表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/334

1-18話 割と忙しい自由時間11


 その日の夜、プランは翌日に備えて荷物の確認を始めた。


 まず、今日買った武具と冒険者セットに加えて予備の着替え。

 誰でも入れるという条件から初日で使うとは思わないが……ここは国内最大の冒険者学園である。

 想定の斜め上でいきなり武具の使い方を説明し出してもおかしくはない。


 ついでに冒険者セットの中身も確認してみた。

 大きめのリュックに入っているのはぐるぐる巻きになった長いロープと火打石セット。

 松明数本と楔と楔用の木の小槌。

 水袋と予備の袋数枚に包帯とマント。

 これだけの物が入っていた。

 隙間が残っているのはこの物を多く詰め込めるリュック自体も冒険者セットの一つだからだろう。


「……無料って言っても、十分な代物よね。この学校凄いわ」

 誰でも入れる学園でこのレベルの物を配る。

 それはプランの考えている事の斜め上であった。

 一体いくらあればそんな事が出来るのか想像する事すら出来ない。

 特に、間違いなく無料である事を悪用する人種も出て来るはずなのに。

「っと。それよりも明日の準備をしないとね。初日からポカったら目も当てられない」

 プランは脇道にそれていた思考を戻し、荷物確認を再開した。


 ペンと紙に予備のインク。

 おそらくこちらの方が明日の本命だろう。

 学園というものを経験した事がないが、それでも普通に考えるなら初日は交流を中心に今後の授業の説明と、精々軽い座学程度となるだろう。

 そうプランは思っていた。


 それと忘れてはいけない入学金と引き換えに受け取った要綱。

 学園内の禁止事項からちょっとした遊び場まで記述されたこれは非常に便利で、持ち歩けと言われても納得出来るほど便利な物だった。

 場合によってはこれも授業に使われるのだろう。




「さて……こんなもんか。……さて、どうしようかな……」

 明日の準備も終わり、更に就寝前にすべき事も全て終わっており後は寝るだけなのだが……どうも眠る気にならない。

 明日という始まりに対する期待と不安。

 過去の知り合いはここに誰もおらず、唯一こちら側にいる友人のワイスは未だ眠ったまま。

 何故かわからないが、それがとても寂しい事のようにプランは感じた。


 だが今一番強い感情は寂しさではなく……これで大丈夫なのかという焦りだった。

 もう寝る以外何もする事がないからか、プランは強い焦燥感に苛まれていた。


 自分という災厄の要因が離れた以上、リフレストに起きたあの厄災が訪れるまで一年二年という事はないだろう。

 だが、それでもそう遠くない未来――少なくともプランが生きている内に、同じような事が起きる。

 この不確かで孤独であるリセットされた世界であっても、それだけは絶対の真実であった。


 力が欲しい。

 大切なもの全てを守る為に。

 戦う力も、お金も、コネも含めてありとあらゆる力が欲しい――いや、必要だった。

 それは多くの人が望み、そして決して叶わなかった贅沢でわがままな野望であり、その多くの人が諦めてきた願いである。

 だからこそ、プランは焦っていた。


「……焦ってもどうしようもないんだけどねぇ……」

 それがわかっていても、気持ちの問題はどうしようもなかった――。


 ドンドンドンドンドンドンドン。


 おーい……。


 ドン! ドンドン!


 ドンドンドンドン。


 リズミカルかつ煩く叩かれるドアの音はプランの何とも言えないあんにゅーいな気分をぽーんと軽く吹き飛ばした。

 おそらくノックのつもりであろうが、その強く乱雑な叩き方はまるで脅迫のようである。

 だが、ドアの前にいる者からはプランを害するような気配は感じず、むしろ親し気な気配すら漂っている。

 そうなると、ドアの前に誰がいるかは想像に難しくなかった。


「……くすっ」

 マナーなんて知った事かと言わんばかりの行動が彼女らしいと思い、プランは小さく微笑んだ。


「おーい! 俺だ。入れてくれー!」

「はいはい。夜だからお静かに。またエージュから山猿って言われるよ」

「へーい。それは何時もの事だしどうでもいい。そんな事よりも開けておくれー」

「はーい」

 プランが鍵を外すと、堂々とサリスが部屋に入って来た。

「おーっす。ちょいと話に来たぜ。……部屋は俺の部屋と一緒な感じだな」

「そりゃそうだよ」

「ああ。だけどそろそろ部屋移動の準備しておいた方が良いぜ。先輩から聞いた話だけど授業開始一週間くらいで複数用の部屋に移動するらしいぞ」

「ほほーう。良い事聞いた。わかったわありがと。すぐ出れるようこまめに掃除しておくよ」

「……部屋移動の準備が掃除って言うのがプランらしいわ」

 そう言いながらサリスは微笑み、プランのベッドにぽふんと座り込んだ。


「んでサリス。話って何?」

「あー。うん。そうだな……。人の気配もないし良いか」

「うん? 大切な話?」

「ああ。つーか俺じゃなくてお前のだけどな」

「へ? 私?」

「ああ。まあぶっちゃけて言えば、腹を割って話そうぜって事だ」

「えっと……あー。そういう……」

 サリスの言いたい事が何となく見えて、プランはバツの悪そうな表情を浮かべた。


「ああ。お前、何を抱えてんだ?」

「あー。うん。だよね。やっぱりパーティーメンバーがトラブル抱えたらそりゃ気にするかぁ」

 元々隠し事が苦手な上にさほど隠していないプランだが、サリスも割と鋭いところがある。

 気づくのは当然の話だった。


「いや。パーティーメンバーにトラブルがあろうとぶっちゃけどうでも良い。そうじゃなくて……ダチが困ってるから助けてやれないかなって思っただけだ」

「――え?」

「言いたくないなら言わなくても良い。それなら俺も聞かないし何も尋ねん。でもな……もし俺に助けて欲しいなら遠慮しないで言ってくれ。それがダチだろ?」

 どうやらサリスはプランが思っている以上に、鋭いらしい。

 一番欲しい時に一番欲しい言葉を投げられたプランは、少しだけ目を潤ませながらそう思った。


「……ありがとう。私も言いたいんだけど……言えないんだよねぇ」

「ふむ。言えないような事情なのか……奴隷だったけど逃げたとか、もし重犯罪者であっても、俺はお前を庇うぞ」

 どうやら言えない事情が悪い事をしたみたいに捉えているサリスにプランは困惑した表情を見せた。

「いや、そうじゃなくて物理的にね――。私もさっさと言いたいくらいなんだけど……ちょっと見ててくれる? もしかしたら外からは見えないかもしれないけど」

 そう言ってプランは自分の両腕をサリスの方に差し出した。

 サリスはそれに首を傾げながらも、プランの両手をじっと見つめた。


 そしてプランは、少しだけ(未来)を振り返った。

 大好きな人達に囲まれた、愛すべき故郷。

 沢山の仲間達と共に様々なトラブルに乗り越えてきて……そして失敗した。


 その事を言葉に発しようとした瞬間に、プランの右腕がジジッと音を立て……崩れたようになった。

 細かい正方形の粒子が飛び、本来の色である肌色が失われその部分がまるで砂であるかのように崩壊する。


 ただしそれは一瞬の事で、プランが口を閉じると腕はぷにっとしつつも健康的な腕に戻った。

「っ! ……見えた?」

 痛みから額に汗を掻き、顔をしかめながらプランはそう尋ねる。

 それに対して、サリスは信じられないものを見るような、驚愕した表情で頷いた。


「……お前、何があったんだよ……。何だよそれ……まるで……呪いじゃないか」

「はは。呪いというか……代償かな」

「……言えないのはわかった。そして、想像以上の厄介事で誰にも言わない方が良い事も何となくわかった。……んで、プランは俺にどうして欲しい? どうすれば問題解決が……いや、お前も解決の為に頑張ってるんだよな。どうすればお前の手伝いが出来る?」

 酷く真剣な瞳で、サリスはそう言葉にした。


 その瞳の真剣さと力強さ。

 それは彼女が絶対に裏切らず、最後まで自分の傍にいると信じる事が出来そうな、そんな瞳だった。



「本当恰好良いなぁ。サリスが男だったら恋に落ちてるかも」

「こんな時に冗談はよせ。俺が戦い以外で真面目な時なんて滅多にない事だぞ」

「と言っても、今のままでいてくれたら十分だよ。うん……。サリスのおかげで私は十分に……うん。十分頑張れるよ。ありがとう。私の友達になってくれて」

 プランはしっかりと頷き、サリスの手を取った。


「……そうかい。ま、何となくだが察した。お前が力を求めているって事は、力があれば何とかなるって事だ。でもそれは普通の、ただ強いだけの力では足りない。つー事はだ……めちゃくちゃすげー強くなりゃ良いって事で、それを目指してプランはここに来たと」

「……あらま。本当に変に鋭い」

「正解って事だな」

「うん。ああ、これは言えるんだ。何が言えて何が言えないかわからないってのがちょっとめんどいなぁ」

 そう言ってプランは微笑んだ。

「よし。じゃあ……一緒に超強くなろうな。何時か全ての問題が終わって、良くやったってお互い言い合えるように」

 そう言って微笑むサリスに、プランは目を丸くした。


「え?」

「え? 俺何か変な事言ったか?」

「いや……。ずっと一緒にいてくれるの?」

「いや。お前の問題が解決するまでだけど?」

「学園出ても付いてきてくれるの? 見ての通り相当面倒事だよ?」

「当然だろ。お前が迷惑になるまで付いて行くつもりだぞ? エージュは貴族様だから難しいが俺はフリーだしな」

「……いや、サリス現領主じゃん」

「良いんだよ。どうせ軽い神輿だ。……ああ。根ほり葉ほり聞いた代わりに俺の事情も話そう。大した事情じゃないんだけどな」

 そう言ってサリスはハワード家のお家事情を話し始めた。




 大本をただせば、全て元領主が馬鹿な事。

 たったそれだけ。

 たがそのそれだけがハワード伯爵領では非常に大きな問題となってしまった。


 サリスの父は素晴らしいほどの善人で、そして過去類を見ないほどに無能である

 そんな元領主が行った二つの致命的な行動。

 それがサリスが脱走する大本の原因であった。


 一つは、酒に酔ってノスガルド国現国王アルスの侮辱を行った事。

 これも実は善意からの行動なのだが、他ならぬ王都で国王批判を伯爵貴族が行うというのはもうどう庇いだて出来ないほど愚かな行為である。

 これにより、父親は領主である事を剥奪され、長女であるサリスが領主となる事となった。

 この時斬首されなかったのは運が良かったのもあるが、元領主が善良である事もまた大きな要因となっていた。


 そんな元領主が行ってきた、もう一つの致命的な行動。

 それは……生まれてからずっと、長女であるサリスとその弟を同等に扱っている事だ。


『お前は力も強いし武具の扱い上手い。将来は武官であり領主である偉大な人物だな』

 そうサリスに告げ。

『お前はこの領で誰よりも賢い。きっと立派な領主になれるだろう』

 そう弟に告げる。

 冗談やお世辞ではなく本気で思ってそう言葉にする上に、それを人前で行う。

 それがどういう意味の言葉であるか、元領主は深く考えた事すらなかった。


『一体どっちが跡継ぎなんですか?』

 と困った誰かが相談しても。

『そりゃ将来二人で相談して決めれば良い。俺はどちらでも応援する』

 なんて本気で言葉にする。


『父親が子供を褒めずして誰が褒めるんだ』

 元領主はよくそう言葉にしては、豪快に笑っていた。

 確かに、この人は非常に善良で優しくて、多くの部下がこの人の為なら命を捨てても惜しくないと思うだけのものを持っている。


 そう、絶望的に無能である事を除けば素晴らしいまでに立派な人物である。

 自分の言葉一つで領が二つに割れるなど考えた事すらないほどに、元領主は無能だった。


「そんなわけで、俺がいると弟と俺の派閥が生まれて領を割る争いになる。そうなると領民が死ぬし最悪ハワード家取り潰しだ。更にいや、俺は領主なんてやりたかない。だから逃げて来たってのが概ねの事情だな。ああ、弟とは話が付いてるからお家騒動も大丈夫だぞ」

「……大変だったんだね」

「いや別に。あれならやりかねないって感じで官僚達も変に納得してたしな。父の事知ってる奴らは苦笑いを浮かべるか笑うかだったぜ? むしろ領主資格剥奪を言いに来た役人の方が申し訳なさそうな顔してたくらいだ」

 そう言ってサリスはゲラゲラと笑った。

「ふふ。口で言う割には嫌そうじゃない感じだね」

「ま、迷惑かける糞野郎ではあるけど……芯は通ってるし嫌いではない。父親としては悪くなかったし。……俺の話はこんなもんだし、お前の話も一緒に強くなろうって感じで終わったな。他に何か話す事あるか?」

「んー。特にないかな。ぶっちゃけ話せないし。これの事は話せるのかな?」

 そう言ってプランは隠し持っていた妖精石をサリスに見せた。

「……お前妖精使いだったのかよ」

「妖精さんおねむだから魔法使えないけどね」

「へー。そんな事あるのか。って事は起きたら使えるのか」

「うん。半年から一年後くらいなら」

「ほほー。そんなに遠い話じゃないし良い事だ。その時は頼らせてもらおうかね」

「ただし、私は才能ないからほとんど魔法使えないけどね!」

 えへんと言いながらそう言葉にするプランを見て、サリスはゲラゲラ笑った。

「ああお前はその位で良い。偶にお前が完璧超人に見えるからな。ちょっとした欠点があった方が可愛げがある」

「あはは。私が完璧って……そんなわけないじゃん。これから山ほど私のへぼいとこ見れるよ」

「そうかい。そりゃ楽しみだ」

 そう言いながら、サリスはベッドから勢いを付けた立ち上がった。


「最後に……本人には絶対に言わねーけど、本気で困ったらエージュに頼れ。貴族とかノブレスなんたらとか言ってるが、ありゃ建前であいつはお前と同じくとびっきりのお人よしだからな」

「建前って……」

 そう呟きながらプランは苦笑いを浮かべた。

「ぶっちゃけ俺はわがままで適当な人種だからな。頼りにならない部分は多いぞ? だけど、俺と違ってあいつは……エージュは自分に恐ろしく厳しく他人に優しい。困ったら、きっと何とかしてくれる」

「……うん。そうだね。何かあったらサリスだけじゃなくてエージュにも頼るよ」

「そうしろ。……気持ち悪いから俺がこんな話したなんて絶対に言うなよ! 絶対だからな!?」

 サリスはバツが悪そうな顔で言った後ドアの前で「おやすみ」とだけ言って乱暴にドアを閉めた。

「おやすみー!」

 プランはドアの外に向かって、満面の笑みのままそう言葉にした。




「サリスの御蔭で良く眠れそう」

 頼れる友達の御蔭か今のプランに焦燥感はなく、明日という日を迎える事に楽しみを覚えていた。

 そんなわけでベッドに入ろうかなと思っていると……とんとんとんとんと四回丁寧で優しいノックが響いた。

 丁寧なだけでなく、回数とリズムまで正規の作法であるノック。


 サリスの時と同じように、プランはそれが誰なのかすぐに理解し微笑んだ。

「はーい。……って鍵かけ忘れていた。開いてるよー」

 そうプランがベッドに座って言葉にすると、そっとドアが開かれた。

「夜分遅くに失礼します。……きちんと鍵は掛けましょうね。学園領とは言え不用心でいて良いわけではありませんよ」

 もう一人の友人、エージュは少々きつめにそうプランに言葉を投げてくる。

 叱っているのが自分の為であるとわかる為、プランは何となく嬉しくて頬を緩ませた。


「はーい、ごめんなさい。さっきまで人が来ていたもので。ちゃんと気をつけるね」

「ええ。そうしてください。……ああ。聞きわけが良いプランさんだと楽で良いです。あの山猿に爪の垢でも煎じて飲ませたいくらいですわ」

 そう言ってエージュはにっこりと微笑んだ。


「あれはあれでサリスの良いとこだから。んでエージュ。何の御用?」

「……ええ。少し聞き辛い事ですが……貴方の事情についてを聞こうと。恐らく貴女は貴族の生まれ。にしては貴族らしからぬ部分が多い。つまり……何かやんごとなき事情があるのでしょう」

 結論は少々ズレているが、概ね正しい事を言っているエージュ。

 それに対してプランはぽかーんとした表情を浮かべた。


「ええ。わかっています。部外者に尋ねられるのはきっと不愉快な事でしょう。ですのであまり深く尋ねませんが……もし私に出来る事があればおっしゃってください。伯爵令嬢という立場の者として、この国の貴族として……そして友人として何か出来る事を――」

 そうまで言うと、プランは我慢出来ずに噴出して笑い、そしてそのまま大声で笑い出した。


 そんな突然ベッドの上でお腹を抱えて笑いだしたプランを見て、エージュはおろおろとした態度となった。

「えと、私何か大きな勘違いとか間違いしてましたか? あの……どうして笑っているのでしょうか?」

「あはははは! んーん。……ふふ。何にも間違ってはないよ。ただね、さっきサリスが来て同じ事聞いてきたばっかなのよ。二人が同じ事をしたから、何だか面白くって」

「くっ! あの山猿と……。いえ、あれはあれで友達思いですのでそういう事もあるでしょう。ですが、あの山猿に出遅れたのは少々以上に業腹ですわね」

 そう言ってエージュは悔しそうな表情を浮かべた。


「あはは……。本当、二人が私を想ってそんな事言ってくれて……ふふ。面白くて……涙が出て来るよ」

 そう言いながら下を向きぽろぽろと零れるほどの涙を落としているプランを見て、エージュは何も言わず、プランが泣き止むまでそっと抱きしめた。




「ごめんね。ちょっと感極まっちゃって。嫌な涙じゃなくて文句なし百パーセント嬉し泣きだから気にしないで」

「ふふ。そういう事なら気にしないでおきましょう。それで、事情を話していただけますか?」

「うーん。話したいけど……」


 そう言った後、プランはサリスの時と同じように実際に腕を見せ、そしてサリスの時と全く同じ話をした。


「……話せない代償……ですか。プランさん。それって誰が作った代償かわかりますか? 仮に魔法だとすれば、その代償を何とか出来るかもしれません」

「えー。言えるかなー。ごほん。おそらくこれ神様からの代償だよ。ああ、これは言えるんだ」

「――は?」

「うん。私とんでもない事やってね、その代償にしては軽すぎるくらいなんだよ。それに代償って言っても理由が――っ! これは言っちゃいけない事だったみたい。危ない危ない」

 代償にしては軽すぎるという話をしようとしたプランは腕の痛みが走り、即座に話を切り上げた。

「……思った以上に複雑な事態のようですわね。……友として、微力ではありますが出来る限り手助けはしたいと思います」

「ありがと。本当に心から頼もしいと思ってるよ」

「……ですが、私は自分の領民と領地を優先します。そこだけはご容赦を」

「うん。それは当然の話だね。自分の領を大切にしない貴族なんて害悪でしかないから」

「……やはりプランさんは……いえ。言えない事を問い詰めるのは悪趣味ですわね。ですので、私はどうしてもプランさんを選択出来ない事があると思います」

「良いよ良いよ。友達が私の事を助けたいと思ってくれてる。それだけで私は頑張れるから」

 そう言って微笑むプランを、エージュは悔しそうに見つめた。


「ですから……その時はハワードさんを頼ってください。あの人は身内を心底大切にする方ですから」

「うん。ん? ……あれ?」

 どこかで同じような話を最近聞いたプランは少し首を傾げながら、エージュの話に集中した。


「恥ずかしくて本人の前では絶対に言いませんが……あの方はとても情に厚い方です。私にとっての領地、領民がハワードさんにとっての身内となるんでしょう。そしてあの方の身内には友達も入ります。ですから……何かあればあのお方を頼ってくださいまし。あの人は、ハワードさんはプランさんを絶対に見捨てませんから。……恥ずかしいので本人の前では絶対に言いませんし、プランさんも秘密にしてくださいね?」

 そう言って赤面しつつこほんと咳払いをするエージュを見て、プランは優しく微笑んだ。


 ――同じような事を、同じ日に言うなんて本当に仲の良い二人だなぁ。全く……嫉妬しちゃいそう。

「……あの、プランさん? どうしてニヤニヤした顔で笑ってるんです?」

「んーん。ちょっとサリスともエージュとももっと仲良くなりたいなーって思っただけ」

 そう言いながらプランはエージュの頭を、緑がかった綺麗な青い髪を優しく撫でた。


ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ