第1話
神歴5年3月10日 聖イスラエル連邦、聖都エルサレム
イスラエルの中心であるエルサレムの繁華街は人通りが絶えない
ソロモン宮殿が望み見える繁華街で、一人周りの人と違う感じの衣装を着た人が歩いている。
「この辺りのはずなんだけど...」
数日後に決行される作戦の打ち合わせのためにエルサレムのある部隊の研究所に向かっていた元考古学博士の涼川祐だったが、道に迷っていた。
「この辺りも変わったなぁ。前に来た時はこの辺りもまだこんなに発達していなかったけど、まさかこんなに発展しているとは...はぁ、完全に道に迷ったな。携帯端末があればこんなこともなかったんだけど...」
エルサレムは宗教抗争が終わり天災前と違うものとなっていた。
現在、国家間交流は全くない状態で世界中の国では外国人の存在は珍しいものとなっていた。つまり、日本人である祐は周りの人から注目を受けていた。
「やっぱり注目を受けてるな、早く見つけないと..「いたいた!祐さんこっちです」
少し遠くにイスラエルの軍服を着ている人が手を振っている。
「お久しぶりですネイトさん」
彼は、ネイト=アルネル。イスラエル第7契約者部隊の隊長で祐が昔エルサレムの遺跡の発掘の時にお世話になった人であった。今度の作戦で祐がお世話になるのも彼の部隊である。
「道に迷っていると思って迎えに来ました。ご案内します」
「ありがとうございます。実は迷ってしまっていて助かりました」
ネイトに先導されて歩き始める。
少し歩くと路地裏に入った。周りの建物は、表通りの建物と比べ少しばかり古かった。
「このあたりが、元繁華街です」
「ここまでくればわかります。ここも変わりましたね」
「今は、半分スラムですが...」
通りにいる子供がこちらを見ている。
「この辺りにいる子供たちは天災地域から逃れて来た孤児たちがほとんどです。基地の方でも問題にしているんですけど、私たちの部隊の性質上基地の周りに孤児たちが集まってしまって...」
「敵対契約者のことが解決したら全てなんとかなります。そのためにもこの任務を成功させないと」
契約者の天災は未だに収まっておらず、それから逃れるために難民が天災非発生地に向かって流れていた。その時に、難民の避難を手助けするのがネイトの部隊の任務の1つである。
「もう少しでつきます。基地も見えて来るはずです」
ネイトがそう言うと少し古い周りの建物よりももう一回り古い建物が見えて来た。
「この研究所はあまり変わらないですね」
元エルサレム神代研究所、今はイスラエル第7契約者部隊の基地となった今でも同じ雰囲気を放っている
「では、改めて」
ネイトはかかとを鳴らし敬礼をする。
「ようこそ、第二エルサレム契約者基地へ」
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基地に着くとまず応接間に案内された。
「ここで待っていてください」
そう言うとネイトは応接間から出て行った
「十年前に来た時も応接間に案内されたっけ。ここもかわっていない。あの時はまだ学生だったから懐かしいな」
応接間の窓からには通りからも見えていたソロモン宮殿がみえている
『コンコン』
ネイトが出てから1分も経たないうちにノック音が聞こえた
「どうぞ」
「失礼するぞ、お主が祐か。なるほどな、契約者でもないのにルートの量が異様に多いな。あの街からも逃げれるわけじゃ」
入って来たのはネイトではなく少女であった
「あのー、あなたは?」
祐は戸惑いの顔を浮かべている
「妾はサロメじゃ。この基地の開発長をしておる」
「十年前におられました?」
祐はまだ戸惑いを隠せない
「あの時はまだ赤ん坊だったからのぉ、懐かしいものじゃ」
「あ、赤ん坊?え、ひょっとして?」
彼女は自身の過去を懐かしんで入るが祐はあまり理解できていない
「妾は転生者でな、天災地域が故郷だからか記憶を取り戻せたわけじゃ。誰の転生者かは今は秘密にしておこうかの」
「なるほど、転生者でしたか。転生者の方は初めてなのですこし戸惑ってしまいました」
「大丈夫じゃ。慣れておる」
「ありがとうございます。ところで、サロメさんは..」
本題を切り出そうとしたところでノックの音に遮られた
「失礼します。祐さん隊員が集まったので会議室まで..あっサロメさん、いらっしゃっていたんですか」
会議の準備ができたらしくネイトが迎えにきた。サロメは隊長であるネイトからも一目置かれて入るらしい
「ネイトか、気にせんで良い。それよりも祐に用があるんじゃろ」
「はい、祐さん作戦室までお願いします」
祐はネイトに続き応接間から出ようとしたが
「祐よ、妾がこうして居れるのはあの粘土版を見つけてくれた汝のおかげじゃ。本当に感謝する。汝の願いが叶うことを祈っておる」
「ありがとうございます。サロメさんも頑張ってください」
祐はそう言うと応接間を出た
その時のサロメは少し笑っている気がした
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基地の廊下にいる基地の職員の中には祐がしっている顔もいた
「そういえばサロメさんは今回の作戦には参加されないんですか?」
「彼女は年齢を鑑みて今回の作戦のメンバーには含まれていないです。それに彼女はこの国の...いえ、なんでもありません。あ、ここが作戦室です。隊員は全員ここに集合してます。隊員の中には研究所時代からいる隊員もいますよ」
そう言ってサロメが会議室の扉を開けると隊員が全員敬礼をしていた。
「会議を始めます。こちら、今回の作戦で同行してもらう考古学研究所所属の涼川祐さんです。祐さん挨拶お願いできますか?」
隊員の中にはネイトが言っていた通り前に来た時にお世話になった人もいた。
「考古学研究所から来ました涼川祐です。みなさん、今回の作戦ではよろしくお願いします」
祐は自己紹介が終わると真ん中の方に空いている席に座った。
隣に座っている人は、祐の知っている人だった。
「祐くん、お久し振りです。名声は聞いてますよ」
話しかけたのは祐よりも年上の金髪の男性だった。
「お久し振りです、ケントさん。ケントさんは副隊長じゃないですか十分すごいです」
彼はケント=ラバン。この隊の副隊長である。
「僕なんて形だけの副隊長さ、ネイトの方がよっぽど隊長をしてるよ。それよりも、作戦の詳細説明がはじまるよ」
祐の人生を変える作戦が始まろうとしていた。
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