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第35話 主人公の決意

「ッチ! なんで、運命の導き手が地下牢にまで入り込んで来てんだ! クソ! 外で見張りを任せてたオレ様の子分たちはどうしたんだ!?」


 『ボス・オーガイン』が苛立ちを隠さずに叫ぶ。


「あのヘタレ男たちなら、外で倒れてるわよ」


「なんだと!?」


「私たちがヴェリオさんの居場所をお訊ねしたら、急に襲ってきましたので。申し訳ございませんが、反撃させていただきました。気絶しているだけですので、ご安心ください」


 ルルナの『デーモンサイズ』の鋭い刃がキラリと光る。


「バ、バカな!? あいつらは皇帝ディアギレスの軍にも引けを取らない、オレ様の精鋭の部下たちだぞ! お前ら如きに負けるはずが……ッ!!」


「だったら、どうしてアタシたちが、この場所に来てるのよ?」


「……っく!!」


「ヴェリオさん……お待たせしました……本当に」


 歯を軋ませる『ボス・オーガイン』を傍目に、ルルナが牢屋の扉を開けた。


 この牢屋のカギは、主人公サイドのミッションをクリアして手に入れたものだ。


 地下牢を見張る強敵を倒したことはもちろんだが、ルルナとチェルシーは俺の知らない間に、力をつけていたようだ。


 戦闘能力だけじゃない。


 精神的な部分で。


 俺が居なくても、しっかりとメインクエストを進めることができたんだ。


「ありがとう、ルルナ、チェルシー。でも……」


 俺への不信感を解消することはできたのだろうか。


「話は後ですよ、ヴェリオさん! まずは、あの人をなんとかしないと!」


 『ボス・オーガイン』に視線を向けるルルナ。

 その表情には油断も隙も無かった。



 ──主人公の顔だった。



「っく、クソ! オレ様が、お前らみたいな雑魚に負けるわけが……」


「《混沌の(カオティック・)終劇(フィナーレ)》」


 俺が静かに言い放った直後。


 地下牢内に大爆音が鳴り響き、『ボス・オーガイン』の横を漆黒のエネルギー波が通り過ぎた。


 『ボス・オーガイン』の後方にあった(・・・)壁は、跡形もなく吹き飛んでいた。


「な……な……なんだ……これ…………!!!?」


 唇と足を震わせる『ボス・オーガイン』。


「俺を馬鹿にすることは構わないが、俺の大切な仲間を愚弄することは許さない。ルルナは、この世界を平和に導く英雄なんだ。俺やお前とは違うんだよ」


 今まではルルナのことを、心のどこかで「主人公(ルーク)の代わりに主人公になったモブの女の子」と思っていた。


 でも、今は違う。



 ルルナは間違いなく、この世界の主人公だ。



 自分で考え、自分で行動できる。


 自分の運命や世界の運命を選び取って、切り拓いていくだけの力がある。



 これはルルナの物語なんだ。



「い、いいのか!? オレ様には強力な後ろ盾が付いているんだぞ!! お前らが思いもしない、世界の支配者を相手にすることになるんだぞ!? それでもオレ様を攻撃するつもりか!!!」


 イキっていた『ボス・オーガイン』が日和りだし、虎の威を借る狐と化す。


 こいつの言う後ろ盾──聖王エリオン17世。

 俺にとっては、どうでもいい相手だ。


 しかし、この世界の人間にとっては紛れもない中心人物だ。

 

 特に教会関係者にとっては。


 ルルナやチェルシーは、ここに来てる時点で黒幕のことを──聖王エリオン17世のことを知っているはずだ。


 俺たちのリングを奪い取り、世界を支配するつもりでいることも。


 俺はルルナの様子を窺う。


 ルルナは意を決したように、口を開く──




「聖王エリオン17世は倒すべき敵です!」




 ルルナの口から出てきたのは、これまで自身が崇拝してきた相手への決別の言葉。


「な、なんだと!? なんで聖王のことを……!? い、いや、それよりも! 聖エリオン教のトップである聖王を倒すなんて……大っぴらに宣言してタダで済むと思うなよ!!!」


「あの御方に正義はありません! 人々を苦しめる者は、皇帝だろうが聖王だろうが、放って置くわけにはいきません! 聖王の野望は私たちが食い止めてみせます!」


「っく!!!! 聖王の威光が効かねぇとは…………クソッ!!!」


 『ボス・オーガイン』は唾を吐き捨て、地下牢から脱兎のごとく逃げ出した。


 薄暗い地下牢に残された俺、ルルナ、チェルシーの3人。


「ふんっ、なによ、あいつ。ボスとか名乗ってる割には小物じゃないのよ」


 チェルシーが辛辣に言う。


「でも、ヴェリオさんが無事で良かったです」


「ヴェリオ様が、あんなヤツに負けるわけないでしょっ。大人しく捕まっていたのも、きっと何かの策なんでしょ?」


「へ? あ、いや……まぁ……」


 策も何もない。

 普通に出られなかっただけだ。


 もし、ルルナとチェルシーが助けに来てくれなかったら、俺は一生ここに閉じ込められていただろう。


 ……そして、大学も留年していただろう。


「ふふっ、たしかにチェルシーの言うとおりですね。もしかしたら、ヴェリオさんは私たちの力を試すために、わざと捕まっていてくれたのかもしれませんっ」


 2人の俺に対する評価が過大すぎて、なんだか恥ずかしい気持ちになる。


 ただ──


 2人が、こうして俺の前に再び元気な姿をみせてくれたのは凄く嬉しかった。


「2人が思ってるほど、俺の力は大したことないってことだ。ルルナとチェルシーが居なかったら俺は何もできないし、世界も平和にできない。ルルナとチェルシーが世界を平和に導くんだ」


「ヴェリオ様…………アタシ、やるわよ! 皇帝も聖王も、悪いこと考えてるヤツらは全部ぜ~んぶ、やっつけてやるんだから!」


「私も、もう迷いません。聖王エリオン17世に反旗を(ひるがえ)したことで、私は教会を破門されるでしょう。けれど、構いません。それが世界の人々のためになるのなら、私は戦います。聖王と……戦います」


「俺のことは……気にしないのか?」


「ヴェリオさんはヴェリオさんです! たとえヴェリオさんが何者であろうとも、私たちの大切な仲間であることに変わりはありません!」


「……ルルナ」


「ヴェリオさんが連れ去られて……私、分かったんです。今までヴェリオさんに、ヴェリオさんの言葉に、ヴェリオさんの存在に助けられていたんだって。私たちのパーティーにヴェリオさんは必要なんです。絶対に無くてはならない存在なんです。それなのに……ツマらないことで色々と考え込んでしまって……」


「……アタシたち、ヴェリオ様が連れ去れた後、2人で色々と話し合ったのよ。そして、2人とも同じ結論に達したってわけ」


「同じ結論?」


「はい!」「ええ!」


「ヴェリオさん──」「ヴェリオ様──」



「「あらためて、仲間として宜しくお願いします!!!!!」」



 ルルナとチェルシーは声を揃えて言った。


 俺は言葉に詰まりながら──


「……俺のほうこそ」


 ──よろしく。


 小さな声で、絞り出すように答えた。


 こうして、主人公パーティーは結束を一層強めたのだった。







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