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3-32話 神から与えられた使命29


 戦争にも匹敵した規模であり、終わりの見えないその戦いは最後の一人が死ぬまで続くと思いきや、あっさりと終わりを迎えた。

 本来ならば纏まりはなく、奪いたい時に奪い、危なそうなら勝手に逃げるという盗賊団のはずがその様な動きはなく、それどころか自主的に投降する者も少なくなかったからだ。

 多くの者が投降した理由はシンプルである。


 将であるユスポフが捕まった。


 たったそれだけで、盗賊の半数にも匹敵する二百人が投降し、そしてその五割は口を揃えてユスポフの助命を願った。

 自分達の命よりも優先して……。

 敵勢力の五割、しかも戦力で言えば上からの五割がごっそり消えてしまい、更に偉い人達の誰とも連絡が取れないという状況下では、盗賊団が瓦解するのにそう時間はかからなかった。


 そういう訳で良い意味で想定外の事態となり、終わってみれば消耗という意味でも被害という意味でも軽微と言って良いレベルで処理する事が出来た。

 ただし……全体から比べてみれば軽くはあるが、それは決して零というわけにはいかなかった。


 後処理の為忙しなく走り回っている町民達と戦後相談をしているプラン達とは別行動を取り、シュウとクリア教信者達、そしてそれを纏める司教は共に拠点隅の方の空き地で静かに目を閉じていた。

 正面には四つの加工した小さな木材。

 後々入れ替えるとはいえ墓としてみれば恐ろしく簡素な物である。


 その四つの木材から見える正面には恐ろしく精巧に作られた石像、彼らの信仰する創造神を模した石像が置かれていた。


「……私は、貴方達と共に過ごせた事を誇りに思います」

 司教はそう呟き、かつての仲間である四人の冥福を祈った。


 盗賊達の犠牲者は百を超えた。

 それに対してこちらの犠牲者は四人のみ。

 しかも、その四人全員町民ではなくクリア教教団より派遣された人員である。

 彼らは、宣言通り町民を全て守り切る事に成功していた。


 確かに有利な戦況であったが、たった四人で死者が終わる様な争いでは決してなかった。

 序盤こそお互い慎重に動いていたが、途中から部隊も何もなくなり乱戦続きとなり誰が犠牲になってもおかしくない状況に陥った。

 それが彼らだけの犠牲で済んだのは、何十年も戦い続けたスペシャリストである彼らが文字通りの意味で盾となったからだ。


「……町民代表として私はクリア教に感謝を示します」

 シュウがそう言葉にすると司教は微笑んだ。

「ありがとうございます。ですが、賠償や慰謝料、治療費という名目での感謝でしたら寄付すら受け付けませんよ?」

「……それ以外に私の様な者は感謝を示す手段を持ち合わせておりません」

「彼ら四人は何も求めません。守りたかっただけです。ですので……ただ感謝を。それが一番彼らが喜びますので」

「……四人はお酒はお好きでしたか?」

「どの様な物でも感謝して頂く……とは言っておりましたが……。ええ、恥ずかしながら四人共……いえ、私の同胞は皆、お酒がとても好きでした」

 何か彼らだけでの想い出があるのか、司教は苦笑いを浮かべながらそう言葉にした。

「……では。言葉代わりにこれを」

 そう言ってシュウはめちゃくちゃもったいないという顔を浮かべながら小さなビンに入った赤い液体を四人の墓下に均等にかけた。

「それは?」

「……こっそり一人で飲もうと思っていた物ですよ。……まあ、あまり他人には言えない様な出どころで、そして誰にも分けたくないと思ってこっそり隠していた位には貴重で……そして貴族ですら滅多に飲めないほど美味しい物ですよ」

「……なるほど。それなら彼らも喜ぶでしょう」

 司教は四人とシュウに対し苦笑しながらそう呟いた。




 これで盗賊事件は終わりなのだが……依頼という意味ではまだ終わっていなかった。

 現在戦後処理に忙しないテオと怪我によりドクターストップを受けたクコ、ヴェルキスを除いた冒険者メンバーが一つのテーブルに集まっていた。

 ちなみに中心人物であるプランは無茶のし過ぎという事でサリス、エージュにしこたま叱られた為しゅーんとしていた。


「という訳で、どうしようか……」

 着替えていつも通りの不審者スタイルとなったヴェインハットはそう言葉にする。

 それに対して皆困った表情を浮かべるだけで答えは出せなかった。


 依頼の内容は問題の解決、それと……盗品の確保である。

 その中でも直接かかわりそうな物は魔法が使えると言われた試験用指輪。


 そして、それの確保にはヴェインハットが成功していた。

 ヴェインハットがメイド姿となってソロで拠点を探索中に一つ。

 更に戦後のどさくさに紛れてもう一つ。

 そんなわけで現在テーブルの上には指輪は二つ置かれていた。

 ちなみに盗まれた指輪の総数は三つである。

 残念な事に一つ足りなかった。


「……ヴェイン。この二つはどこにあったの?」

 プランは困った顔のままそう尋ねた。

「一つ目は魔法の研究施設っぽいとこで何か白い髭生やした怪し気なおっさんがいじくってた。二つ目は……えーっと……ピグリムだっけ? あのボスっぽい奴の部屋で見つけたな」

「……んー。部屋にあったって事は……残り一個も本人なら知ってそうだね。今気絶してるから聞けないけど」

「……拷問しよう(聞き出そう)か?」

 何やらおかし気なニュアンスでミグがそう尋ねるとプランは首を横に振った。

「いや。それは流石に私達の出る幕でもないしする事じゃないでしょ」

「……そか」

 ミグは興味なさげにそれだけ答えた。


「まあ。出来る限りはしたしこれで良いだろ。別に俺達がこっそり指輪を確保する訳じゃなくてさ、ただ指輪を持ち主に戻せば良いだけだろう?」

 サリスの言葉にプランは頷いた。

「うん。それで上手くいくって」

「んじゃ後は今、必死に探している誰かが見つけて届けてくれるのを待とう。もしかしたらもう届いてるかもしれんしな」

 そうサリスが言葉にするとエージュは渋い顔をしてみせた。

「……これが大きな物でしたらそれで良いのですが……小物で、指輪ですと……」

「あん? どういう事だ?」

「いえ。その……真面目な方を疑いたくはないのですが……こういう時って毎回、何故か色々と行方不明になるんですよ。宝石とか指輪とかは特に……」

 エージュの言葉にサリスは何かに気づき渋い顔をした。


 現在町民達が拠点内を隈なく探索している。

 そう、彼らは規律の整った軍人でも、依頼に対し不義理な事をすれば仕事がなくなる冒険者でもない。

 ごく一般的な、良い意味でも悪い意味でも普通の生活を送っている人達である。

 普段悪人というわけでなくとも、ふらっと欲に負ける事は良くあることだった。


「……うん。二人が何を考えているかわかるよ。でもその場合はたぶん大丈夫」

 プランはそう言葉にした。


 もし、もしもの話だが誰かがその指輪を盗んだならば、その人には正直同情する事しか出来ない未来が待っている。

 本当の依頼人を知っているプランはそう考えた。


「……んー。ま、プランが大丈夫って言ってるなら大丈夫なんだろう。んじゃ、この指輪二つを誰かに預けたら終わりか?」

「うん。今回お話のまとめ役はシュウさんだしシュウさんに預けたら良いでしょう。依頼の方も何とかしてくれるみたいだし。だから後は……帰るだけだね」

 そのプランの一言に、ミグ以外の全員が盛大に息を吐き、今まで引き締めていた気持ちを一気に緩めた。


 戦闘能力はありそれなりに冒険者の経験はあるのの、彼らは全員見習い冒険者である。

 長期依頼で息を抜くタイミングがわからず、ずっと緊張の糸を張り詰めっぱなしだった。

 それが今、ようやく緩める事が出来ていた。


「お疲れ皆。ごめんね無理させて。私に出来る事があれば何でもするから言ってね」

 プランがそう言うとミグは迷わず手をあげて「ご飯」と呟いた。

「そりゃ良いな。下手な店で食うよりそっちの方が美味いんだし各自食材を持ち込んでプランに飯作ってもらって打ち上げするのってはどうだ?」

 サリスの言葉にミグは無表情のまま小さく拍手をした。

 ただ、その目はやけにキラキラしていた。


「……今回の報酬って幾ら位かな」

 ミグがそう呟くと全員が顔を合わせ、そしてプランに瞳を集中させた。

「そういうのはテオとかの方が詳しいからわかんないけど……まあ結構良い金額は貰えるんじゃないかな? 最低でも一人金貨数十枚はあると思うし」

「……それでご飯の材料どの位買えるかな?」

「ミ、ミグちゃん。一体どんな高級食材を買うつもりなの?」

「……全額使って買える一番おいしい物」

 ミグのその言葉はとても冗談には聞こえなかった。

「勘弁してください。高い素材使っての調理はあんまり自信ないよ私」


 プランが困り顔でそう答えるとサリスは何かを思いついた様な表情を浮かべヴェインハットの方を見た。

「おいヴェイン。デートしようぜ」

「はい喜んで―!」

 ほとんど条件反射の様にヴェインハットはそう答えた。

「まあ半分冗談は置いといてだ」

「半分は本気なんですかやったー!」

「いや。まじで言うと二人で狩りしようぜ? んでそこで取った素材をプランに調理してもらう。新鮮な肉が食えるしお前も俺と一緒にいられる。俺も狩りが出来る。悪くないと思うがどうだ?」

「……俺としてみれば死ぬほど嬉しいが、だが今回のご褒美ならばサリスの手料理も……」

 その言葉にサリスは溜息を吐きプランの方を見た。

「あー。飯の作り方教えてくれ。簡単な肉料理一品」

 その言葉にプランはニヤニヤしながらサムズアップをして見せた。


「領主があんまり軽薄な事は……ですが……本人が望んでですし……」

 エージュは何とも言えない困った顔を浮かべていた。


「あ。私ミグちゃんにもだけどヴェインにも助けられてるし私も何かお礼するよ。何が良い?」

 そうプランが尋ねるとヴェインハットは少し考え首を横に振った。

「いや。別に良いさ。その分ミグに美味い飯作ってやってくれ」

「……私、今初めてヴェインを尊敬出来た」

「今初めてなのかー」

 そんなミグの呟きに対しヴェインは悲しそうにそう答えた。


「……まあご飯位なら私でも出来る事だし……全員に美味しい物作りましょう! ただし! 全員揃って食べられる様になってからね?」

 今ここにいない人達の事を思い浮かべながらプランがそう言葉にすると、全員しっかりと頷いて答えた。

「揃ってないと祝杯を挙げる意味がないからな」

 サリスはそう呟くと皆が同意する様に微笑んだ。






 ごそごそ……。

 それは体をよじっているというよりも、何かをこっそりと行っているという方が正しいだろう。

 ロープの結び方は恐ろしく高度で決して外れる事はない。

 その上で見張りは常にこちらを警戒している。

 その見張りはただの町民とは思えないほど真面目だった。

 どちらかと言えばそうでない方がありがたいのだが、それでも彼らは職務に忠実で、捕縛対象に近づかず、ただじっと見ているだけだった為、男は寝たふりをして偶に身をよじる事しか出来なかった。


「……交代の時間だ」

 テントの中に入って来た男達はそう言葉にした。

「了解。後は頼む」

 そう言ってさきほどまで経っていた見張り五人組はそのテントを後にした。


「こいつが俺達の町を……」

 交代し、五人が見張りの為に隊列を組むと男の一人がそう呟き、そして唐突に倒れているその対象をボールでも蹴る様に思いっきり足を振りぬいた。

 鈍い音が響き、それと同時に男は残り四人に取り押さえられる。

「おい止めろ! そういう事はするなってしつこい位言われてただろうが!」

「だがな! こいつの所為で俺の町はなくなった! お前らだって盗賊の被害に最近まで苦しんでいただろうが!」

 その言葉に取り押さえていた一人の男は手を放し、ぽつりと呟いた。

「……俺な、アップルツリーのリンゴを取って生計を立てていたんだ」

 そう呟いた男は見るからにがりがりで栄養失調に近い状態となっていた。

 戦う為に食料を分けてもらった為今は平気なのだが、それでも長期の飢餓という地獄を見た男は蹴りかかった男の気持ちが痛いほどに理解出来た。


 そもそもの話を言えば、わざわざ兵隊代わりになりに来たのだから大なり小なり辛い目にあっている。

 だからこそ、一人、また一人と蹴りを放った男を止める手は離れていき、気づけば全員が倒れて意識を失っている捕縛対象を見下していた。


 狭い空間で誰も見ていない。

 外に見張りはいるが騒がしい為よほど音を立てない限りは聞こえる事もない。

 五人全員が怒りを覚えていて、止める者はもういない。

 そして彼らは、正義という名目で自分達に都合の良い制裁という名前の暴行を開始した。


 殴った。

 蹴った。

 怒りに任せて、ただ暴力を振るった。

 誰も得しないそのリンチの中で、たった一人、殴られている男だけ笑っていた。

 怒りに我を忘れた彼ら五人は、それに気づく事はなかった。




 しばらく経った後、テントの中から鎧を来た男が、一人だけ外に出てきた。

「お。終わったのか?」

 中で何が起きたのかわかってはいたが敢えて触れなかった外の見張りはからかうようにそう尋ねた。

「いや。まだだ。だが、ちょっと催してな」

「ははっ。どうせならかけてやりゃよかったのに」

「よしてくれ。他の奴らに見られてしまう」

「シャイな奴だ。それ位気にするなよ。まあ良いか。早めに戻って来いよ」

 その言葉に手を上げて答え、男はその場を離れていった。


「……あいつ。トイレの位置間違えてやがるな。戻って来た時からかってやろ」

 トイレに行くはずの男が別の場所に向かっている事に気づき、見張りは男の後ろ姿を見て笑った。


 だが、いくら待っても男が戻って来る事はなかった。




 プラン、サリス、エージュ、ミグ、ヴェインハットという五人で話をしていると、何時まで経っても会話が途切れる事はない。

 それは仲が良いからという理由ではなく、ただ単純にまとめ役がいないから何時までも中身のないぐだぐだ話を続けてしまうという意味である。

 切り替え、纏める事に長けたテオや非常識な発言を窘める役のヴェルキス、そして真面目な話以外入ろうとしないクコがおらず、真面目ポジションなのがエージュ一人のこの状況では、どうあがいてもふざけた会話しかする事が出来ない。


 時々ミグが突拍子もない事を言って、また突拍子もなくヴェインハットがふざけて、サリスが妙に男らしい事を言ってはエージュに窘められ、プランが楽しそうに()()()()話を掘り下げる。

 野外に椅子とテーブルだけで飲み物すらないのに、そこはまるで室内にいるかの様に五人は気を緩め切っていた。


 そんな中、町民らしき男が慌てた様子で五人のテーブルに駆け寄って来た。

「き、緊急事態です!」

 その言葉に五人は驚き、椅子から立ち上がった。


「……何があった? ……おい、何かあっちの方騒がしいぞ」

 サリスが山の向こう側で町民達が騒いでいる事に気づきそう言葉にした。

「はい! 大変なんです」

「だから何があったんだ?」

 そうサリスが尋ねると男は駆け寄り、油断しきっている所に持っていた剣をサリスに向け――。


 ギィン!


 金属同士がぶつかり合う音が響いた。

 完全に気が緩み、斬りかかられた事にすら気づいていなかったサリスはプランが盾を構えて割り込み防いでくれた事に今更気が付いた。

「わ、わりぃ」。

「良いよ。体動いて本当良かった」

 そう言ってプランは安堵の息を漏らした。


「……気配は完全に油断していたはずなのですが」

 鎧を着て町民に化けた男、ピグリムがそう尋ねるとプランは頷いた。

「うん。でも私、いつも気を抜いて生きているからかな。咄嗟に体が動いちゃった」

 出て来る前に学んだ甲斐があったらしく想像以上に上手く動けたプランはそう言葉にした。


 そしてプランとピグリムがそんな会話をしている間に、残った四人はピグリムを取り囲む様な陣形を取った。

 さっきまでの緩んだ空気は霧散し、引き絞った弓の様な一触即発の空気だけが残されている。

 ただ、そんな中でもピグリムは余裕綽々な様子で、堂々とした態度で笑みを浮かべていた。


「ふふ。最後に貴方方と会ったのは幸運なのでしょうか不幸なのでしょうか。まあ――奥の手を切るには丁度良い相手であるとも言えますかね」

 そう言ってピグリムはどこからか指輪を取り出し人差し指にはめた。

「馬鹿な! 隠していないかしっかりと確認したはずなのに!」

 そうヴェインハットが叫ぶとピグリムは呆れた様な顔を浮かべた。

「……貴方あの時のメイドですか。……いえ、凄い能力とは思いますが……ちょっと引きます」

 その言葉にプラン、サリス、エージュは同意する様に軽く頷いた。

「……巧く化けられたと思ったのだがな」

「巧過ぎるから引くんですよ。まあそれは良いです。貴方方はこの指輪の事をご存知でしょうか?」

 ピグリムの堂々とした態度は五人が攻めてきても何とかなるという自信の表れである。


 それがわかるからこそ、現状五人は様子を見る事しか選択出来ずにいた。


「知ってるよ。それを取り返すのも依頼の内だから」

 プランが代表としてピグリムの問いにそう答えた。

「そうですか。まあ確かに……この発明にはそれだけの価値があるでしょう。特にこの指輪には……」

 そう言ってうっとりとした様子で指輪に視線を向けた。


「一つは炎を生み出す魔法。それは小さな種火程度です。もう一つは水を生み出す魔法。まあ大した量は出ないですか。こんな風に便利ではありますがその程度であり、大局を変えるとはとても言えない指輪です。ですが……これだけは別でした。その前に、一つ講義をしましょう。他者を強化する魔法は多くあれど他者を弱体化する魔法はあまりありません。それは何故でしょうか?」

「……抵抗されるから」

 ミグがそう答えるとピグリムは微笑み頷いた。

「正解です。他者を害する魔法はどの様な物であれ本人が拒絶すれば効きが恐ろしく悪くなります。一流の魔法使いが全力で魔法を使っても、抵抗する一般市民相手にですら最低五割は抵抗されます。一説によればそれは女神の祝福による御蔭だそうです。ですので、もし他人に抵抗出来ない様な魔法が使えれば……歴史が変わると思いません?」

 邪悪な笑みを浮かべながら、ピグリムはそう呟いた。

「……あり得ない」

 ミグはそう呟いた。

 それが嬉しかったのかピグリムは高笑いを上げだした。

「あはははは! そう、今まではあり得なかったんですよ! ですが、この指輪で使う魔法にはそれら一切()()()()()んです。というよりも、その抵抗を指輪の保有者が解除する事が出来ます。これからその理由も調べますが、おそらく妖精を経由しておらず魔法陣も使ってない事がその理由かと。そして……この指輪に込められた魔法は――『()()』です」

 その言葉を聞き、サリスは慌ててピグリムを殴りに行った。


「遅いですね! さあ! 『スリープ!』」

 サリスの動きを予想していたのか、ピグリムはサリスに向かって腕を行け、そう高らかに叫んだ。


 小さな指輪は鈍く輝き、そして想定通りの効力を発揮する。

 あらゆる抵抗を無視し、()()()()()()()()()()()

 それを使えばどの様な武官であれ、どの様な強敵であれ一瞬で無力化が可能となるだろう。

 寝ながら戦える者などいるわけがないからだ。


 だからこそ、ピグリムは絶対の勝ちを確信していた――夢の中で。


 目を閉じて諦めた様子のサリスの拳はそのまま、別の理由で目を閉じ意識のないピグリムの顔面を見事なまでに捉え、クリーンヒットする。

 そしてピグリムは衝撃で鼻血を出しながらきりもみ回転をし、その直後地面に叩きつけられ芋虫の様な恰好となる。

 ただし、その寝顔は恐ろしいまでに晴れ晴れとしていた。


「……は? え? どゆこと?」

 状況がわからずそう呟いたサリスの問いに誰一人答える事が出来ず、皆が茫然とした様子でピグリムを見つめていた。


ありがとうございました。



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