滝川雪を探れ③
「とりあえず泊まる部屋はここね。こっちで全部手配したから、好きなだけいていいよ。ベットとか家電とか最低限のものはある。もし必要なものがあれば言って、買っておくよ」
「高原くん凄いね…。何者なの?」
「うちの父親がオーナーってだけだよ。」
本当は俺が稼いだお金で買った投資用マンションで、父親を名義に据えただけなんだけど、それは伏せておこう。
「あ、必要なものあった。」
「え、なに?」
「下着。一緒に選んでくれる?」
「し、下着!?いやいやむりむりむり」
「ふふっ。冗談だよ。高原くんからかいがいあるね。ちょっと制服着替えたいから、後ろ向いてて」
「え、」
「何、見たいの?大胆だねぇ。」
「違う違う!向いてます!」
俺は急いで後ろを振り向く、衣擦れの音が聞こえる。
「もうこっち向いて大丈夫だよ。」
振り向くと俺のTシャツとズボンを履いた雪ちゃんが笑顔で立っていた。
「やっぱ男物だとダボダボだねぇ」
「とりあえず服とかは田中とかに明日にでも買ってきてもらうから」
「へへへ。ありがとう。高原くんの匂いがするね」
服に顔をつけて、雪ちゃんは匂いを嗅いだ。
「ご、ごめん、臭かった?」
「ううん、おじいちゃん家の匂いって感じで落ち着く。それでなんで家に帰りたくないかでしょ?」
「うん、俺に話せる話なんだったら」
「ここまでしてもらって、何も話さないのは失礼だしね。私ね…兄に身体を触られてるの…。」
「え!?お兄さんに!?両親はなんて!?」
「お兄ちゃんは可哀想だから我慢してとしてしか言わない…。最初はね。髪を触られるぐらいだった。次第にエスカレートしていって、そのうち襲われてしまうかもしれない…。」
雪ちゃんのいつもニコニコとした顔はそこにはなく、目に涙をためている。、
「学校にも行かなきゃ行けない。ずっとここになんていられない。でも家に帰ったらあいつがいる。親も頼れない。ねぇ私どうしたら良い…。」
不安そうに俺を見つめる瞳。
「君の親と話そう。それでここから学校に通うことを俺も一緒に説得する!」
「ダメって言われるに決まってる!!」
「その時は俺が何とかする。任せてほしい」
雪ちゃんは消え入りそうな声でうんと呟いた。
まずは雪ちゃんの両親の説得。上手く行けば兄と引き離す…。上手く行かなければ兄を消せば良いだけだ。
「ちょっと色々準備もあるから、両親の説得は明日にしよう。警察を呼ばれてもあれだから、雪ちゃんは友達の家に泊まるとだけメールで親御さんに伝えといて」
「うん、わかった…。」
俺は携帯を取り出し、田中に電話をかける。
電話が繋がると、滝川さんがいる部屋から外に出た。
「陛下!何用ですか!?」
「…まあいい。とりあえず滝川さんから事情を聞いて、俺の父親が持っているマンションに入ってもらってるから、田中、生活に必要なものを見繕って持っててやってくれ、金は俺が出すから。」
「かしこまりました!それで滝川はなんて?」
「俺からは言えない。明日滝川さんと会う時聞いてくれ。頼んだぞ。」
「はい!陛下!それとお願いが御座います。」
「ん?どうした?」
「田中だとクラスにいっぱいいますし、私のことは名前でお呼びください!」
「わかった。頼りにしてるぞ由美」
「はい!!!」
名前を呼ばれただけで何がそんなに嬉しいんだ。俺は電話を不思議に感じながら、電話を切った。
『本当にその子を助けるの?』
「その子って雪ちゃんのことか。当然だろ。それが目的だったんだから」
『あんまり深入りしちゃいけないんだけど、君を気に入ってるから一つ忠告しとくね。弥生ちゃんが自殺したのはあの女が原因だからね。』
「それは…薄々だけどわかってる。」
『君や弥生ちゃんが虐められた原因もあの女だよ』
「それは、どういうことだ!?」
天使は前世の世界の出来事を話し始める。
雪ちゃんがお兄さんに強姦され
精神を病んで、幸せな人間に不幸をばら撒くようになったことなどを話した。
雪ちゃんが…あの女が俺たちの全てを壊した張本人なのか…。黒い感情がどんどん湧いてくるのを必死に抑えつける。
「でも…あの子が歪んでしまった原因を取り除けばいいだけの話だ…。」
『君は優しいね。でもそれは君が痛ぶってきた角田くんや根岸くん、天童くんにも言える話じゃないのかい?』
「あいつらは違う!雪ちゃんとは違うんだ!」
『君はあの子を美化しすぎだよ。いいかい。君の行動に僕は反対はしない。彼女を助けたいなら助けると良い。だけど、いや…なんでもない…。』
天使は何かを言いかけたが、そのまま苦い顔をして、言うのをやめた。
目の前に助けを求めてる子がいて、それを見捨てるなんて無理だ。




