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7-12話 とりあえずの危機の終わり。


 罪悪感、同情。

 疑問、憐憫。

 不満、孤独。


 久方ぶりにプラン、サリス、エージュ、テオ、ヴェインハット、ミグ、クコという二パーティー+一が揃ったのだが、その会合はまるでお通夜の様になっていた。

 日数で言えば二、三週間程度ではあるが、それでも、ぎこちなさが残るには十分な日数だった。


 プランからしてみれば、申し訳なさがとにかく先行し、皆にかけられる言葉がない。

 反対側からしてみても状況がいまいち飲み込めず、良くわからない事だらけだが大変な事があったのだろうと思い、それ故にプランに対して何と語りかけたら良いのかわからない。

 お互いに声がかけられず、皆が最初の一言を発するまで黙り込んでいた。


 と言っても……このままで良い訳がない。

 黙り込んでいる事も問題だが、それ以上に誰かが我慢出来ず言葉を発し、お互いを不用意に傷つけあう。

 そんな結果は避けたい。

 そう考えた比較的常識的な二人、エージュとテオはお互いにアイコンタクトでサインを送り合い、そしてエージュは自分が言葉を発すると決め頷いて見せた。


「……とりあえずプランさん。私達に……特にミグさんに謝罪を。どうしてかわかりますね?」

 エージュの言葉にプランは首を横に振った。

「ううん。思い当たるフシが多すぎてわかんない……」

 明らかに落ち込んだ様子のプランを責めるのはエージュとて心が苦しく眉間にしわが寄ってしまう。

 それでも、嫌な事はさっさと終わらないと元通りになれないと思い、エージュは言葉を続けた。

「私達には心配させた事を。そしてミグさんには追加で寂しがらせた事をです。……プランさんが用意したクッキー。ほとんど食べてないんですよミグさん」

 その言葉にプランは驚きミグの方を見た。

 ミグはいつも通り無表情に近い。

 だが、その目はどこかプランに対して遠慮がちな目となっていた。

 我慢しすぎて泣きそうな子供の様な……そんな目に……。

「……ごめんねミグちゃん」

「もう……終わった? 用事もうない?」

 プランがこくんと頷いたのを見ると、ミグはとてとてとゆっくり歩き、不安げにプランの袖を掴む。

 それでもプランが逃げないのを確認した後、ミグはプランを離さない様ぎゅっと抱きしめた。

「……うん。本当ごめん。ごめんなさい……」

 そう言葉にしながらプランが頭を撫でると、ミグはもっとして欲しいと言わんばかりに顔をプランにこすりつけた。


「皆もごめん。そりゃ心配するよね」

 そのプランの言葉で、少しだけいつもの空気に戻った。


「まあちょっと待て。ひと段落と落ち着く前に話さにゃならない事がある。あ、別に責めるつもりはないし詳しく尋ねるつもりもないぞ。だけど……まだ問題があるんじゃないか?」

 そうテオが言葉にするとプランは首を傾げた。

「賠償だよ。何があったかわからんしどうすりゃ良いのかわからん。だが、あの騒動に壊れた物は少なくない。違うか?」

 そう言葉にしながらテオは色鮮やかな複数枚の紙をテーブルの上に並べた。

「……それは?」

「俺とクコで探した高額な報酬の代わりに危険な依頼だ。賠償額次第でどれを幾つ受けるかわからないから金額を教えてくれ。皆で協力して何とかする」

 プランはちらっとその紙に目を向ける。

 魔物が発見された地区の探索、討伐やダンジョンのマッピング等、本来なら高位の冒険者や兵士、武官が行う様な依頼がそこに並んでいた。

 それを集める事がどれだけ大変だったかわからない。

 だが、簡単でなかった事だけはプランでも察する事が出来る。

 それ位珍しく、そして危険な依頼だった。


「……ありがとう。そしてごめん。特に賠償とかそういう話はないんだ」

 その言葉にテオは顔を顰めた。

「つまり刑罰や懲役、労働義務の話か。そうなると話が面倒だ……。だがそれも既に想定している。何とか一週間程度に――」

「ああいや待ってテオ。そうじゃないんだ」

「そうじゃない……とは?」

「えっとね……私特に何もしなくて良いんだって。無罪放免?」

「……は?」

 プランとミグ以外の全員の声がハモった瞬間だった。


 謎のゴリラ型ゴーレムを操り、幾つかのサークル建造物を破壊する。

 それで何のお咎めなしになるのは誰も予想していなかった。


「……おいプラン。お前何したんだ?」

 サリスのそんな一言にプランは慌てた様子で答えた。

「これに関しては何もしてないよ! 私もちょっとびっくりだった」

「……思い当たるフシもないか?」

 クコの言葉にプランは頷いた。

「うん。本当にないよ。ただ……あまりに申し訳がないので組織の長として引退という形でけじめは取ったよ」

 正しくは信頼出来る人に全てを押し付けてとっとと逃げて来たというのが正しいが、それは敢えて言わないでおいた。


「……訳が分からん。……繰り返すけど、本当に何もないんだな? 後で請求が来るとかじゃなくて」

 テオは念には念を入れて尋ねてみるが、プランの返事は変わらず首を縦に振るだけだった。

「うん。私も何度も尋ねたけど本当に何もないみたい。取り調べ? というよりもゴーレムについてあれこれ聞かれて、後はそれで終わり。一応組織の方は色々と細かい制約が付いたけど、学園側からの罰則という意味ではその位?」

 そう言って首を傾げるプランを見て、サリスは小さく苦笑いを浮かべた。

「……なら、後は日常に戻るだけだな。お帰り! 心配させんな馬鹿!」

 そう言葉にしてからサリスはプランにしがみ付き、頭にゲンコツをあててぐりぐりとした。

「いたたた。も少し弱く……」

「聞こえないなー!」

 そう言いながら、サリスは笑ってプランの頭をぐりぐりし続けた。


 それをきっかけに、ようやくいつもの緩く気が抜ける空気が戻って来た。




「なあ。ガチで興味本位だから答えなくても良いんだけどさ、あのゴーレム? は一体何だったんだ?」

 テオがそう尋ねると皆同じ事を思っていたのかプランの方を凝視した。

「んー。そうだねぇ。学園に対して反感を持っていたグループが学園を攻撃する為に用意した古代製法の巨大ゴーレム。私も後になって知ったけど同じ物があと十体いたんだって。ちなみに全部学園が押収しました」

「ま、そりゃそうだ。あんなもん没収するに……十体って、あれが?」

「ううん。ゴリラ型はアレだけ。残りは熊とか兎だったってさ」

「ああうん。突っ込み所が多い事だけは理解したわ」

 テオはそう言葉にし、理解するのを諦めた。


「俺からも良いか?」

 ヴェインハットがそっと手を上げるのを見てプランは頷いた。

「ん? 何か質問?」

「みたいなもんだ。そしてあまり人に聞かれたくない話でもある。……ちょいと付き合ってくれ」

 そう言葉にし、ヴェインハットはプランに一人で付いて来るよう合図を出した。

「ん。ちょっと行ってくるね。ミグちゃん。待ってて」

 少しだけ寂しそうにするミグの頭を撫でた後、プランはヴェインハットに付いて行った。


「何か……茶化す空気じゃなかったなあいつ……」

 サリスは何時もよりも数段ほど真面目なヴェインハットに気づき、ぽつりと呟く。

 それにテオは頷き同意した。




「それで、話って?」

 さっきまでいた部屋から相当離れ、通路端の奥の部屋、付近に誰もおらず誰かが来たらすぐに分かる様な部屋に連れられたプランはそう尋ねた。

 ヴェインハットは何かを示す様、人差し指を天に向けた。

「もし、とんでもない身分の、すっげー上の人から……それこそ王よりも上の人から何かを頼まれ、その上で誰にも言えない様な状況だったら俺にこっそり言え。俺にも言うなって言われたらそれとなく合図を出せ。直接言わなくとも伝わるから。何ならちらっと姿を見せて消えるでも構わん。天辺にいる奴らは人の事なんら碌にわからねーからな。あいつらの言う事を全て素直に聞く必要なんてないぞ」

 そうヴェインハットは言った。


 何を知っているのかはわからない。

 だが、ヴェインハットはプラン達が知らない何かを知っているという事を理解するには、十分だった。

 でなければ、ここまで正確にプランの言われた事を当てる事など出来るわけがないだろう。


「ヴェイン。貴方の事情を話すつもりは……」

「俺はただの女が欲しい美形冒険者だ。それで良いだろ。……だから良い子紹介してくれない?」

 ころっと態度を変えてのヴェインにプランは苦笑いを浮かべた。

 ちなみに、さっきの発言にも今の発言にも嘘はない。

 どちらも同じ位本気で言っており、そのどちらもがヴェインハットの本性である。

 そうプランは理解出来た。


「あー……うーんごめーん。私友達少ないから」

「……それが嘘で俺に紹介したくないってのだけは理解したわ」

 そうヴェインハットが返すと二人は顔を見合わせ、そしてお互いに笑いあった。

「独り言だけどね、あと一度。予定では最低あと一回特別なお方からの依頼がある予定なんだ」

 そう言葉にするとヴェインハットは頷き、拳を前に出す。

 プランもそれに合わせて拳を出すと、ヴェインハットはこん、とプランの拳に自分の拳をぶつけた。

「独り言だけどな、友人としても俺の生き様としても全力で協力するから真っ先に俺に伝えてくれ」

「ん。そん時言えなかったら石でもパンでもぶつけるよ」

「そうしろそうしろ。だが出来たら食い物で頼むわ。それならプランだってすぐわかるし痛くないから」

 そう答えると、二人はもう一度笑った。

 お互いの事情を少しだけ共有できた仲間として。


 二人が戻るとサリスを中心にした皆に、何をしていたのかイチャついていたのかとからかわれた。

 それに対して本気で否定し怒るヴェインハットを見て、プランは少しだけ理不尽に思いヴェインハットの脛を蹴っておいた。



ありがとうございました。

七話は少々以上にぐだった部分があると書きながら思いました。

読んでいてどう伝わったかはわかりませんがもしそう同じ様にぐだったなと思われたなら、申し訳ありませんでした。


言い訳ではありますが、実は七話は盛大に没りました。

七話どころかそれに続く八話事全て没り、二十万文字分位の内容が飛んで色々とあたふたしてしまいました。

ちなみに没った理由はただただ暗いだけでつまらないという理由です。


次からは元の流れに戻ると同時に、ある程度盛り上がる様な内容(になれば良いなと思ってます)となってまいりますで、どうかこれからもお付き合いいただける事を心より願います。




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