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2-19話 一応の区切り


 ギャリシー達が連行された翌日、プラン達は呼び出され唐突にクラス変えが行われる事となった。

 学園側の動きは迅速で、ギャリシー達の事をまるで全て予想通りだと言っているようだった。


「さーて、そういうわけで教室の位置とクラスメートを若干変更する。と言っても、大した事ではなくちょっと新入生が減るだけだ」

 そう死んだ目の先生は言葉を発した。

 その言葉の通り、教室の場所が変更となり、席が四つ消えている事を除けば今までと大した変化はなかった。


 ただし、どうやらその全てが学園側にとって想定内の事態というわけではないらしい。

 その学園側の誤算の所為で、現在この教室内で虐めのような誤算が生じていた。

 前と比べて減った席の数は四つ。

 そして減った生徒の数は、ギャリシー、グルディ、ゲーナの三人。

 どういう訳か席が一つ足りなくなっていた。


「わ、私が立ってるね」

 プランはそう言葉にして席を立ちその場所を避けた。

 が、席が足りずに立ったままになっていたクコは首を横に振る。

「いや。どう考えても席が足りないのは俺の所為だろう。あっち陣営だった俺がここに居る方がおかしいもんな。だから俺が立っておくよ。何ならこれからずっとでも」

 そう言葉にするクコに、プランは泣きそうな顔で俯いた。


「あー。まああれだ。しんみりさせているとこ悪いが席が足りないのはただの俺のミスだ。明日には届く。だから気にするな。んで、確かに悪いのは俺だが……俺が被害を被るつもりもなければ謝る気もない。そしてこんな気まずい空気の中話すのも嫌だ。つーわけで……連帯責任で新入生全員今日は立って話を聞け」

 先生の言葉にプランはぱーっと明るい笑顔を浮かべた。

 その後、誰一人、文句を言わず席を立った。

 ほとんど接点がなく単独行動の多いダルクですら、何一つ文句を言わず当然のように立ち上がっていた。


「……悪い。皆」

 クコはぽつりとそう呟くが、皆その言葉を無視した。

 嫌がらせや仕返しといった感情ではなく、無意味な謝罪を受け取る気がないからだ。


 いちいち細かい事を気にするよりも、明日の生活の為に冒険者同士の仲を深める。

 ここにいるのは未だ卵ではあるが、それでも冒険者達であった。


「先生! 単刀直入に聞きます! ギャリシー君達どうなったんですか!?」

 その言葉に先生は眉をひそめた。

「本当に単刀直入だな。そして、あいつらはもうクラスメイトではないし生徒に話す事でもない。お前らには関係のない事だ……って言わないといけないんだが……」

「だが?」

「プランには色々飯もらったし菓子もらったりしてるからな。ヒント程度で良いなら話そう」

「ありがとう先生! 今度新作持ってくね」

 その言葉に先生の死んでいた目は一瞬だけ生き返り、普段無表情のミグの目が一瞬だけ怒りと嫉妬に染まった。


「まず、前提の話だが……四人、いや三人か。学園側も別にあの三人を追い詰めたかったというわけでもないんだ。むしろ、あいつらにも十分以上に期待していた」

 それを枕詞とし、所々ぼやかせつつ学園の思惑を語りだした。


 学園側は問題児だからと言って彼らを利用しようなんて考えはなかった。

 学園側にとってほとんどの生徒は皆、尊い未来の可能性であるからだ。

 逆に言えば、学園側にとって生徒とは可能性でしかない。


 その為……学園にとってはどちらでも良かったのだ。

 善良な考えの者がアウトローを排除したとしても、逆にアウトローが恐怖や威圧など独自の方法でクラスを纏めても、どちらでも構わなかった。

 皆に生存競争というチャンスを与え、戦い勝ち残る者、つまり戦いの勝者を生み出す事。

 学園の目的はそれだけだった。


「ただまあ……。言いにくい事だが学園としてのお気に入りがこのクラスにいるからその子は色々優遇されているけどな。あ、誰とは言わんぞ。バレたらめんどいから」

 そう言って先生は言葉を締めくくった。


 ――ま、今回は学園としても少々嬉しい、想定外の小さな誤算が起きたのだがな。

 そう思いながら、先生はちらっとクコの方を見た。


「先生。それはどうでも良いんでギャリシー君達がどうなったか教えてください」

 その言葉に先生は苦笑いを浮かべた。

「いやどうでも良いって……結構重要な秘密なんだぞ。……あー、まあ退学にはなっていない。あいつらも最初このクラスに選ばれたように能力は優秀だからな。運が良ければこの学園で会えるかもな」

 退学した方がきっと幸せであろうという事は言わず、先生はそう言葉にした。

 そして、それ以上はどう尋ねようとも何も言わなかった。


「先生! もひとつ質問が!」

 元気良く手をあげるプランに先生は溜息を吐いた。

「アレがらみの事はもう何も言わんぞ」

「いや。そうではなくて……名前を――」

「あん? 名前がどうした?」

「いや、先生の名前いい加減教えてもらいたいなと」

 その言葉に、先生は死んだ目のままきょとんとし首を傾げた。

「あれ? 言ってなかったっけ?」

 その言葉に、クラス全員が頷いた。


「あー。そりゃ悪い。グライブル・ラスカディ。金欠で独身養ってくれる美人さんを募集中のお兄さんだ」

 どう見てもおっさんにしか見えない男はそう言葉にした。

 駄目人間感が増した瞬間だった。


「ああそうそう。テオ、課題延長の件は通ったぞ。何するか知らんが仲間と相談しゆっくり挑戦しろ」

 そう言葉にした後、ラスカディは解散と叫びその場を立ち去った。




「テオ。課題延長って何?」

 プランがそう尋ねると、テオは頷き答えた。

「お前の受けたあの依頼あるだろ? 俺らはそれの調べものをしてたしお前も忙しそうだったから時間が間に合うか怪しくてな。来週で依頼を終わらせる自信あるか?」

 その言葉にプランは首を横に振った。

「そう。そんなわけで間に合うか不安だったから数日ほど猶予日数を貰った。高難易度依頼だし教会直接の依頼だし色々あったからすんなり通ったみたいだな」

「ごめんね。私の事なのに色々と任せて。そしてありがとう。本当頼りになるよ」

「良いさ。向き不向きってのもあるし、お前の行動も理屈もさっぱりわからんが気持ちだけは何となくわかる。……んで、皆揃ってるからその事についてちょっと話したいんだが良いか?」

 その言葉にサリス、エージュ、ヴェインハット、ミグは頷きプランとテオの周りに集まった。


「さっそくだが、色々情報を仕入れて、期限的にそろそろ盗賊討伐の依頼に挑戦するんだが……良いニュースと悪いニュースがある。プラン。どっちから聞きたい?」

「……嫌な予感がするけど良いニュースでお願い」

「良かったな。依頼報酬が跳ね上がったぞ」

 誰一人、それが良いニュースであると思えなかった


「予想付くけど……悪いニュースは?」

「依頼難易度跳ね上がった」

 予想通り過ぎて誰も何も言えなかった。


ありがとうございました。

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