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ホントは引きこもりが向いてる人達


翌日。

朝食も自室で食べ、使用人からの扱いはまあ悪くないのだろうな、別にそう手間はかけないけれど…と思いながらサルラは執務室に向かった。食事中にノヴァから聞いた話では、旦那様となる方は少々女性不信の気があるらしい。大変だなぁと他人事に考えた。

その話をしたノヴァはサルラを先導し、ミリカも当然と言ったふうに侍女のお仕着せのまま着いてきている。ただミリカも大体の屋敷の構造は理解しているように見えたので、サルラは二人とも早いなぁとほのほの笑った。


昼を告げる鐘が鳴ってから少しして、サルラ達が執務室にたどり着いた。ノヴァが扉をノックすると「どうぞ」とランザックの声が微かに聞こえた。ノヴァが扉を開き一礼するとサルラに先を譲る。サルラもいたって普通に進み出て礼をした。


「おはようございます〜」

「あぁ、おはよう」


手で座ってくれ、と昨日も座った椅子を指されたので大人しく座る。後ろに二人が並んで下がるとランザックが顔を上げた。


「昨日はすまない。自分で言うのもなんだが、思っていたより話の進みが早くてな…」

「いえ〜、わたくしも驚かせてしまいましたし」

「まぁな…」


昨日の発言の非常識さは分かっているので軽く謝罪をしたサルラは、思ったよりもランザックの反応が悪くないことを意外に思っていた。普通の貴族男性であれば失望して相手にしなくてもおかしくない。庶民の仕事を望む令嬢は普通いないのだ。


「…貴女は私が求めているものをわかっているか?」

「ええ〜とぉ、お仕事の邪魔をせずに公爵家の妻の役目を果たしてくれるそこそこの家柄のお飾りの妻でしょうかぁ?」

「……すまない」

「あらぁ、素直に認めないで〜。冗談ですわぁ」

「冗談には聞こえなかったんだが…」


ランザックは完全に分かっていない顔をしていたし、サルラは遊んでいるのにも気付かれずに慌てて否定した。ランザックは自分の求めていることが非常識であることは重々分かっているので、元からの天然に拍車がかかってサルラを慌てさせたのだ。

トランはこの時点でこの二人は意外と相性がいいんじゃないかと思っていたし、ノヴァとミリカはランザックはこれから苦労するだろうなぁと考えて、しかしサルラが焦っているところも珍しいので楽しんでいた。


「…まぁ、分かっているなら隠さずに話すが。私は今年で25になるんだが、婚約者が決まっていない。ちょうど同い年の令嬢が少なかったのと、決める時期に領主交代が起こってしまってゴタゴタしてな。忙しさにかまけていたらこの歳だ」

「悪いことではないでしょうし、たまにはあることだと思いますが〜」

「この家柄だからな、王家が『令嬢達が奪い合いを本格的に始める前に婚約者か妻を決めてくれ』と」

「……あらぁ?確か今、王女殿下がいらっしゃいましたよねぇ。もしかしてですけど惚れられてしまっているんですかぁ〜?」

「…女性はみんなわかるのか?」

「さて〜、どうでしょう?」


サルラはうふふふ〜と手を頬に添えて笑った。少し考えれば、いかに三大公爵家であろうと王家から直々にその話が来るなら思いつくが。女性関係にはとんと疎いランザックは若干青い顔をしたものの、肯定した。


「…まぁ、そうなんだ。堂城する必要はあまりないからいいんだが、視察という名目で何度も領地に来られてな」

「まぁ〜、それはまた傍迷惑な王女殿下ですわねぇ」

「お嬢」

「あら失礼〜」


ほのほの笑ったまま口を手で押さえているサルラを見てランザックは驚いたように目を丸くしていたが、トランの間を取り持つような声にはっとして苦笑いを浮かべた。


「実際迷惑ですからね」

「…そうだな。それに困ってこうして貴女がここに来る物を出したんだ。貴女が何を言っても私には止める権利はないだろう」

「なんとなくわかってましたが〜、真面目ですねぇ〜」

「そうか?」


ねぇ?とサルラがランザック以外に同意を求めるように視線を回すと、トランは苦笑い、従者二人は微笑んでいるだけで皆概ね同じ心境だなと思ったサルラはニコニコ笑った。


「では、パーティーへの出席頻度はいかがですか〜?」

「大体は王家主催や他の三大公爵家からの招待だけになる。基本的にこの場所から離れられないし、王都には私の祖母がまだ存命だから社交にはあまり顔を出していないんだ。あとは同じように国境警備をしている家がたまに開くものには行くな」

「ではそこで虫除けとぉ、あとは結婚式も早々にやった方がいいでしょうか〜?」

「そうだな。資金はある程度あるし、王都でする理由もないからここでやればいい」

「結婚式を挙げる前に〜、だとか言って押しかけられて既成事実を作られないようにお気をつけくださぁい」

「…………」

「失礼〜、でも本当にお気をつけてくださいねぇ。女は時にひどく恐ろしいですからねぇ」


少し青ざめたランザックに、困ったような顔で謝りながら忠告したサルラは変わらず穏やかだ。


「公爵様は女性にあまり夢が無いご様子ですねぇ」

「…すまない」

「あらぁ、謝らないで〜。その辺りも察して来ていますからぁ」

「……貴女は不思議だな。普通の令嬢なら泣くか癇癪を起こすかするものだと思うんだが」

「わたくしも少々特殊ですの〜、話しても捨てられないのであればお話しいたしますわ〜」

「…………捨て?」


ランザックが若干引き攣った顔でいるが、サルラは微笑むばかりだ。


「案外あっさり教えてくれるんだな。警戒されているものだと思っていた」

「なるようにしかならないのですもの〜」

「そう、か…?まぁ、今回のことは私から申し込んだことだし、貴女に噂の一つも無い時点で何かしらはあると思っていた。なんでも受け入れるつもりだ」

「あらぁ、まぁ…それでは、変わり者夫婦と言われてしまいますわねぇ」

「いいんじゃないか?どうせ何か言っても手出しはできないんだ」

「うふふ、それもそうですねぇ」


ランザックは公爵としての権威と効果をはっきり分かっている。人間としての自信はそこそこしかないため、たまに他の人が驚く発言が出る。だがサルラも細かい事を気にするような性分では無かったためおおらかに肯定して流した。


「では、少しわたくしの家のことをお教えいたします〜」



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