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一人目

「ねぇ聞いた?ヤンキー狩りの話」


「ヤンキー狩り?親父狩りじゃなくて?そんな怖いもの知らずな人いるんだ?」


「怪しげな仮面かぶって、何人も病院送りにしてるみたい」


「仮面ってそんな漫画みたいなこと…ねぇ弥生はどう思う?」


「え?ごめん何の話だっけ?」


「もうぼーっとして、もうすぐ中学生になるんだから、しっかりしないと」


「えへへ、ごめんごめん。」


あれから涼介くんは今までのピリピリしていた空気がなくなったみたいに優しくなった。

ただ上手くは言えないけど、昔の彼とは違う気がする。

私も変わらなきゃいけない。守られてるだけじゃなくて、隣に立って彼を支えたいと、そう思った。




『空振り三振!』


あるマンションの一室。テレビの野球中継の音が部屋に響く。それを食い入るように見てる坊主頭の少年の名前は角田慎吾という。

彼は幼い頃から元野球選手の父の指導を受け、育ってきた。元野球選手と言っても、日本プロ野球ではなく、独立リーグの選手だった。

父親はプロ野球選手になれなかったが、その夢を彼の息子たちに託した。慎吾の兄は現在、他県の名門校に野球留学をしている。

兄の後に続くべく、慎吾も父親が監督しているリトルで研鑽を積んでいる。


「ちょっとシニアに向けて、試したいことがたってさ、練習してくる!」


「こんな時間に?最近物騒だからやめときなさいよ。」


「ヤンキー狩りの話?俺ただの野球少年だし、大丈夫だよ。」


「あんまり遅くならないでね」


「わかった!」


マンションの駐車場で壁当てを今までしていたが、住民からクレームが入ったことにより、それもできなくなった。なので最近は専ら近所の運動場に自主練に行っている。慎吾は今回もそこの運動場にボールとグラブを持って投球練習をしに行こうとしていた。

この運動場付近は川沿いに面してるため、人と通りも少なく、クレームなどもこないから都合がいい。


慎吾が自転車を漕いでいると、後ろから車のライトで照らされる。ここは狭い道のため、車一台通れるか、ぎりぎりの道だった。慎吾は一旦スピードを緩め、車に道を譲ろうした。車は緩やかなスピードで慎吾に近づいて来る。

慎吾を抜き、車が横に来ると、急に停車して、ドアが開いた。

そのまま慎吾は車に引き摺り込まれた。


「何すんだ!?降ろせよ!」


必死の抵抗で暴れるが、相手は体格のいい大人が3人もいて、自分など簡単に押さえつけられてしまった。そこからタオルで腕を縛られ、目隠しと口も塞がされてしまった。

あれから、どのぐらい経ったか分からない。かなりの時間車で走っていた。裕福な家庭でもなく、自分の性別は男のため、何故自分を誘拐したのか、慎吾はわからずにいた。何をされるかわからないという恐怖で慎吾は全身が震え、失禁をしてしまう。

車が急に止まると、ドアが開いた。降りろという若い男の指示で慎吾は周りの男に抱えられ、車から下ろされた。

辺りは何も音が聞こえない。人気のない場所に連れ去られてしまったようだ。

重い扉が開く音がして、その方向に放り出される。


「約束のお金は振り込んでおくから、また宜しくね。」


「毎度。俺らは帰りますんで、また何かあれば」



男一人を残すと、他の人間は車に乗り帰っていた。慎吾の目隠しを男は外していく。

視界が晴れると、そこは薄暗い倉庫の中だった。辺りを見回すと出口は一箇所しかなく、どうやら施錠されているようだった。そして慎吾の足には鎖が繋がれており、倉庫の中心の柱に括り付けられていた。

だんだん目が慣れて来ると、目の前の男のシルエットが見えてきた。


「久しぶりだね慎吾。」


そこには慎吾と同い年ぐらい男の子が仮面をつけて立っていた。久しぶりだねというが、見たこともない少年だ。


「誰だお前?」


「忘れちゃったのか?酷いなぁ。俺の大事なものを奪ったくせに…」


ここから始まる。彼の復讐の物語が…。

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