表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ブルーライト擬人化

作者: あまがみ

私は図書室のパソコンでよく調べ物をしていた。図書委員だからずっと居ても不思議な目では見られなかった。図書室を利用する人はほとんどが自習で、本を借りることが無いので特に仕事もない。図書室にいる時間が癒しだった。


「青木さん」


私の名前が呼ばれ、はいと返事をする。そこには赤羽くんがいた。彼はこの学校では珍しく本を借りる人だ。図書委員をしているので面識はあるものの、それ以上でもそれ以下でもない。


「貸出ですね」


彼が手にしていた本を受け取りバーコードを読み取る。今回は物理学の本らしい。

彼は本を手にすると、図書室を出た。

今日の貸出は赤羽くんだけ。いつも通りだった。

何気ない一日が終わった。


翌日


私は一番に学校にくる。教室に入ると暗く、ガランとしているのが何故か嬉しい。

荷物を置いて、職員室に図書室の鍵を取りに寄って、図書室に向かう。そこから一限まで図書室のパソコンを使う。これが日課となっている。朝は誰も図書室を使わない。やはりここもガランとしている。私はパソコンの前に座った。


もうすぐで一限が始まる時間になる。パソコンの電源を切り教室に向かった。扉を開ける。皆が揃っている。目線を感じた。しかしその目線はすぐに消えた。教室の居心地は良いとは言えない。


一日の授業を終えいつも通り図書室に向かった。しばらくパソコンを使っていると私の名前を呼ぶ声が聞こえた。しかし、それは赤羽くんの声ではなかった。


「青木さん、青木さんの悪い噂たってるよ」


声をかけてきたのは浅黄さんだった。私は浅黄さんの言っていることが理解し難く、しかし、全く思い当たる節がないと言えばそうでもない。闇雲に思考を巡らせて何も返せないでいた。その間に浅黄さんは、私は気にしないけどと言い、図書室を出ていった。元々人との関わりが少なく、自分が誰かの印象に残り、噂になるなど想像だにしなかった。ただ、その噂が悪いものとなると悪い記憶ばかり蘇り、そのどれもが心を蝕む。その日の午後は長かった。


翌朝、いつもより随分遅い時間に起きた。それほど夜遅くまで不安が消えなかった。この日、遅刻することはないが、朝、図書室に向かう時間はなかった。


教室の扉に手をかける。中には既に数人がいた。しばらく扉を開けることは無かった。

そうしていると、後ろからおはようと挨拶をされた。赤羽くんの声だった。振り返ると、目を逸らした赤羽くんが立っていた。小声か、心の中で、おはようと言うと震えた手で扉を開け、教室に入る。扉の音がすると皆扉の方を見る。その目線は普段よりも何か嫌な気持ちにさせた。


その日、他人が自分に接する態度を極端に変えることはなかったが、他人の目が気になっては不安が募った。


一日の授業が終わると、そそくさと図書室に向かった。今はもう何も考えたくない。誰も見たくない。誰にも見られたくない。


自分がどういうものなのかを自分でさえ知らなかった。ただ、こういう時に泣いてしまうものだと初めて知った。声をあげることはないが、どうしても視界が歪む。喉にある大きな詰まりを取りたくて、唾を飲む。


「青木さん、大丈夫?」


見上げると、そこには赤羽くんが立っていた。涙で歪んでいたが声も合わせて、それは確かに赤羽くんだった。泣き顔を見られたくないと思い、顔を背ける。


「何しにきたの」


私はその答えを知っている


「青木さんが心配で」



「…」


しばらく沈黙が続いた。

先に切り出したのは私だった。


「赤羽くんだよね…私の噂」


声が震えて最後まで言いきることが出来なかった。それなのに私は落ち着いていて、涙もこれ以上流れることはなかった。


「…うん」


赤羽くんは小さく頷いた。


「でも僕は」


「じゃあ眼鏡外してよ」


強くなった口調で赤羽くんの言葉を遮った。

赤羽くんは普段は裸眼だった。しかし今日は私ばかりを映す眼鏡をしていた。


「…」


赤羽くんは何も答えない。

私はそんな赤羽くんを押し倒した。

赤羽くんに覆いかぶさり無理やり眼鏡を奪うと、その眼鏡を放り投げた。


「ちゃんと私を見てよ!なんで!なんで!なんで!」


赤羽くんは手を目に当てて、何も言わなかった。


「もういい」


私はただ家に帰ることだけを考えて、その場を立ち去った。

図書室には赤羽くん一人が残された。


その日以来、私が学校に行くことは無い。

タイトル通り、可視光線達を擬人化したお話です。

ブルーライトカット眼鏡が流行りましたね。実はブルーライトが目に悪いという科学的根拠はないです。ブルーライトが可視光線の中でも短い波長で、高いエネルギーを持つことからこのような噂が広まって、それを眼鏡会社が便乗した訳ですね。その後アメリカなどの研究によりブルーライトが目に悪いことはないとわかりましたが、現在でもブルーライトの悪影響を信じている人は数多く、ブルーライトカット眼鏡の需要があります。しかし、ブルーライトはただの可視光線で、人体になんの影響もないかと問われるとまた異なります。ブルーライトは朝を認識させ、脳の活性化に関与していると言われています。そのため、夜中にスマホやゲーム機などを利用していると寝つきが悪くなったりすると言われています。私はそれが微々たるものだと感じているのですが皆さんはどうでしょうか?ただ、科学というものは常に変化が付き物です。時代によって似非科学がどんなものかも変わってきます。錬金術があった時代よりはかなり発展したでしょうけど、まだまだ誤った情報は多いです。私は情報リテラシーを身につける上で最も大事なことはより沢山の多角的な情報を集めることだと考えています。

さて、今回のお話について、非常に悩んだことについて話したいと思います。今回のお話の場面は学校であり、その中で起きたことはいじめ問題に絡んでいます。ここでいじめっ子を登場させずにいじめられているという表現をしたい為にかなり悩みました。私はいじめ問題について、いじめっ子一人のみで行われることだとは考えていません。私の周りでは一人の人間に向けられたみんなの持つ不信感等が一部の人間が触媒となり攻撃に変換されていました。そのため、「いじめ」という認識が緩く、教員もまたその不信感等を抱いている一人であるため、我に返る頃には被害者がいじめの蓄積による不安定な精神状態を作っていることが多々あります。さらに不安定な精神状態をいじめっ子自らが作っているにも関わらず、いじめっ子はその不安定な精神状態を理由にいじめを続けていることがあるので、結果だけ見た人が「いじめる側にしか非はない」と一概に言えなくなっているのです。他作品ではいじめの発端が書かれることが少なく、その点ではこのお話には新鮮味があると思います。仮に青木さんがこの噂が維持している状態が続いている学校に通い続けていたらいじめっ子が現れるかもしれませんね。名前をつけるなら緑がついている名前にしますかね。自分と近しい人間に向ける劣等感的な…?

しかしこの話の世界の物理学の本は現実で言うと解剖学あたりになるのかな?

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ