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4-12話 塵芥1


 クラス単位で仲が良く、ギャリシーのいう事を聞くギャリシークラスの一同ではあるが、彼らは別に改心したというわけではない。

 正直に言えば、他のクラスとの違いは群れているかどうか程度しかなく、ロクデナシの屑共である事に差異はない。

 そもそもの話、よほどのヒトデナシでなければ地下施設送りになる事はないのだ。


 多少の悪さをした程度であれば学園内でのちょっとした罰則で済む事が多く、そう出来ないほど酷い事をした場合でも、退学か兵士に引き渡されるのが普通である。

 地下にいる者の大半は、兵士に引き渡す価値すらないと思われたという事に外ならない。


 確かに、ギャリシーやダリアンと言った兵士に引き渡して処刑になるのが惜しいという理由で地下に贈られた人物もいるにはいが、過半数は死んだ方がマシな存在である。

 だからこそ自分勝手な者は後を絶たず、何か事件が起きても見知らぬ誰かを助けようなんて博愛精神を持った考えの者などいるわけがない。

 そしてそれはギャリシークラスであっても変わらない不変の事実である。


 知らない奴がどんな死に方をしたところで、地下では良くある事位にしか皆感じない。

 それが自然の摂理であり、ギャリシー達も身内以外はどうなっても一切心を痛めない。

 そう、どうでも良かったのだ。

 身内に犠牲が出て居なければ……。


 二十一人いたクラスが十九人となり、普段の殺伐とした雰囲気よりも更に薄ら暗い空気が流れる。

 それには悲痛という空気以上に、恐怖と憎悪が混じっていた。


「……別にな、俺達の誰もが死なないなんて高を括っていたわけじゃあない。俺らだって、それこそ俺だって死ぬ時はあっさり死ぬ。当然、死に方を選べるほど上等な身分じゃあない。だが……それでも……どうしてこんな事にとは……思ってしまうよな」

 ギャリシーは泣いている様な、それでいて困っている様な顔でそう呟いた。

 亡くなったのはダルガルとスラーという男で、ダルガルは強盗殺人で、スラーは冒険者相手への詐欺で地下に送られた人物である。

 決して善良とは言えず一切反省をしていない様な屑の塊だったが、それでもクラス内でしっかり馴染めていた。

 死因はバラバラ殺人。

 二人は覆いかぶさる様にしてなくなっていた為、バラバラとなった後もどちらがどちらの部位なのかわからない状態となっていた。

 財布等は元々持っておらず、武器であるナイフの回収は出来たものの、元々安物な代物だった上に二人分の血に浸かりしっかりと血液が固まってしまっている為、メンテするよりも買い直した方が安く済む様な状態だった。


「……どうも、お互いを庇おうとしたみたいですね」

 ダリアンは資料を読みそう言葉にした。

「あいつらが? 下手な慰めはいらんぞダリアン。自分だけでも逃げようって類だぞ。それでも、確かに仲間だったがね」

 ギャリシーは二人の想い出を振り返りながらそう呟いた。

「いえ。もし逃げようとすれば遺体の方向がおかしいんです。この重なり合い方と斬られた方角、遺体の向きから見て、ほぼ間違いなくお互いを庇おうとした形だと」

「……慰めとか嘘じゃないんだな」

 ギャリシーが確かめる様に尋ねると、ダリアンはしっかりと頷いた。

「絶対とは言えませんが……可能性はとても高いです」

「そうかい。……あいつらも、死ぬ間際位は真っ当になれたって事かね」

 自嘲気味に、そして寂しそうに笑いながらギャリシーは地下では見る事が出来ない空に向き、そう言い放った。


「……俺らに悔やんだり供養なんて考えは似合わんな。さて、お前ら何か今後の意見はあるか?」

 ギャリシーがそう言葉にすると一人の男が吼える様に叫んだ。

「仇討ちだ! 死に方から誰がやったかはわかっている! 最近のバラバラ殺人野郎だ! それならそいつを探して同じ目に遭わせてやる!」

 そう言葉にしたのはゲーナだった。

 スキンヘッドの巨体は顔だけでなく目元まで真っ赤にし、魔物と間違われそうな外見をしながらそうわめいていた。

 ゲーナの取り巻きやそれ以外も含めおよそ半数がそれに同意する様な態度を取り殺せと叫んだ。


「……グルディ。お前の意見は?」

 ギャリシーがそう尋ねると、いつものひょうきんな態度のまま両手を横に開き、首を横に振った。

「俺は反対だな。そもそもの話、ダルガルとスラーの二人を軽々とばらせる相手にどう戦うんだ? 現実的じゃねーよ」

 その言葉に、ゲーナは怒り狂った。

「お前! 仲間が殺されて何だその態度は!?」

「それで皆に死ねって言うのか? 自分の怒りを正当化するなよ」

 その言葉に、ゲーナの怒りのボルテージは更に上がり、グルディの胸倉をつかみあげ、小柄なグルディは軽々と浮き上がった。


「……ゲーナ。止めろ」

 ギャリシーのその言葉で、ゲーナは地面に唾を吐きグルディを地面に投げ捨てた。

「おーこわ」

 小馬鹿にした様な態度でグルディはそう吐き捨てた。


「……俺はグルディの意見に賛成だ」

 そう言ってゲーナは目を丸くして驚いた。

「どうしてですかギャリシーさん!? 仲間が殺されたんですよ!?」

「ああ。そうだな。正直腸が煮えくり返りそうだ。だがな……ゲーナ。お前何か勘違いしてないか? 例えば自分が強いとかな?」

「……誤解じゃなくて、俺強いっすよ。そりゃギャリシーさんには全く及びませんが……それでも俺は……」

「そのお前よりも強い俺でも、この地下という場所では一人で出歩く事は死を意味する。 その意味わかるか?」

 その言葉に、ゲーナは無言になった。


 地下という環境では強者しか生き残れない。

 ただし、その方法は別にどうでも構わない。

 それこそ、出来るのであれば扇動でも魅力でも、何なら財力でも関係がない。

 ただ、それが通用するものでなければ意味がないが。

 何が言いたいのかと言えば……地下にいる者の命は塵程度ほど軽く、それ故に失うのは容易いという事である。


「確かに、二十人に増えるまで特に問題なくやってこれた。 だがな、お前ら皆自分が死なないなんて妄想は捨てろ。ここではそんな油断した奴から死んでいく。それこそ、多くの死を見て来たんだ。わかるだろうが」

 ギャリシーがそう言葉にし、グルディはうんうんと訳知り顔で頷いた。

「でも……俺……悔しくて……。二人とも昨日まで仲間で、一緒にここにいたんですよ……」

 ゲーナは慟哭するかのように、ぽつりぽつりとそう言葉にした。

「……ああ。だからこそ、あいつらの死を無駄にしたらいけない。殺す事に否定はせん。出来るなら俺がやりたい。だが……今は無理だ。相手はほぼ間違いなく、俺より遥かに格上だ」

 ダルガルとスラーの二人を同時に殺す事はギャリシーにも出来ない事はない。

 だが、一切の抵抗をさせずにバラバラにするなんて芸当は不可能である。

 それを考えると、格上の相手であると言わざるを得なかった。


「一つ、提案があります」

 ダリアンがそう言葉にし、皆の注目を集めた。

「僕は新入りですので皆さんほど亡くなった方に対して情があるわけではありません。ですから、これは悲しんでいる皆様に対して無礼で少々以上に失礼な物言いなのですが……」

「構わん。俺らの目線でない意見は今とにかく必要だから言ってくれ。それに対して叱る事はあっても怒る事は絶対にないから」

 ギャリシーの言葉にダリアンは頷き、言葉を紡いだ。


「過去の事を全て忘れ明日に生きるとしても、今回の事件を無視という選択は正直出来ません。今までのバラバラ殺人が同一な犯行であると考えるなら、あまりに危険が大きすぎます。戦うとかそういう論外な方法ではなく、危険人物に出会わない様にする……何等かの対処を考える必要があるかと……」

 グルディとゲーナが口を挟もうとするのを止めながら、ギャリシーは頷いた。

「……そりゃそうだ。全くもって正論だな。……何か危険から避けられる方法ってあるか?」

 ギャリシーの言葉にダリアンは首を横に振り否定した。

「いえ。すいません。僕では思いつきません。ですから、この様な場で考えるべきかと」

「……それも正論だ。すまんな、責任を押し付けて。よし、グルディ。会話の流れを任せる。今ここにいる全員で安全な方法を探るぞ」

 その言葉に頷き、グルディはひょうきんな態度のまま、話の指揮を取った。

 少しだけ、ゲーナは不満そうにしたがそれでも会議には参加した。


 とは言え考える事が得意な人物がこの中にいるわけがなく、また状況資料も少ない為建設的な意見など出るわけがなく、とりあえず多めの人数で行動しようという位しか対処方法は出てこなかった。


ありがとうございました。

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