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第四話 続・バレンタインデーの共同作業

 媛乃木(ひめのき)の家に着いてインターフォンを鳴らすと「は~い」という声がして待つほどもなく扉が開いた。


 私服の媛乃木が出迎えてくれた。

 真っ白いプリーツ付ハイネックに、淡いピンクのハイウエストのミニスカート(しゃがんだら絶対……見えそう)と、スカート丈との間に()()()()を残した花柄を散りばめたオーバー二ーソックス。


(ヤバい、媛乃木の私服…マジ、可愛いぃっ♡)


 そして、何故か胸当てのある大きめのエプロンをしていた。

「いらっしゃい…こ、ここ、直ぐ判った?」

 彼女も緊張気味に訊いてきた。

「こ、こんにち、は……」

 勿論、女子の家を訪ねたのは生涯初めての経験で、俺もひどく緊張して声を絞りだした。

「あ、あの、これ……」

 俺が持参したケーキの包みを差しだすと、媛乃木は困惑顔だ。

「あ、ありがとう……でも、学園の授業の一環だし、気にしなくて良かったのに……」


「おっ、『ぷるぷる~ん』のケーキじゃないか?……只野(ただの)にしてはナイスなチョイスだっ!」


 川俣(かわまた)が横からケーキの包みを掻っ攫って言った。

 正直に言うと、川俣がケーキに詳しいのは(()()だけで店名を言い当てるとは)意外だった。


「只野さあ……いま、失礼なコト考えなかったか?」


(なぜ判るっ!? )


 俺は必死に顔を左右に、ぶん、ぶん、振った。

「そんなトコで漫才やってないで入ったら~~?」

 背後から舘野(たての)の声がした。

 見ると川俣も舘野もエプロンをしていた。


 ―― 何故だ?


 そのまま媛乃木の部屋に通された俺の緊張はMAXを記録していた。

「それじゃあ、後でお茶を持ってくるから好きなトコに坐っていて…」

 その言葉に俺が部屋を見廻すと、速攻舘野から突っ込みが入った。


「ベッドはダメにょ!」


(そんな()()()()()()、できません!)


 更に舘野が続けた。


「タダち、そこの白いチェストの一番下が下着だにょ♡ …開けて見るのはイイが、触るの厳禁にょ!…特に〝謎の白い液体〟とか、ぶっかけたら命はないにょ!」


(いや、『謎の白い液体』って!)


「な、なな、なんで、バラすのよぅ!? 」


 媛乃木が大慌てで声をあげたが、その背後から身体を寄せた川俣が耳元で何事か、ぼそ、ぼそっ、と囁いた。

「姫さあ、あち、こち、引っ掻き廻されてライディングデスクの一番下の引き出しの奥に隠した()()が見つかると拙くないか?」

 俺には川俣の言葉は聞こえなかったが媛乃木がひどく動揺しているのが判った。


 そして ――


「わ、判ったわ……た、只野くん…し、し、()()()()()()()は、許可するわ……で、でも、他は触るの絶対に駄目だから、良いっ!? 」


(いや、()()も無理ですっ!)


「そ、それじゃあ…わたしたち作業を続けるからゆっくりしていて…」

「えっ?……俺は、どこで何をすれば?」

「今日の只野の仕事は『作成したブツ』を受け取る事だ!……それまではのんびりしていろ!」

「は、はいぃ!? 」

 俺の疑問をスルーして三人は部屋から出ていってしまった。



 それから二時間余り、三人が部屋に戻ってきた。

「思ったより時間が掛かったね」

「朝から始めて正解にょ!」

(ひめ)が粘るのが悪い」

「だってぇ……」

「味見させられる身にもなるにょ!」

 何気に舘野と川俣から責められている(っぽい?)媛乃木が振り切るように言った。


「そ、それより……た、只野くん、お待たせしました!」


 一歩前にでた媛乃木に合わせて俺が正面に立つと、後ろに隠していた『何か』を彼女が差しだそうとした ――

 今日の俺の仕事は「『作成したブツ』を受け取る事」だと川俣が言っていた。

 これか? と思ったが舘野が口を挟んだ。


「ちょい待つにょ!……タダち、ヒメちの裸エプロン…見たいかにょ?…ご希望とあらば、剥いて進ぜるにょ♡」


「な、なな、なに、ひっへるにょ!? 」


 最近判ったコトだが、媛乃木は焦ると舌を噛んだり呂律が怪しくなる。

 そんな媛乃木に舘野があっけらかんと言った。

「下着も見せちゃたし、『裸エプロン』もアリにょ?」


「た、只野くん…み、みみ、見た、のっ!! 」


 媛乃木が、ぎんっ、と睨んできたが『見て良い』って言ったの媛乃木じゃん。


「み、み、見てませんっ!」


 しかし、俺は必死に無罪を主張したのだった。

 そんな媛乃木の耳元で川俣がまた何か囁いた。

「『本命チョコ』作ったんだから…それくらいのサービスは、ありだろ?」


「ち、違うから…ふ、普通のだから…ギ、ギリ、()()だからっ!」


 川俣の声は聞こえなかったが、媛乃木が『義理』を連呼する声は聞こえた。


(そんなコト判ってますよ、媛乃木さん)


 どうやら『チョコレート』らしいと判断したが『義理』連呼は俺のハートを削ってゆく。


「そ、それより、只野くん……は、早く…受け取って!…さ、三人から…こ、これは()()()()だから!」


 俺は緊張気味に、差しだされた包み(綺麗にラッピングされピンクのリボンが掛けられていた)を受け取ったのだった。



 それから『班活動』も無事終了したのでお茶にしようと相成った。

(俺、何もしてないんだが?)


「わたし、味見のし過ぎで少し胸焼けが……」


 媛乃木がそう口にしながら俺の差し入れた包みを開いた。


「やあ~ん♪…『カリカリバニラシュークリーム』にょっ♡」


 舘野の一オクターブあがった声に川俣が頷いた。


「うむ、只野にしては良いチョイスだ!」


 女子は良く〝甘いモノは別腹〟と言うが、筋肉女子の川俣の『別腹』は何処にあるのだろう?

 保険医の嘉藤(かとう)(女性、29歳、独身)の話では彼女の腹筋は割れている(シックスパッド)そうだが……。


 そんなこんなで、初めての『班活動』は無事終了……したらしい?



            【つづく】

感想、誤字指摘、等ありましたら、是非に。


R18ですがCi-enで活動ブログもしています。

https://ci-en.dlsite.com/creator/878

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