俺が死んだ後の世界
今回過去を遡って新たな人生を送っているわけだが、過去のトラウマや経験は遡ったとしても消せるわけではない。栗原は俺の人生のトラウマを凝縮したような存在だった。
最初は些細な苛めだった。授業中、ちり紙を後ろの席から投げられたり、実験台でプロレス技をかけられたり
それが次第に酷くなって、動物の死骸が下駄箱に入れられたり、みんなの前でパンツを脱がされたりもした。栗原たちのグループだけでなく、クラスの人間や今まで友達と思っていた奴らまで俺を腫れ物扱いした。
ずっと我慢していた。こんなのは卒業するまでの辛抱だって
俺はある日部屋から出ようとすると震えが止まらなくなって吐いていた。俺は学校に行かなくなった。
過去を遡って俺は強くなった。勉強や運動、それに格闘技のスキルだって、大人にだって負けないレベルだ。しかも相手は小学生の栗原だ。怖いはずがないのに、俺は部屋からでることができなかった。
たけしやえりかに体調不良で行けなくなった旨を電話で伝えると、また今度ということになった。俺のせいでたけしのデートをめちゃくちゃにしてしまったことを謝ると、たけしは気にすんなと笑ってくれた。
電話を終えると俺はベットの上に横になる。
トラウマを克服するにはこんな努力じゃ足りない。完璧な自信をつけないと。
俺はその日から様々なスキルを身に付けるために、日課のトレーニング量や勉強時間を更に増やした。遊んでる暇なんてない。
中学生になるまであと少ししかないんだ。
「涼介くん大丈夫?すごいクマだよ。」
休み時間に勉強をしていると弥生が声をかけてきた。心配そうな目でこちらを見ている。
「人生の目標がはっきりしたんだ。それまで時間がない。放っといてくれないか?」
俺はイライラをぶつけるように強く言い放つ。会話をしてる暇なんてないんだ。
「り、涼介くん受験するんだっけ?」
「しないよ。近所の中学に入るつもり」
「なら、なんでそんなに無理して‥」
「俺にもう構うなよ!俺のなんなんだよお前は!!」
前世で俺はいじめらている弥生を助けて代わりにいじめられるようになった。今の弥生にはそんなこと知るはずもないのに、言葉を飲み込めず吐き出してしまった。
俺が大きな声を出したからかクラスの視線が俺たちに集中した。バツの悪そうな顔をして、弥生の方を見ると、目に涙をためて、走って教室から出ていってしまった。
追いかけて謝ろうとしたが、踏みとどまる。
中学に入って栗原に復讐すれば全てがうまくいく、弥生もきっとわかってくれる。
「涼介最近付き合い悪いよなぁ。」
「確かにねぇ。まああんたみたいなやつと違って涼介は繊細だから色々あるでしょ!」
「えりかお前はいつも一言余計なんだよ!なあ宮村何かお前知らねぇか?この前言い争いしてたろ?」
「ばか!なにいってんの!」
たけしが無神経に弥生に言葉を投げるのを
手をバタバタさせて慌てて静止するえりか
涙を滲ませる目の前の女の子を見て
たけしもしどろもどろになってしまう。
「…っ……!わた…し…嫌われたら……どう‥しよ‥」
涼介に言われた言葉を思い出し、抱えているもののせきがきれた。
あれから話しかけても心ここにあらずという感じで笑いかけてもらうこともなくなった。
両手で顔を覆い泣き崩れる。小学生の女の子にとって、好きな相手に無視されることはどんなに辛いことだったか容易に想像ができる。
彼女は泣き虫だった。しかし、涼介の隣に立ちたいという気持ちから彼女は成長した。
無下に扱われても、無視されても話しかけ続けた。
もう彼には自分は必要なんじゃないかと何度も考えるようになった。
「そんなわけない!」
弥生の感情を遮るように、大きな声でえりかが叫ぶ。
「絶対に嫌いになんてなってない。」
そっと抱き締め、頭を撫でる。
ゆっくりと言い聞かせるようにえりかは言葉をつむぐ
「あいつに何があったかなんて知らないけど‥これだけは言えるよ」
「涼介に一番必要なのは、弥生なのよ」
夕焼けに照らされる教室の中で、泣き虫の少女は決意を固めた。
残っているクラスメイト一同はこう思った。えりか様かっこいいと‥‥
「全く最近のあなたは見るに耐えませんね」
「何がだよ‥俺は普通にやってるよ」
出てきて早々、説教がましい天使に少し苛立ちを覚え、言葉が刺々しくなってしまう。
俺の態度に軽蔑したような目で、
「そんなんだから幼馴染を死なせる破目になったんですよ」
「え、今とんでもないことさらっと言ったよな。嘘‥だよな?」
あり得ない現実を突きつけられ、自分が冷たくあたったせいなのかと‥色んな思考が頭をめぐる。弥生の安否を確認するため、彼は部屋を飛び出そうとするのを天使が制止した。
「前世の話ですよ。あなたの可愛い可愛い幼馴染はあなたが死んだあと、命を絶ちましたよ。」
「なんで…弥生が…」
「説明するより見てもらった方が早いですね。貴方の死んだ後の世界を」
天使が手を宙にかざすと、巨大なスクリーンのようなものが出てきた。そこに映し出されたのは俺が住んでいた街の航空写真のようなものだった。
「あなたが病院に運ばれた所から見てもらいましょうかね。助けられた女性が直ぐに救急車を呼んでましてね。」




