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7-3話 プランがいなくなった日1


 特に変わりはない日常であったはずだ。

 新しくマキアのところに行って武器制作の協力という名目で色々ふざけた実験をして失敗して笑って。

 そんな日が追加されただけで、後は何時もの日常だった。

 ミグと一緒の部屋で暮らして、食堂の手伝いにこまめに行って、サリスやエージュと共に冒険や依頼、授業を受ける。

 偶にクリス等先輩達と雑談をして、やる気のない担任をジト目で見て、そして笑う。

 そんないつもの日々をプランは過ごしていたと思っていた。


 何の前触れもなく……プランが姿を消すまでは。


「こうして集まるとさ……やっぱり俺ら……何かぎこちねーよな……」

 サリスは不安げにそんな言葉を呟いた。

 集まったのはいつものと言って良いメンバー。

 サリス、エージュにテオ、ヴェインハット、ミグにクコ。

 正しく何時ものなのだがどうも違和感が消えない。

 そう思っているのはサリスだけではないだろう。


「……それが普通なんだよ。どれだけ仲良かろうと固定パーティー以外の相手と交流するってのはそのぎこちなさが残る。……むしろそれを失くす奴の方が凄かった。ただそれだけだ」

 テオの言葉に一同は納得したように黙り込んだ。


「……クコ」

 サリスの呟きに対し、クコは首を横に振った。

「……悪い。何の情報も入っていない」

「……お金なら幾らでも払うよ?」

 ミグのそんな言葉にクコは首を横に振った。

「いや。もう出来る事全部やってる。それでもこの一週間情報が何も入ってこないんだ」

 プランが姿を消してから一週間、その間クコは本気で探し、そして影すら掴めていなかった。

 この中でクコ以外の全員がクコの事を一流の情報屋だと思っている。

 そのクコが見つからないという事は、探す事は不可能だと思って良いだろう。


「……本当に誘拐とかじゃないのか」

 サリスの言葉にミグが頷いた。

「ん。だって部屋片付いてたもん。それに……書置きが……」

 いなくなった日、部屋は綺麗に片され数週間分と思われるパンの袋やクッキーのビンが用意され、ミグの着替えが数日分用意され、そして書置きが残されていた。

 おそらく皆に当てた書置きであろうそこには……・


『ごめんなさい』


 ただそれだけが書かれていた。


「あいつならいつまでに帰るとか言うはずだぞ。これじゃまるで……」

 まるで帰ってこないみたいじゃないか。

 その言葉をクコは飲み込んだ。

 だが、それでも皆がその飲み込んだ先の言葉を頭に浮かべてしまっていた。


 空気が重苦しくなる。

 場の空気は今まで全部能天気な彼女に任せていたからこそ、誰もこの空気の対処の仕方がわからなくなっていた。


「……なあ。魔法で何か出来ないか? こう……占い? とかあるだろ?」

 サリスがエージュとミグの方を見ながらそう尋ねた。

 エージュの方は首を横に振った。

「すいません……。私はそういう技能は……」

 そして皆の目がミグに集中してから、ミグは首を横に振った。

「……もうやってみた。でも……プランどういう訳か占いの結果が出にくい体質みたい……」

「結果が出にくい? 何だそりゃ? そういうの良くある事なのか?」

 サリスの質問にミグは再度首を横に振った。

「私はそんな結果初めてだった……。でも私占いは専門じゃないし適当だからわからない事も多いし……」

 そう言葉にしてからしょんぼりするミグ。

 それを見て、サリスは自分の頭を乱暴に掻いた。

「あー! こういう時俺は何も出来ねえ! 誰か何か良いアイディアないか。こういう時……」

「こういう時あいつなら……まあここ以外の誰かに頼るわな」

 そうテオが言うと、サリスは頷いた。

「だな。とりあえず各自適当に仲良さげな奴に声かけてみようか。どうせ座ってても良いアイディア出ないだろ。んで明日またこの時間にここで合流。良いな?」

 サリスの言葉に全員が頷いた。

「ああ。探すなら早い方が良い。課題の頻度が減っているとは言え……出ていない訳じゃないからな」

 そうクコが呟いた。


 当然だが、課題をこなさないと強制卒業となる。

 それは退学に等しい。

 幾ら三か月経過し課題の数が減ったとは言え、なくなる訳ではない。

 そしてこのまま行方不明ならどれだけ誤魔化していてもそう遠くない内にそうなってしまうだろう。

 それは避けたかった。

 卒業するのは自分の意思で、そして巣立つ準備が出来てから三人で。

 サリスとエージュはそう決めていた。


 プランが何を考えているのかわからないが、それでも一つだけ確かな事がある。

 プランの身に何か困った事が起きているという事だ。

 それも……このメンバーに助けてと言えない様な事態が。


 それがわかっていても、自分達の助けが望まれていない可能性があるとわかっていても彼らはプランを助ける為に勝手に動いていた。

 まるで誰かさんのお節介が移ったかのように……。




 数日後、事態は唐突に動き出した。

 占星術の知識を蓄え、自分達の縁を使ってプランを探していたがそことは一切関係がなく、何の脈絡もなく唐突にプランの姿が確認された。

「おい! プランが見つかったってのは本当か!?」

 サリスの慌てた声にテオは頷いた。

「ああ。今ヴェインが張っている。ただ……いや、何と言えば良いかわからん。らしいと言えばらしいがらしくないとも言える……。とりあえず現場に行くぞ。着いてきてくれ」

 その言葉に頷き、サリスはテオの後ろにつき走った。


 そこは既に多くの野次馬が集まって人の波を作りざわついた雰囲気を生み出していた。

 その中にはエージュやミグ、ヴェインハットも混じり、良くわからない表情で他の野次馬と共にそれを見ていた。

 そしてその彼らが見ているのは看板等を持って叫ぶ謎の集団だった。


「学園に告ぐ―。食料の不正な値段調整をー止めろー」

「止めろー!」

「学園に告ぐ―。もっとー美味しいお肉を普及させろー」

「させろー」

「もっと農業にー力を―入れろー」

「入れろー」


 何とも力が抜ける主張を繰り返す謎のデモ集団。

 そしてその先頭にいるのは……拡声器らしき物で長文の主張をしているのは紛れもなくプラン本人だった。


「あの馬鹿……何やってんだよ……」

 サリスは顔に手を当て盛大に溜息を吐いた。

「……どうする?」

 笑いを堪えるのに必死なヴェインハットを見ながらサリスは少し考え、提案した。

「このまま突っ込んで殴って連れて来るってのは駄目か?」

「駄目だな。色々な意味で巻き込まれるし……あの集団プランがいなくなると暴走する気がしないか?」

 そのヴェインハットの言葉にサリスは頷いた。

「ああ……先頭にいるプランはまだ理性的に見えるが後ろの集団は何か目が血走ってるな……」

 ある意味で言えばデモらしいデモなのだが、その本題がただの食べ物の事というのがやる気にならない。


 これが食うに困るとかいう話ならともかく、食べ物の質を引き上げろというのだからやる気も削がれるというものだ。

「とは言え……面倒な事が起きている事に変わりはありません」

 エージュが二人の間に入りそう言葉にした。

「そうなのか?」

「考えてみて下さいハワードさん。あのプランさんが、ミグさんのお世話を放っておいてあんな頭の悪い事しますか?」

「……本気ならミグ連れていくわな」

「ええ。ついでに言えばハワードさんも」

「あん? どうして俺なんだ?」

「あのデモ集団? 良くわからない集団の主張を纏めてみますと『美味しい物が沢山食べたい』になります。これハワードさんにとっても理想じゃありませんか?」

 その言葉に、サリスは考え込んだ。

「……俺、あっちの集団に参加してくるわ」

「止めなさい。話がよりややこしくなりますわ」

 どう見ても本気のサリスにエージュは溜息を吐いた。


「つまり……頭の悪い主張ではありますが、あの集団は……ひっじょーに! 面倒な事になっているという事ですわ。プランさんは破天荒な部分はありますがこういう誰かに迷惑がかかる方法を取る様な人ではありませんでしたし」

「……あー。つまりどういう事だ?」

「クコさんの情報を待ちましょう。という事です」

 その言葉にその場にいた全員が頷き、野次馬を止め各自で行動を始めた。


 その全員が去っても、プランはまだ不本意そうな顔で良くわからない主張を繰り広げていた。



ありがとうございました。

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