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3-29話 神から与えられた使命26


 三人の戦いは人を寄せ付けないほどに苛烈を極めていた。

 走り回り跳びまわり、人という生き物はあれだけ動けるのかという様な挙動での移動を繰り返し、拳と剣が重なった時に発生する金属音は耳をつんざくほど。

 目立ちすぎる彼らの戦いに周囲の者は気づき、盗賊側も町民側も彼らを援護しようと一度は考え、そして諦めた。

 援護どころか巻き込まれそうで近づく事すら出来なかったからだ。

 そこは、盗賊と町民の争いでは本来あり得ないほどレベルの高い戦場となっていた。


 彼らの戦いは確かにレベルが高い。

 だが、彼らの戦いを吟遊詩人が見たとしても、その戦いを詩とする事はないだろう。


 確かに彼ら三人共が一騎当千と呼んで差し障りない程の実力を発揮している。

 しかし、彼ら三人共のその戦い方は、英雄の様な王道的なものでは決してなく、三者共種類こそ違えど、皆が文句なしの邪道であり、どこか悪質さを持っていたからだ。

 お互いが相手を殺す事のみを追い求め、純粋たる殺意に突き動かされた肉の塊三つによる凄惨たる戦い。

 そこにいるのは人に在らず、彼らは殺意に身を染めた人外でしかなかった。


 小柄で可愛らしい容姿の少女ミグは白銀に輝く弓を持ち、物静かに佇んでいる。

 普段ならチャームポイントの一環でしかないその無表情さも、この戦場においては異質な物として不気味に映っていた。

 自分も、仲間も血をだくだくと流し顔色を悪くしているのに常に無表情でいられるというのは普通ではない。

 そして、それを見た人の印象は最悪である。

 無表情のまま、刃を振るい、矢を放ち、常に的確に急所を狙うソレは暗殺者すら真っ青になるほどで、可憐な少女であるからこそギャップで恐ろしかった。


 特殊な剣を持っている事を除けば、ヴェルキスは一般的な冒険者よりもモラルが高い善良な冒険者と言えるだろう。

 だが、その特殊な剣がヴェルキスの持つ善性を全て台無しにしている。

 文字通り血と恐怖を啜って生きている魔剣の挙動は、美しさを感じるほどに鋭い。

 そこに道徳や躊躇いという物は一切存在せず、それこそ意のままに操れば呼吸をする様に生き物を殺す事が可能である。


 そんな二人を相手にし、生き延びているどころかまともに渡り合えているラケルタ。

 挙動はとにかく気持ち悪いの一言であり、長い手足で地を這い木々に飛び移るその動き方はどことなく蜘蛛の様であり、ねちっこく付きまとうその印象は蛇の様でもある。 

 直視に耐えないほどシンプルに気持ち悪く、それでいておぞましい。

 そして、とにかく強かった。




 その戦いのポイントを一つ上げるとすれば疲労である。

 ヴェルキスとミグは例え単体であっても、本来ならラケルタに負ける様な実力ではない。

 ただし、それは疲労がお互いないという仮定の元で成り立つ話であり、今現在の状況では当てはまらない。


 戦いの序盤をラケルタは野生の本能かそれとも策略か、ボロボロになりながらも紙一重で耐え抜いた。

 そしてヴェルキスが疲労を感じだしてから、そのパワーバランスは一気に逆転した。

 ラケルタの方が何倍も、何十倍も動き回っているし傷も多い。

 だが、それでもラケルタからは疲労した様子が見られなかった。

 それは体力自慢の武官ですらあり得ないほどのスタミナであり、あまりにあり得なさすぎる為正直何か仕掛けがあると仮定した方が良いレベルだった。

 だが、その仕掛けを探る時間もなければ考える余裕もなく、二人に出来る事は上手くスタミナを分配し交代々々に戦う以外になかった。




 ラケルタは静かに拳を握り――そのままミグの顔面をぶん殴る。

 ミグは何とかインパクトの瞬間をずらす事に成功したが、それでも威力は十二分に乗っており、無理に体を固定して耐えてしまえば首が折れる為ミグはその勢いに逆らわず盛大に吹き飛ばされた。

 そのミグを庇う様にヴェルキスは前に出てラケルタの動きを制限する。


 ラケルタの様子は初期の頃と比べて大分様変わりした。

 少し前まではチンピラの様に罵詈雑言を重ね鼻で笑い見下す様な態度を取っていたが、最近ではそれはない。

 だが、それは決して疲労を感じたから静かにしているというわけではない。

 むしろヴェルキスは今のラケルタの方が恐ろしかった。


 濁り切った力なき目で睨みつけ、口は延々と何か独り言の様なものを延々とぶつぶつ言っている。

 その言葉は、『死ね』だ。

 延々と、呪詛の様に、濁った瞳で死ねと繰り返すラケルタ。

 今までは強い殺意もあったがどこか人間じみたゆとりのある感情もあったように感じた。

 だが、今のラケルタからは純粋たる殺意しか感じず、そこに感情の余地は一切ない。


 出来るだけ殺さずにと言われていたが、コイツだけは無理だとヴェルキスは思った。

 生きていれば例えどんな状況であっても、それこそ首だけでも殺しに来るだろう。

 これはそう言う生き物であり、魔物と大差ないものなのだ。

 そうヴェルキスは理解した。


「なあ。なんでそんなに俺達を殺したいんだ?」

 剣と杭で斬撃音を鳴らしながらヴェルキスは唐突に、ふとした疑問をぶつけた。

 その返事が返ってくる事はないだろうと思っていたのだが、意外な事に答えはあっさりと返ってきた。


「強い奴は俺以外いらない。後は全部殺す。皆殺す」

 淡々と、冷たい声色であるが、確かに強い意思が含まれた言葉だった。

「……そうかい。お前さんも十分強いと思うがね」

 その言葉に、ラケルタは肩眉を上げ顔を歪めるほど感情を露わにする。

「十分だぁ? 見下してんじゃねぇぞゴミ屑の魔剣野郎が!」

 本当に唐突に、今までの冷静さを失い暴れる様に拳を振り乱すラケルタ。

 これでその飛んだ理性と同じ様に荒々しい攻撃になってくれたら楽なのだが、攻撃事態は荒々しいが乱雑なものでは決してなく、一撃一撃が先程までと同じ様に殺意に溢れている。


「別に見下したつもりはないぞ。俺達二人相手にここまで戦えるって正直やばい。俺魔剣込みなら武官に近い実力あると思ってるんけど」

「たった二人にてこずっているじゃねーか。そんな事認められるか! 全員だ! 貴様も、そこのチビガキも、どっかの偉い王様も! 全員俺が殺す。俺以外の強者はこの世界にいらねーんだよ!」

 そう吼えながらのラケルタの拳と杭の猛攻をヴェルキスは強引に受け流した。


 今、無理に戦う必要はない。

 むしろ疲労でいつ動けなくなるかわからない状況なのだから体力を温存する為攻撃を最小限にする。

 それに加えてミグの回復も待つ必要がある。

 だから無理に戦わず防ぐ事を第一とする。

 今最も適切な回答のはずだ。

 そうヴェルキスは考えた。


「ん。もう大丈夫。お待たせ。変わる?」

 そうミグが尋ねるとヴェルキスは気前の良い斬撃の音で返事をした。

「いや。まだいけるから少しでも回復してくれ。または援護できそうなら頼む」

「……わかった。セット」

 そう言いながらミグは魔法を使い、ボロボロになったヴェルキスの鎧の上に青白い透明な膜を張る。

 その瞬間に鎧の重さは一気に軽くなった。

「お。すげぇなこれ。あんがとな」

「……がんば」

 後ろでそう言葉にするミグに手だけで返事をし、ヴェルキスは襲い掛かってくる杭をカウンターで打ち落とし、転がった杭を足で遠くに蹴飛ばした。

「……ちっ。これはもう無理か」

 そう呟き、ラケルタはそのまま数歩後ろに下がる。

 だがその呟きとは裏腹に、ラケルタの表情はどこか晴れ晴れとした様子となっていた。


「……どした? 正直お前の場合は悪いが降参してもその場で殺すぞ。痛くしない様にはするが」

 ヴェルキスの言葉にラケルタは鼻で笑った。

「はっ。俺が降参? それだけはないな。ただ……お前らに勝つのは無理だと思って諦めただけだ」

「……逃げるか。そうだな。お前の足の速さなら追いつけんわ。俺らからすれば一番して欲しくない行動だ」

 その言葉にラケルタはヴェルキスに冷たい目を向けた。

「お前何も知らないんだな。そっちのチビガキ俺が逃げられない様周囲に何か細工してやがる。だから俺は逃げる事も出来ん。逃げる気もないがな」

 その言葉にヴェルキスはミグの方を見た。


「そうなのか?」

「ん」

 それだけ答えた後、二人は再度ラケルタの方に顔を向けた。

「んじゃ、どうするんだ? 戦うも逃げるも出来ず、何かあるのか?」

「さて。どうするんだろうね。ただまあ、お前らはマジでヤバイという事だけはわかった」

「お前の方がヤバいだろ」

 ヴェルキスがそう言葉にするとラケルタは首を横に振った。

「俺は俺自身が把握している異常者だ。とにかく強い奴が妬ましくて憎くて気に食わなくて、殺したくて仕方がないっていうな。だが、まともな精神で大量殺人(俺みたいな事)をしているお前もやばいし、それ以上にそっちのガキがやばい」

「……俺自身は普通のつもりだけどなぁ」

「普通のまま人殺し出来てるからやばいんだよ」

 そんな正論に何も言い返せずヴェルキスは溜息を吐いた。

「そっちのガキは色々な意味で桁外れだぞ。……お前、今まで何人殺して来た? 死刑執行人より臭い俺よりも更に血の臭いが強い奴なんて早々いないぞ」

 その言葉にミグはきょとんとして、そして首を傾げた。

「……さあ?」

 ミグは本心から、どうでも良さそうにそう答えた。

「……すげぇな。ちょっとだけ尊敬するわ。何か混ざり――いや、何でもないわ。ところで、冥途の土産はこんなもんで良いか?」

「は?」

 ヴェルキスが唐突な言葉に驚きそう呟くと同時に、ラケルタは懐から黒いボールの様な物を取り出した。


「数に限りがある上にな、糞野郎から渡された物だから心情的にも使いたくなかったが……そうもいかない。まあ、これはアレだ。早い話が切り札って奴だ」

 そう言ってラケルタはニヤリと笑った後、そのボールを空に投げ、叫んだ。

「喰らい付け!」

 次の瞬間ヴェルキスの視界は闇に染まった。




 終わった。

 一瞬そう思った後に、視界は真っ黒なままだが未だ肉体の感覚が残っている事に気づき、違うという事に気が付いた。

 言葉から対象を殺す道具かと思ったが、どうやらそうではないらしい。

「これはな。狭い空間に属性を付与する道具らしい。ちなみに付与する属性は闇と夜だ」

 どこからともなくラケルタの声が響く。

 それは近くからの様でもあるし、遠くからの様にも聞こえる。

 一つだけ確かなのは、聴覚では位置を特定出来ないという事だ。

 その為ヴェルキスは魔剣により鋭くなった己の感覚、第六感でラケルタの位置を把握しようとして……失敗した。

「なっ! どうして……」

 そう驚くヴェルキスの声に、ラケルタは楽しそうに笑う。

「あははははは!」

 楽しそうな高笑いは延々と続き、そして笑いが止まった瞬間――バギッと鈍い音が響きヴェルキスの右足に強い痛みが突き刺さった。

「あがっ!?」

 声を殺す事が出来ないほどの痛みを受け、そのまま体重を支えきれずヴェルキスは無様に倒れた。

 足の状態を目視で確認する事も出来ない。

 だが、足の膝より下は一切感じない事と立ち上がる事も出来ない事から最悪を意識した方が良いだろう。


「剣士の感覚も闇に飲まれる。つまりこの空間は技量派剣士にとっては天敵という事だ。さて、出来るだけ苦しまない様にしてやるよ。気分が良ければな」

 その言葉と同時に、ヴェルキスの右膝に熱く感じる様な痛みが走る。

 これは経験のある痛みである為、何があったのか理解した。

 膝に杭が突き刺されたのだ。


 小さく悲鳴を漏らすヴェルキスに対し、ラケルタはけひっと嬉しそうに、不気味に笑った。

「いやー本当強いなお前。いや、強かったなお前」

 そう言った後、ラケルタはそっとヴェルキスの右足付近を触った。

 どうやら右足はまだ切断されておらず、感覚も残っていたらしい。

 そして直後にぽきっと子骨が折れる様な音が聞こえ、足先に鋭く耐えがたい痛みが走る。

 どうやら足の指を折られたらしい。


 ただ、今までの痛みが強すぎた為、それと比べたら片手落ちの為か声を堪える事は出来た。

「さて、どこまで痛みが我慢出来るかね。あと九本、いや、十九本もあるぞ」

 そう言って次の指をラケルタが触る。

 それに覚悟を決めてヴェルキスが固く目を閉じた瞬間――ゴギリ! と、何かが砕け折れる大きな音が響いた。

 ただしその音に対してヴェルキスは一切痛みを感じておらず、代わりに、その直後痛みの主であるラケルタの絶叫が轟いた。


「何が――」

 そう呟いた瞬間、ヴェルキスは背中に何か、ぞくっとしたものを感じた。

 ラケルタという強い殺意以外に、もう一つ何かがある。

 自分の背後の様な、隣の様な、どこにいるのかわからないこの闇の中でも確かに確認出来る何かが。

 それが何なのかはわからない。

 だが、それに対して自分が何を感じているかは理解出来た。


 ヴェルキスが今心の底から感じている物、ラケルタの殺意すら忘れそうになるほど強いその感情は――恐怖である。

 凍える様な日に一人外でいるような、体が芯から冷えていく冷たい恐怖。

 一瞬でも早くこの場を立ち去りたい。

 逃げ場がなくても、足がなくても、魂だけになってもこの場に佇んでいたくない。

 純粋たる殺意とは正反対の他人を震えさせるほど悍ましい恐怖を与えるソレが誰かを、ヴェルキスはわかっていた。

 わかっていたが、正直理解したくはなかった。


「……ミグ……か」

 その言葉に返事はなかった。

 代わりに、ぐべちゃりとぬめった何かが地を這う音が響いた。


 パキッ……グチャッ!

 何かが潰れる音が聞こえ、再度ラケルタの絶叫が耳に届く。

 それはすぐ傍の様で、遠くの様で、そして他人事ではあるはずなのにヴェルキスの震えが止まる事はなかった。

『ねぇ。これ。まだある?』

 ミグの様な声が響いた。

 脳に直接語り掛けられるように聞こえるその声は、確かにミグの声だと認識出来る。

 だが……同時に見てもいないのに美しい美女の様な声であるとも何故か認識出来ていた。

 その魔性の声を聴くと魅了されてしまいそうになる。

 だがそれ以上にその声は恐ろしくヴェルキスは怪我ではない理由で一歩も動く事が出来なかった。

 

「……知るか」

 ラケルタのそんな言葉の後、ぐちゃりと言う音と同時にラケルタが悲鳴を上げ――そしてその裏ではぐちゃりばきりと咀嚼音の様な音が響き続けた。

「こ……こいつ、俺の手を――食い」

『ねぇ。他にないの?』

「も、も一個ある。俺の懐に――」

 その言葉と同時にドスッと言う音とびりっと布が破れた様な後が聞こえ、ぽたっぽたっと何かが下たる音に変わった。

『ねぇ。最後に何か言う事ある?』

「……俺は夜目が利く。この場所でも夜という属性がある限り昼間同然に見える。なのにさ、どうしてお前の姿は見えないんだ?」

『どうしてかしらね?』

 少しだけ楽しそうに、そして少しだけ悲しそうにミグらしき何かはそう言葉にした。

「……混ざり物の化け物め」

 そう言葉にした後、ひときわ大きく何かが壊れる音が聞こえ……それから五分ほど咀嚼音が響いた。

 殺意はなくなった。

 だが、恐怖を感じる気持ちはなくならずヴェルキスは震えたままとなっていた。


 それと同時にその咀嚼音の最中、ヴェルキスはミグらしき誰かに手当を受けていた。


 自分の位置と咀嚼音の位置は別であるはず。

 そもそも、手当も明らかに両手を使っていた。

 ヴェルキスはさっぱり意味がわからないまま、されるがままとなっていた。




 咀嚼音が止んでしばらくすると闇夜が消え、周囲が森らしき風景へと戻った。

 そこは何事もなかったかのように元通りとなっていた。

 ラケルタの姿はどこにもなく、どこにも血の跡が見えない。

 ミグも元通りいつものままとなっている。

 そう――ミグはいつものままだった。

 服にも、体にも、一切傷のない戦う前の……。


 当然だが、ヴェルキスの体は穴だらけの傷だらけである。

「……ん。とりあえず、戻って休んで」

 ミグはそう言葉にした。

 いつも通りの様で、そこには一切何の変化も感じない。

 だが、変化がないわけがないのだ。


 何が起こったかわからない。

 ミグが何なのかもわからない。

 だが、二つだけ確かな事がある。

 ミグは仲間であり、そしてあの姿は隠したかったはずである。

 だとすれば、ヴェルキスのしなければならない事は一つだけだ。


 ヴェルキスはさっきまでの恐怖を押し殺し、笑いながらぽんぽんとミグの頭を撫でた。

「ありがとな。助かった」

 それに対し、ミグは真顔でヴェルキスの方を見つめた。

「……男の人が頭を触ってきたら怒れってプランが言ってたけど、怒って良い?」

「……すまん。謝るから許してくれ」

「あい。私は気にしないけど……プランがそう言ってたから」

「そか」

 そう言ってヴェルキスは笑った。

 笑う事が出来た。


「ところで……一つお願いが……」

 いつも無表情なのに、珍しく怯えた様子を見せながらミグがそう言葉にしだした。

 何を言うか予想していたヴェルキスはしっかり頷いた。

「ああ。さっきの事は誰にも言わない」

 その言葉に、ミグは目を丸くし首を傾げる。

「……え? それはどうでも良い」

 その言葉にヴェルキスは叫んだ。

「良いんかい!? じゃあお願いって何だ?」

「……殺しちゃった。プランから殺すなって言われてたのに……だから……謝る時は一緒に……」

 がくがくと震えながらそう答えるミグの様子は、歳相応以上に幼い様子だった。

「何なら俺が殺した事にしようか?」

 その言葉に一瞬だけぴくっと耳を反応させ、そしてミグはブンブンと首を横に振った。

「ダメ。人の所為にしたら駄目ってプランから怒られた」

 その言葉にヴェルキスは苦笑いを浮かべた。

 まるで母親に怯える子供である。


 ――プラン。すっげぇ苦労して教育したんだろうなぁ。

 そう思いながらヴェルキスは頷いた。

「そうだな。じゃあ、ぶっちゃけ俺もアレは殺すつもりだったし二人でやった事にしよう。それで間違いないし、何なら俺が庇う。あいつ殺してなかったら俺死んでたからな」

 その言葉に少し考えた後、ミグはこくこくと何度も首を縦に振った。


「んじゃそういう事で。ついでに功績残して少しでも褒められる様頑張るか」

「……ん。でも、ヴェルキスは休んで。怪我が酷い」

「んー。いや、確かにしんどいが……何かさ、お前から目が離せん。お前は本当色々な意味で何しでかすかわからないってわかったからな」

 そう言ってヴェルキスは肩を竦め、足を引きずりながらミグと共に歩き出した。


ありがとうございました。

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