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第40話 ルルナの力

「わああああああぁぁ!!!! すごい! 私たち、今、空を飛んでるわよ!!!!」


 妖精シルフの風魔法によって、巨大ワームの口から飛び出した俺たち。


 さながら大空を舞う鳥獣(ちょうじゅう)族ハーピーのように宙を飛んでいる。


「えっへへー! 凄いっしょ!? 私!」


 渾身のドヤ顔を向けてくる妖精シルフ。


「凄いですっ! シルフさん、こんな魔法が使えるんですね!」


 チェルシーだけじゃない。


 ルルナも。


 そして、俺も──


 刺激的なイベントに、心が踊っていた。


 今更だけど、本当にファンタジ―世界で、ファンタジーな出来事を経験しているんだ。

 

 俺は子供のように胸をトキメかせていた。


 まるで、初めてゲームをプレイした時のようなワクワク感。


 今の俺は裏ボスだが、心は少年の頃に戻っていた。




 そうして、花びらがヒラヒラと舞い落ちるように、俺たちは地面に着地した。


 その直後──


「シュハアアアアアアアアアアアッッッ!!!」


 感動体験をブチ壊すかのように、眼前の巨大ワームが大きな口を開け、再び俺たちに迫ってきた。


「んもうっ! しつこいわよ! この芋虫!」


 俺たちは既に『土のリング』を手に入れている。


 ここでの目的は済んでいるのだが、肝心のメインクエスト《巨大ワームの大好物》はクリア扱いになっていない。



 ──この巨大ワームを討伐していないから。



 巨大ワームの中にいた男との戦闘は前座であり、このメインクエストの本番はコイツとのバトルなのだ。


「ルルナ、『風のリング』は装備しているな?」


「はいっ! もしかして……ワームさんとのバトルでしょうか……?」


「ああ」


 俺が短く答えると、ルルナの表情が引き締まった。


 この巨大ワーム戦はパーティーバトルなのだが、この後に控える大ボス戦のために主人公(ルルナ)をレベルアップさせておきたい。


 俺とチェルシーはバトルに参加せず、ルルナ一人で討伐してもらうのだ。


 ボスをソロで攻略すると、倒した人間に多く経験値が分配される。

 このシステムを今こそ有効活用するべきだ。


 次の『光のリング』イベントは、主人公のみの強制バトルがある。


 巨大ワームは、その難敵に勝つための糧になってもらう!


「グギギッグギッ…………シュウウウウウウウウッッッ!!!!」


 雄叫びとともに、巨大ワームの口から(よだれ)が飛び散る。


 ワームにとって大好物の香草付き人間。

 俺たちは豪華ディナーのメインディッシュなのだ。


 しかし、大人しく食べられるわけにはいかない。


「ルルナ! 今なら風魔法を使えるはずだ! そいつをワームに食らわせてやれ!」


「わかりました! ハァァァァ──」


 ルルナが魔力を溜める。

 すると、指に嵌めた『風のリング』が徐々に緑色の光を帯び始めた。


「うっわ! 起きて早々、まーた仕事!? ったくぅ! コレが終わったら、私また寝るからね~~~~~はぁぁぁぁ」


 風の妖精シルフが大きな欠伸(あくび)をしながらルルナに魔力を注ぎ込む。


 なんだかんだ文句を言いつつ、しっかりと主人公をサポートする。

 シルフもゲームどおりの『ここぞという時に頼れる』やつだ。


「シュハアアアアアアアアアアアアアアアアッッッ!!!!!」


 腹を空かせた巨大ワームが、我慢できないとばかりにルルナへ向かってくる。


「ルルナ! 気をつけて! ワームが来てるわよ!」


 チェルシーが声をあげた瞬間──


 ルルナが、カッと目を開いた。

 そして、溜めていた魔力を掌に集中させ、巨大ワームめがけて一気に放出した。


 ルルナの手から放たれた緑の光は巨大ワームを一瞬で貫く。


「ギュアアアアアアアアアアアアアッッッ!!!!!」


 風魔法を正面から食らった巨大ワームは、大きな叫び声をあげ地面に倒れ伏した。


 悶えるように、身体を地面に這わせる巨大ワーム。


「…………はぁ……はぁ」


 一方、肩で息をするルルナ。


 それだけ使用した風魔法が強力だったということだ。


「……す、すごい!! すごいわ! ルルナ! それに、シルフも……!」


「へへんっ! どーよ! これが私のチカラよ! きゃーっはっはっはっは! ってことで…………私、寝る!」


 シルフは言うや否や、リングの中に戻ってしまった。


 直後、リングの中から寝息が聴こえてきた。


 随分と寝つきの良い精霊である。


 しかし、そのチカラは本物だった。

 他の精霊から実力を認められるだけのことはある。


 圧倒的な魔法力だった。


「これで、土と(ほこり)と砂にまみれた《ノームランド》とはオサラバかしらね?」


「いや、まだだ」


「ん? まだ他に何かすることがあるの?」


「まだ巨大ワームを倒せていない」


「え?」


 俺の言葉を聞き、チェルシーは巨大ワームを見やる。


「ググググググッッッ!!!!!」


 ワームは砂まみれになった身体をゆっくりと起こし、再び戦闘態勢に入ろうとしていた。


「ええええ!? あの魔法を受けても、まだ倒れてないの!?」


 たしかに風魔法は強力だった。


 しかも、あの巨大ワームにとって風魔法は最大の弱点である。


 俺が、『土のリング』の入手を『風のリング』の後にした理由は攻略難易度を下げるためでもあったのだが……。


 風魔法は巨大ワームへの有効打にはならないのだ。


 風魔法の効果、それは──



 巨大ワームの防御膜(・・・)の破壊、である。



 あの巨大芋虫は普通に戦闘した場合、物理攻撃が一切通用しない。


 固い防御膜に覆われていることが原因なのだが、裏を返せば、その防御膜さえ破壊してしまえば魔法以外の攻撃も通るようになるのだ。


 そして、そのワームの防御膜を破る唯一の方法が、さっきの風魔法だったというわけだ。


「ルルナ、次に取るべき行動は分かるな?」


「……はいっ! 任せてください!」


「え? なになに!? ルルナ、なにするの!?」


 一人だけ理解していないチェルシーは、あたふたしている。


 そんなチェルシーとは対照的に、ルルナは『デーモンサイズ』を携え、素早く構えた。




【デーモンサイズ】物理攻撃力900

 ・ゲーム内最強の大鎌。装備者は特殊スキル《悪魔の審判ラスト・ジャッジメント》が使用可能になる。




 『デーモンサイズ』。

 俺が裏ダンジョンで入手し、ルルナに装備させた最強武器。


 今こそ、その最強スキルを使用する時である!



 迫りくる巨大ワーム。


 ルルナは、その巨大な敵に向かって──


「《悪魔の審判ラスト・ジャッジメント》!!!!!」


 悪魔の大鎌を振り下ろした。


 ルルナが最強スキルを発動した瞬間。


 大鎌から黒いエネルギー波が放たれた。


 まるで、裏ボス()の最強スキル《混沌の(カオティック・)終劇(フィナーレ)》のような攻撃エフェクトである。


 聖女が使用するようなスキルではない。

 禍々しいオーラを放つ攻撃エフェクトだ。


 似ているのはエフェクトだけではなかった。


 大鎌から放出された黒いエネルギー波は巨大ワームに直撃すると、一瞬の後に、その存在を跡形もなく消し去ってしまった。



 ──威力も裏ボス級だった。



「す、すごっ…………一撃って……なんだかヴェリオ様みたいね」


「…………はぁ……はぁ……はぁ……うっ……うぅ」


 強力なスキルを放ったからだろうか、ルルナが今にも倒れそうになる。


「ルルナ!? 大丈夫か!?」


 俺はルルナの身体を支え、介抱する。


「あ、ありがとうございますっ。すみません、少し体力を消耗してしまったようです……」


「強力な風魔法に続いて大技を使ったんだ。疲れるのは当然だ。しばらく休むといい。ここから先、大変な戦いになるからな。チェルシーも今のうちに休んでおけ」


「りょーかい!」



 ──メインクエスト《巨大ワームの大好物》をクリアしました──



 視界に表示されるシステムメッセージ。


 これで『水のリング』、『火のリング』、『風のリング』、『土のリング』のメインクエストをクリアし、4つのリングを手に入れることができた。


 次に挑むは、『光のリング』。


 いよいよ聖王エリオン17世との直接対決だ。







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