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4-2話 ぱーっといきましょう!(前編)


【アウター】

 一言でそう呼ばれているが、それには三種類の意味が含まれている。

 一つ目は【アウターゲート】と呼ばれる空に浮かぶ渦巻き状の門の事。

 未知なる世界と繋がっていると言われるそれは今まで見た事も考えた事もない様な不思議な物が飛来してくる。

 そのアウターゲートにより送り届けらえれた未知なる物質の事を【アウター資源】と呼ぶ。

 見知らぬ金属、解読不可能な金属制の道具、読めない本、理解出来ない武器。

 本当の意味で何が出て来るかわからないびっくり箱の様なそれだが、一つだけ確かな事があった。

 それはこちらの世界がちっぽけに見えるほど文明が進んでいる事である。

 実際そのアウター資源のおかげで発展した技術なども多く存在する。

 既存の技術が向上しただけではなく、未知なる格闘術、全く新しい学問などアウターにより誕生した技術。

 それが三つ目である【アウター技術】と呼ばれた。


 アウターゲートより飛来するアウター資源。

 そのアウター資源を研究する事により誕生したアウター技術。


 これを総じて【アウター】と呼ぶ様になった。


 普通は直接アウター資源を入手する事はあり得ない。

 全てアウターゲートはガーディアンと呼ばれる準貴族、通称【アウター貴族】がそれを管理しているからだ。

 つまり冒険者にとって恩恵となるのは直接資源の方ではなく、技術の方となる。

 特に、アウターにより生まれた知識なら学べば誰でも覚えさえすればマスター出来る為選択肢が多いに越した事はない冒険者とは非常に相性が良いと言える。

 だが、アウターとは便利なだけでなく、それによって生じるデメリットという物も存在する。


 それはアウターから生まれた技術の大半には【六神の加護】が含まれていない事である。

 この世界は全て、自分自身から食物、技術に至ってこの世界で生まれた物には六神の加護が宿っている。

 だが、生まれがアウターである物にはそれが宿っていない。

 とは言え、加護のあるなしでの差は基本的にと付くが、微々たる差でしかない。

 少々性能が下がったり壊れやすかったり、色々劣化はするがそこまで大きな差は見受けられなかった。


 むしろ、六神の加護が宿っていない事ではなく、その事実の方が大きなデメリットを巻き起こす。

 具体的に言えば、六神に対し深い尊敬の念を覚えている者から見れば、加護のないアウター技術は決して好ましい物ではない。

 むしろ六神への敵対行為ではないかと思う者もいる。

 一部の六神信者に好まれなくなる事、それこそがアウター技術を利用する場合の最大の欠点と言えるだろう。


 それ以外にも未知なる高度な技術という事、それ自体がリスクであるという考え方も出来る。

 流用していて文字通り何が起きるのかわからないのだ。


 だからこそ、数々のリスク、デメリットを正しく確認し、その上で必要なものを学ぶ事がアウターにおける向き合い方と言えた。


 その様に記述したプランの答案は、アウター技術の授業で合格点を貰う事が出来た。




 あの過酷な冒険から数日間……。

 プラン達は遅れて溜まっていた課題をこなしつつ、授業に精を出していた。


「はいというわけでアウターを受けたいと言った張本人なのにテストで落ちて、お情けで追試をしてもらったサリスさん何とか合格おめでとうございます」

 プランは露骨なまでのニコニコ顔でそう言葉にした。

「……お、怒ってる?」

 おずおずとそう尋ねるサリスに、プランは満面の笑みのまま頷いた。

「割と。確かに私ら依頼で色々大変だったし、それも私の所為だったよ? でもさ、こんな簡単なテストにどうして一度落ちたの?」

「いや……その……すまん」

「ほら。エージュからも何か言ってやってよ」

 そうプランが尋ねると、エージュは苦笑いを浮かべた。

「いえその……私ハワードさんとはそれなりに付き合いがありますので……こう……もうこういうナマモノなのだと諦めが付いておりまして」

「……ナマモノですか」

 そうプランが尋ねると、エージュは虚無的な瞳で頷いて見せた。

「はい。ナマモノです。むしろ二度目で合格出来たと時点でハワードさんにしては相当頑張ったのだと思います」

「……そか。うん、ごめんサリス。怒ったりして」

「……怒られるより、謝られる方がダメージデカイぞ」

 しょんぼりしながらサリスがそう呟くと、プランとエージュは二人で顔を合わせ、露骨に落ち込むサリスを見て小さく噴き出した。


「ま、サリスいじりはこの位にしておいて、切り替えていきましょ。サリス、これでアウターを学べるようになったけど何か学びたい物はあるの?」

「おう。といっても深い考えがあるわけじゃなくて、戦闘用の技術を学びたいなって思ってる。前使ってた奴が凄かったからな」

「戦闘用アウター技術なら普段使う事がないですし特殊な道具を用いなければ見つかるリスクも低いので私は賛成ですね」

 エージュがそう言うとプランも頷いた。

「ん。私もそれで良いよ。弱い私が出来るのであれば良いんだけど……」

「まあその辺りは調べながらチョイスしていこうぜ。問題は……」

「……うん。わかってるよサリス」

 プランは溜息を吐くのを我慢し、目の前の資料を見つめた。


 十数枚ある紙束には米粒の様な文字でびっしりとアウター技術の見出しが書かれていた。

 少なく見ても一枚の紙に五百種類のアウター技術が書かれている事から、どれだけ低く見積もっても合計して五千はあるだろうし、最悪の万の桁に届く。

 その中から適切なアウター技術を学びだして受講の申し込みを行うのは正直いって少々どころではない程骨が折れる作業だった。


「……よし。受付の人に聞こう。出来たらイブおねーさんに」

 プランがそう言葉にすると、サリスとエージュは同意する様に頷いた。

 流石に、自分達だけで学び先を選ぶのは不可能だと二人共理解出来た。


「……ちょっと、良い?」

 唐突に、ひょいとテーブルの下から顔だけを出しミグは三人の顔をじっと見つめた。

「お? 今日はプランにじゃなくて俺達に用なのか?」

 サリスが珍しそうにそう呟くとミグはこくんと頷いた。

「ん。三人共、時間ある?」

「んー。今日はどう? 依頼はないけど、何かある?」

 プランがそう尋ねるとエージュは頷いた。

「あ、私今日は乗馬サークルの方に用事ですね」

「ま、それは何時もの事だね。他には?」

「特にありませんわ」

 そうエージュが言った事を確認し、プランはミグの方を見つめた。

「という事でミグちゃん。エージュのサークル時間以外は時間余ってるよ。どうしたの?」

「えとね……ヴェルキスにも話ついたの」

「ふむ」

「テオもヴェインも空いてるの」

「ふむふむ」

「それで、クコもようやく普通に食事して良いって許可が出たの」

 学園に戻って来ておよそ八日、それは思った以上に早い回復だった。

「おお。なるほど。言いたい事わかってきたよ」

 プランが楽しそうにそう言葉にするとミグもこくんと頷き、涎を垂らしながら呟いた。

「前の冒険の打ち上げ。やろ?」

 三人は全く同じ笑顔で、同時に頷いた。


「おっしゃ! んじゃ俺はヴェインと一緒にデートという名目の狩りの約束果たしてくるぜ! 馬借りてきゃ二人でなら狩って帰る位余裕で間に合うだろ。無理なら普通に買って帰るから安心しろ。じゃな!」

 そう言ってサリスは風になった。

「……こういう時だけお早いんですから。私も早めにサークルに行って日課を済ませて戻ってきますわ。プランさん。何かすべき事ってありますか?」

「んー? 私、冒険にはあまり役に立てないけどこういう時は任せて良いよ」

 プランは自分のない胸をとんと叩き、自慢げにそう言葉にした。

「ふふ。冒険の時でも十分頼りになりましたよ。ですが、こういう時のプランさんはそれ以上に頼りになります。なにより生き生きして良いと思いますわ」

「まーね。こういう事は大好きだから」

 えへんとない胸を張るプラン。

 エージュの前だからか、少々以上に空しく感じて来た為プランはそっと、胸を張る事を止めた。


「では失礼しますわね。サークルの方にいますから何かあれば」

 そう言ってエージュは深く頭を下げ、ゆっくりと歩いてこの場を去っていった。


「さてミグちゃん。私は何をしたら良い?」

「ん」

 ミグはプランに一枚の紙を手渡した。

 それは地図になっていた。

「これは?」

「そこの場所借りられた。掃除は済ませた。厨房もあるし魔法陣による冷蔵エリアに野菜と肉も若干だけど用意してある。それを見て足りない物を集めて欲しい」

 きりっとした様子でミグはそう言葉にした。

「……これ用意したのミグちゃん?」

「私のコネと、テオの知識と、クコの情報。合わせて用意した。でも、三人共料理はさほどだからそこからは……」

「ええ――そこからは私の仕事ね。任せて」

 プランが自信満々にそう答えると、ミグは嬉しそうに破顔した。


 自分の固い表情がいつも解きほぐされる。

 だからミグはプランの事が好きだった。




 そこは学園内第四エリア、学園寮がある山の周囲にあるサークルの建造物が多く立ち並ぶ場所。

 その中にある、小さな調理場とテーブルが数個置かれたスペースを兼ね備えた使われていない建造物、まるで小さな酒場の様なそこがミグの借りて来た場所だった。

「……良くこんな場所知っててしかも借りられたね」

「えへん。クコが調べてた。廃会になったサークルの所有施設だったらしい。埃塗れだったから掃除はしたよ」

「え!? ミグちゃんが掃除したの? 一人で?」

「えへん」

 ミグはやけに自慢げだった。

「……私も手伝うからそういう時はちゃんと言ってね?」

 思ったよりも褒められず、ミグは少ししゅんとしながら頷いた。

「ん。わかった」

「……怒ったわけじゃないよ? でも、ミグちゃん一人で掃除させたのはちょっと罪悪感がね……」

「じゃ、じゃあ、ちょっと多めに食べさせて?」

 そんな不安げなミグの言葉に、プランは満面の笑みで頷いた。

「そうね。頑張ったご褒美はちゃんとあげないとね。良いよ! 他の人よりちょとサービスしちゃいましょう」

 ミグは無表情のままだが、こくんこくんと首を何度も縦に動かした。

「さて、冷蔵エリアにはー……うん。野菜も肉も……結構あるね。これ私買う必要あるかな」

「……たぶん。足りない」

「え? あー、うん。そうだね。サリスのお腹を溢れさせるには沢山いるし」

「私も……それに人が沢山いる。だから沢山材料いる」

「そうね。サリスとヴェインが狩りしているはずだから……野菜と……あと果物を増やさないと。それと小麦粉は……うん、多分もらえるね。ついでによさげな果物買える場所も聞こう」

 学園の食堂に行けば幾らでもタダでもらえ、そうでなくても破格の値段で小麦粉が貰える事を知っている為プランは食堂に足を運んだ。

 ミグはその後ろをとことことついて歩いた。


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