へェ…」
「あなたは強い…だが強すぎた 僕の祖国では『出る杭は打たれる』という諺があります、あなたは強いが故にここで死ぬんです」
そう言うや否や、クロサワは男に飛び掛かり腹部へ怒涛のパンチ・ラッシュを繰り出す。
筋肉で受けてカウンターを決めようとした瞬間、とんでもない激痛が走り続けた。外部の損傷は全くないにも関わらず内側に痛みが迸る。先程の右ストレートは威力を大幅に軽減できていたが、この連撃に対してはダメージを殺せていない。なぜだ?
腹には丹田があり、脱力している時には丹田から全身へ"氣"が流れている。クロサワは脱力した状態でパンチを打つことで、パンチの勢いを利用し相手の体内に"氣"を流し込み男の神経にダメージを与えていた。これが所謂浸透系パンチの理屈である。
また、脱力によって疲労することなく高速でパンチを打ち続けられるのでバランスの良い技でもあった。このカラクリを見つけなければ、攻略する事はできない。
(この激痛を一瞬でも抑えられたら、こいつにカウンターを食らわせられるんだがな…)
男はとにかく殴り続けられたが、目の前の敵を倒す機会を窺って耐え続けた。ひたすらに耐えて、耐えて、耐えて、耐えて、
耐えて、
耐えて、
耐えて、
勝機を見出した。
「…"氣"が出ない!?」クロサワは驚いている。
「最初からこうすりゃよかったな」
クロサワの浸透系パンチの弱点は、距離という条件がないと発動しないことである。男は自分の外部損傷のなさからクロサワの攻撃を分析し、自ら腹をクロサワの拳に叩きつけてクロサワの拳の勢いを殺し、ダメージを抑えたのだ。
「こっちもお返しにいいもん叩き込んでやるよ」
カウンターとして叩き込まれたアイアン・ボーン・パンチはディフェンスの構えを取ったクロサワを軽々とぶっ飛ばした。
「デス・ファイター、D.Fか」
「かっこいい名前じゃねぇか」男は満足気にクロサワを病院へ担いで行った。