イケメンヤンキーに初恋の彼女をNTRされた件
新年が開けて、世の中が盛り上がっている頃
テレビの灯りだけが光っている薄暗い部屋の中で
俺は1人ただ横になっていた。
いつからだろうか
こういった特別な日が特別じゃなくなったのは
お正月もクリスマスも誕生日も
いつからだろうか
1人で部屋で迎えるようになったのは
それすらも忘れてしまうぐらい長く
俺はここにいる。
そんなどうしようもない人生を嘆いてる時
ふと携帯のバイブが鳴る。
どうせ公式アカウントのあけおめラインかと思ったが
どうやら幼なじみからのあけおめライン電話だ。
「あけおめ!元気?死んでない?」
「死んでない。精神的には死んでるけど」
「元気そうじゃん!良かった!」
こいつは俺の話の何を聞いてたので
精神的に死んでると言っただろうが
俺の幼なじみ宮村弥生はこういうデリカシーのないやつだと思い出して、追及はしないことにした。
「今、初詣きてるんだけど、久々に雪ちゃんに会ってさ、覚えてる?」
雪ちゃん…俺の好きだった子
いや今も好きかもしれない
俺の初恋にして、最後の恋だ。
「クラスのマドンナだった子の名前は忘れないわさすがに」
「雪ちゃん結婚したみたい!いやー月日は早いね」
弥生の言葉に俺は言葉がでないぐらい衝撃を受ける。
あの雪ちゃんが結婚…嘘だろ…。
平静を装うとするも、声が震えてしまう。
「相手誰だと思う?あのヤンキーの栗原くん。いやー雪ちゃんと全然似合わないよね。というよりちょっと雪ちゃんには失望しちゃった……。まあ私なんか誰かさんのせいで彼氏の一人もできたことなくてね。。って、もしもし聞いてる?もしもーし」
俺は無言で電話を切る。言葉をこれ以上発せなかったからだ。
雪ちゃんが結婚、しかも俺をいじめていたあの栗原と
なんで…あんなやつと…
雪ちゃんへの失望と栗原への怒りと自分の不甲斐なさに涙が出る。
そして、俺の出した答えは
「死のう…」
俺はそう答えを出し、家を出た…。
どうやって死のうか
電車に飛び込む、時間も深夜だし、動いてない。
首吊り、まずロープがない…
どこかで買うか、財布は家だ…
自殺すらできない無計画さ、自分の無能さ、勇気のなさに腹が立つ。
「帰ろう…」
はじめから雪ちゃんと付き合えるなんてまず起こらないし、何を期待して、何に裏切られたんだ。
そんな資格すら俺はないじゃないか。
次生まれ変わったらもっとまともなやつになるのに
今さら後悔しても遅いけどな。
何だ、こんな深夜なのにうるさいな
騒がしい方に歩いて行くと、黒ずくめのダウンを着てる男と綺麗な女性が口論していた。
よく聞き取れないが、女の人は嫌がっているみたいだ。
助けるか…いや痴話喧嘩な可能性もあるしな。
何より面倒ごとにはかかわり合いたくない。
踵を返して、別の道で帰ろうと思ったとき
女の人の悲鳴が聞こえる。
俺はいつの間にか体が動いていた
振り返り、先程の方向を見ると男がナイフを取り出している
無我夢中で俺は走った。
男のナイフが女性を刺そうとしたそのとき
俺は無意識に彼女の前に出ていた。
「面倒ごとには巻き込まれたくなかったのにな…」
道路に血が落ちる。
目の焦点が合わず、だんだんぼやけてきた
身体の力が入らず倒れこむ
最後に誰かを救えて、役に立てて良かった。
無価値の俺にようやく価値が出たんだ
最後ぐらいかっこいい死に方で良かった
意識が段々となくなっていく、
生まれ変わったらあんなやつに、絶対雪ちゃんを渡さないのに…
『その望み私が叶えましょう』
その言葉を聞いたのを最後に、俺の意識は消え去った。