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第五十一話 自死はあなたの権利です
人には生きる権利があるように死ぬ権利もあります。人間の尊厳を守るために。かつて武士は切腹の特権を持っていました。かれらが清々しい生涯を送れたのは、切腹による自死の権利があったからにほかなりません。
戦の場あるいは行政上の立場で、失敗は許されない大きなプレッシャーを彼らは背負いました。ですが戦は負け、政は失敗する。人間の社会ですから当たり前です。
ですが死ねば、すべての失敗と負債はチャラになる。いやむしろ称賛される。だから彼らは己の生涯において迷うことなく武士道を貫けたのです。
どんな非常事態に立たされても「なあに、いざとなれば俺が腹を切ればそれで済む話だ。やるだけやってみよう」との思いは、どれほど彼らを勇気づけたでしょうか。中国でもヨーロッパでも同じです。
自死はあなたの人生の誇りと矜持を護る、大切な大切な権利です。いざとなればあなたは死んじゃえばいいんです。何も心配することはありません。
だからもう少し肩の力を抜いて生きてみませんか。焦る事はありません。死ぬのはいつでもできます。本当に死ぬのはいつでもできるのです。




