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いざ、アナザーライフ・オンライン!……あれ?

 俺と幼馴染二人が高校生になり一か月と二週間が経過した当たり、『アナザーライフ・オンライン』をプレイせずに俺はとあるゲームをしていた。そのゲーム内で俺は今、ラスボスである九尾と対峙していた。


「ふふふ…やられること数十回、てめえの行動パターンは見切ったぜぇー!」


 とあるゲームというのがこの『妖怪調伏奇譚』である。このゲームは、VRゲーム初の死にゲーとして『アナザーライフ・オンライン』が出る二週間ほど前に販売開始されたもので、かなり難易度が鬼畜である。

 まず何が難しいかというとVRであるということ。今までの死にゲーは三人称視点のものばかりだったので接敵する前に敵を見つけることができた。しかし、VRとなるとそうは問屋が卸さない。曲がり角にいられたりすると先に見つけるということができないのである。

 次に難しい点として、プレイヤーがやられたり、道中にあるセーブポイントで休息するとマップと敵の配置が変わるのだ。そのため、下手に駆け抜けようとすると行き止まりにあたり後ろから追っかけてきた敵によって詰む。マップが変わるといっても次のセーブポイントまで行けば戻されることはないので安心だが、そこまで行くのが難しいのである。

 そのため、販売から一か月ちょっと経った今でもクリアした人が数人しかいないという鬼畜難易度っぷりだ。かくいう俺も昨日ようやくラスボスまでたどり着いたのだが、このボスがまあ強い。

 第一形態の九尾の状態では様々な属性の遠距離攻撃を行ってくる。この時点で弾幕ゲーもかくやというほどの攻撃が飛んでくる。そして、近づけたとしても2、3発攻撃して退かなければ拘束からの即死攻撃のコンボが待っている。


「よーし、第一形態突破!」


 九尾の体力が三分の二になると第二形態へと移行する。目の前の九尾の纏う雰囲気ががらりと変わり、主人公の性別と反対の人の姿へと変化する。この状態になると第一形態とは打って変わり近接攻撃メインとなる。このとき使う武器の種類は『妖怪調伏奇譚』に登場するすべてを使い分ける。そのため、こちらも武器のリーチなどを見極め隙を見て攻撃を入れる。遠距離攻撃はあっという間に距離を詰められて攻撃されるのでやらない。地道にしかし確実にダメージを積み重ねていく。


「いける…これはいけるぞ…!」


 九尾の体力が三分の一となり最終形態になる。最終形態では第一、第二形態で行っていた攻撃をすべて使ってくる。それに加え全体的な行動速度が上がる。とはいえ何十回と挑んだことで行動パターンは把握済み、最終形態のスピードにも慣れており、集中も絶好調といってもいいだろう。回復アイテムをまだ余裕がある。今勝たずしていつ勝つのかという感じだ。


「…ふぅ。さぁて、最終決戦と行こうじゃないか!」


 何の合図もなしに俺と九尾が走り出す。九尾は今大剣を使っている。その一撃を食らえば俺の体力の8割が消し飛ぶだろう。その分大振りな攻撃が多いため攻撃チャンスは多い。かといって欲張れば殺られるので、余裕で回避できるように攻撃していく。

 10発ぐらい入れたあたりで武器が大剣から双剣へと変化する。この状態は攻撃スピードが速く、隙が少ない。そのため、()()ならば逃げ一択である。俺は手に持っていた刀を鞘へと戻し、新たに武器を装備する。しかし、その手には何も握られていない。九尾がこちらへと突っ込んでくる。あっという間に距離を詰め右手に持つ剣を振り下ろす。


「そこっ!」


 九尾の剣が目前へ迫った時、俺は動き出す。振り下ろされた剣に合わせるように左手の甲を合わせ攻撃を()()()。そのまま右手で九尾の腹を打ち、後ろへ飛んで双剣の間合いから離れる。新しく装備した武器はスパイク付きのガントレットだ。手になにも持っていなかったのはそのためである。


「よし、いけるな。」


 相手の攻撃を逸らしてインファイトへ持ち込む、今までも何回か試していたことではあったのだが、成功率は五分五分といったところだった。しかし、回数を重ねたことで九尾の動きに慣れ集中できてる今の状態なら成功させられる、そう思って試したがうまくいったようだ。

 ちなみに双剣以外の時に同じことをしようとしたらそのままぶった切られた。敵の力が強すぎるのだ。


「次で一気に削って…決める!」


 そう決めて次に使う攻撃スキルの威力を上げるスキル『血戦』を使用する。このスキルは戦闘中に一度しか使えないうえに、その効果は攻撃が外れても消費される。そのため確実に決める必要がある。

 九尾が多数の炎の玉を飛ばし、それを追うように突っ込んでくる。俺は炎の玉を当たり判定のギリギリを狙って最低限の動きで躱し九尾を迎え撃つ。

 九尾が突進の勢いのままに左手の剣を突き出し頭を狙い、俺は首を傾けることで回避する。それを見て九尾が右手の剣を振り下ろしてくる。それをガントレットで弾きそのまま打ち合いへと移行する。九尾が剣を振るい、俺がそれを回避するか弾きながら隙をうかがう。

 そして、その時は来た。九尾が打ち合いを止め後ろへ飛ぶ。双剣から武器を変えるのだろう。それを予想していた俺は九尾と同時に飛び懐へと潜り込む。武器変更の隙だらけの体へ攻撃スキル『乾坤一擲』を放つ。このスキルは自分の最大体力の半分を消費し強力な一撃を見舞うものだ。

『乾坤一擲』によって放たれた一撃が九尾の体へと炸裂する。九尾の体力が減っていき数ミリ残る。


「あと一撃…!」


 だがそこで九尾の武器変更によって起きた衝撃で俺の体は後ろへ弾かれる。ダメージはないがあと一撃という事実に心が逸る。

 しかし、こういう時こそ冷静にならなければならない。もう少しのところで殺られるなんて死にゲーではざらに有ることだ。弾かれた体を立て直し、九尾の挙動を見守る。

 九尾は武器は双剣から大鎌へと変化している。だが、九尾はこちらへ来ないで遠距離攻撃の準備をする。


「勝った!」


 それを見て俺は勝利を確信する。ショートカットに登録されたアイテムから投げナイフを取り出し、九尾へと投げつける。投げられたナイフは九尾が遠距離攻撃を放つ前にその胸を貫く。

 たった一撃、だがその一撃は確かに九尾の体力を削りきった。

 九尾の体が後ろへと倒れる。


「っ…やったぁぁぁぁぁ!」


 思えばここで集中を切ったのがいけなかったのだろう。体力を回復させるぐらいはしておくべきだった。ラスボスなのだから予想出来たことだ。何をって?()()()()ということだ。

 九尾の体が何かに持ち上げられるように浮き上がり体力が半分まで回復する。


「おいおいおい、マジかよ…!?」


 それを見て慌てて構え直す。

 浮き上がった九尾の足が地に付き動き出す。遠距離攻撃の準備を整え放つ。そして、大鎌を構え突撃してくる。

 飛んでくる岩玉を回避し、九尾を迎え撃つ。さっきと同じように集中出来ていたら何も問題なかっただろう。だが、体力を削りきった時に一度集中を切ってしまっていた。

 九尾の振るう大鎌を回避しようと動く。しかし、一歩分間合いを読み間違える。


「あっ…やべっ…」


 気づいた時にはもう遅い。確実に大鎌が当たる位置まで迫っている。体力が満タンなら一番攻撃力が高い大槌の一撃を食らっても即死することはない。だから、大鎌の攻撃でも耐えられたはずなのだ。

 しかし、思い出してほしい。俺の体力は『乾坤一擲』を使ったことにより最大体力の半分が消費されている。そこから回復していないわけだ。つまり…


「へぶっ!」


 九尾の大鎌が俺の体へと到達し切り裂く。それによって俺の体力は0となる。目の前が暗くなりそこに赤色で書かれる『YOU DIED』の文字。

 目の前が明るくなると俺が立っていたのはラスボス前のセーブポイントだった。その場で立ち尽くす。動き出したのは一分程経った辺りだった。

 地に膝を付き手も付ける。いわゆるorzって状態だ。


「勝ったと思ったのに………。もう無理…寝よ。」


 完全に心折られた状態である。今から再挑戦する気にもなれないので不貞寝をすることにする。

 ゲームからログアウトし頭に付けたVRのヘッドセットを外すとそのまま寝た。

おかしいなぁ、ログインまではいく予定だったのに…


あっ、少しでも面白いと思っていただけたら感想とかもらえると蚊取り閃光が喜びます。

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