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6-7話 依頼ではないやるべき事、やりたい事


「いやまああんたにゃ色々世話になってるから別に教える位良いけどさ……どうしてそんな事知りたがってるんだ?」

 そう現在オルシュタイン家の料理長を務めているガドガラはプランの方を見ながら困った顔で呟いた。


 現在この屋敷全ての料理を担当するガドガラだが別に料理が得意という訳でもない。

 それどころか料理の腕は五人いる専属シェフの中でぶっちぎり最下位でありそこそこ料理が得意な一般人に毛が生えた程度でしかなく、オルシュタイン家全盛期時代は野菜の皮むき等下ごしらえを行っていた。

 それでも料理長になったのは五人の中で最もオルシュタイン家に長くいる事と、性別が男でかつある程度歳が多いからなんて料理と関係ない理由である。

 これは本人が地位を求めて足掻いたというわけではなく、残りの調理師四人が全員料理長の座をガドガラに譲った……というよりも押し付けたと呼ぶ方が正しい。

 その為本人は料理長を務めている事を能力的にも譲り渡されたという意味でも納得していない。

 ただ……五人の中で人望に厚く他人の事を考える性格である事だけは確かである為本人以外の皆はこの人選に納得していた。


 だからこそ……そんなガドガラだからこそプランの提案、その四人のシェフと見習い三人の簡単な個人情報を教えてくれという言葉に少しだけ抵抗を覚えていた。

 もしかしたら何か悪い事をしていると疑われているのか、そんな疑心暗鬼にガドガラは陥っていた。


「んー。どうしてって言われてもさ……私ら怪盗を捕まえるか……無理でも盗みを阻止する依頼を受けてるじゃん?」

「ああ。そうだな。フラウ様からそう言われてるな」

「だったら誰か怪しい人がいないか調べないといけないじゃん?」

「ああ。そうだな。だから俺ら調理師の事を疑って――」

「だからこのお屋敷にいる全員の名前と顔、個人情報を覚えないといけないじゃん」

「……は?」

「それ以外の人がいたら怪しい! と思って良いんだし覚えた方が良いでしょ?」

「……まあ……一理あるけど……確かにこのお屋敷は大分人が減った。それでもメイドだけじゃ手が足りなくて俺ら料理人がいる位は人がいるぞ。大体……」

「五十三人。新人さん次第で多少の前後はあるけどその位だよこのお屋敷にいる人は」

「……そうなのか?」

「うん」

「……まあ良い。その五十三人をさ、今日明日で全員顔と名前覚えて、その上一人一人の違いまで覚えるのか? 幾らなんでも……」

「え? 顔と名前にその人の出来る事覚えるだけなら何人でも簡単じゃない? 例えばメイドさんで料理に関わる人なら料理が得意だけどあんまり好きじゃないからメイドになってるサラに食べる事が好きで賄い目当てのサフィリア。食器を磨くのが得意なダルおばさんに……」

 プランは指を折りながらつらつらとガドガラと接点の多いメイドの名前をあげつらっていく。

 それを見てガドガラは顔を顰めた。


「……お前昨日今日でどうしてそこまで覚えてんだ?」

「少なくとも地名覚えるよりは人の方が特徴多くて覚えやすいでしょ?」

 地名を覚える事や山の名前を覚える事などが苦手なプランはそう本気で言っていた。

 そしてあっさりとそんな事を言い切ったプランを見てガドガラは苦笑いを浮かべた。


「ああ……まあ……普通じゃないと思った方が良いわなお前ら」

「失礼な。私はあの三人ではまだ普通でマトモで庶民派だし」

 きりっとそう言葉にするプランを見てガドガラは大げさに驚いたフリをしてみせた。

「おお、おお。あの二人はお前さんより普通じゃないのか。そりゃ怖い」

 そう言葉にした後二人はしかめっ面で見つめ合い、そして笑い合った。


 プランはこの屋敷に、完全なまでに馴染みきっていた。


「まあ良い。そう言う事なら教える事もやぶさかじゃないな。だけどさ……一つ俺からも聞いて良いか?」

「何? 嫌いな食べ物なら何もないよ?」

「そりゃ健康で良いこった。そうじゃなくて……お前さん風の噂じゃ料理も出来るそうだな?」

「うん。それなりだけどね。パンだけならちょっとお店で出せる位の腕前あるよ」

 そう言ってプランはふんすと胸を張ってみせた。

「そうかい。そりゃ本当羨ましい話だ。という事で俺の質問なんだが……安い金で子供が喜ぶ菓子の作り方教えてくれないか? 出来たら簡単な奴で」

「別に良いけど……どうしたの? お子さんでもいるの?」

「いいや。もう四十になろうってのに悲しい事に独り身だ。だけどさ……その代わりうちには坊ちゃん達がいるだろ?」

「ああ。二人に何かって事?」

 その言葉にガドガラは頷いた。


「……これからオルシュタイン家はどんどん苦しくなる。来年にはここにいないだろうし毎日食えるかもわからん。だからこそさ……そういう時であっても二人にゃ出来るだけ良いもん食ってもらいたいんだ……」

 そう真剣な瞳で言葉にする中年男性。

 どことなく冴えない容姿で恰好も良くない。

 その上料理長なのに料理はあまり得意じゃない。

 だけど……どうしてガドガラが料理長に選ばれのかをプランはその真剣な瞳で理解した。


「……ま、私情が混じっているのは否定出来ないがね」

 そう言葉にし少し照れるガドガラを見てプランはもう一つ、ある事を理解した。

 あまりそう言う事に聡いとは言えないプランですら、そのいかにもな態度は勘づくには十分だった。

「ガドガラさんフラウさんの事が……」

「……悪いかよ?」

 そうぶっきらぼうに言うガドガラを見て、プランは我慢出来ず、くすりと笑った。

「ううん。悪くないよ。でも、子持ちなのは良いの?」

「は? 最高の美人に可愛い子供が二人も付いてくるんだ。むしろ嬉しくないか?」

「……うん。そうだね。それはとても素敵だね。本当にそう思う……」

 ――そんな未来が本当に来れば良いな。

 プランはそう思いながらガドガラに微笑を向けた。

「ま、応援してくれや。……この屋敷内だけでも倍率阿呆みたいに高いし俺にゃ無理だろうけどな」

 そう言ってガドガラは照れ隠しも兼ねた苦笑いをしてみせた。


 歳を感じさせぬ美貌を持つフラウであるが、最低最悪な家の名前とそこそこ大きくなった双子の子供という結婚には大きなハードルが残っている。

 だがそうであってもフラウと結婚したいと思う男性は……いやフラウを支え幸せになってもらいたいと思う男性はこの屋敷だけでも二桁はいる。

 むしろそこまでフラウと、子供を、オルシュタイン家を想っている人だけがこの屋敷に今残っていると言っても過言ではなかった。

 老若男女身分かかわらず、皆がこの嫌われ者となった屋敷とオルシュタイン家に残された人達を愛していた。


「うん。まあホットケーキのちょっと美味しいレシピ書いとくね。でも小麦粉買えない場合は辛いし………あ、ついでに貧乏料理のレシピもいる?」

「ほう。どんなんだ?」

「豆のスープと干し肉のスープ。あと葉物野菜の切れ端スープ」

「……どうしてスープばかりなんだ?」

「まじで材料ない貧乏な時は他に何も作れないから。サラダに出来る様な野菜なんて贅沢です。豆は日持ちするし安価だし栄養高いし飢えにくいから良いよー。ああ、あとその辺に生えてる用途のある葉っぱも書いとくね。刻むとハーブ代わりになってスープに飽きが来にくくなるんだ。お金なくなるなら必要でしょ」

 そう言って気軽ーな笑顔でレシピを書いていくプランを見て、ガドガラはいつもクラウ、ソラスの二人に向ける様な哀れみの目をプランにも向けた。

「お前さん……苦労してたんだな……」

「うん。貧乏っていうのは……辛いよね……。学園は毎日ご飯が美味しくて少し怖いです」

 そう言ってプランは嬉しさと悲しさを同時に噛みしめた様な切ない笑みを向けた。




 料理関係者の名前とちょっとした情報を聞き、ついでに出会えるだけその人達と会って顔と名前、個性を一致させたその帰り、プランは悲鳴にも近い怒声と何かを殴りつける音を耳にした。

 金切り声に近い脅す様な声。

 それは酒場や波止場で良く聞くような喧嘩腰の声だった。

「良いか! 次やったらこんなもんじゃ済まさないからな!」

 そんな大きな声が聞こえてくる方角を見て見ると、そこには二人の男性がいた。

 一人はおじさんと呼ばれる歳よりもう少し上目の中年男性でその怒声の主。

 もう一人は若い男性で地面に座り込み見上げる様にもう一人の男性を見つめている。


 その目に怯えてか中年の男性は若い男性を再度怒鳴りつけた後腕を振り上げ……舌打ちした後殴らず、その場を去っていった。

 そして若い男性は一人となった後、そっと頬を触った。

 元々その男性は肌が白いからか、殴られたと思われる頬はほんの少し赤く腫れていた。


「大丈夫?」

 プランはそっと近づき濡れたハンカチを手渡そうとする。

 だが、男性はそれを手で遮り拒否した。

「大丈夫。血も出ていないしあんまり痛くないから。それより……悪かったねこんな現場見せて」

「ううん。大丈夫。そういう世界もあるってわかってるから」

 その言葉に男性は頷いた。

「うん。僕が失敗したからだしこれは自業自得。……話が通じて助かるよ」

 男性はそう言って困った顔のまま苦笑いを浮かべた。


 プランは再度その若い男性の姿を見つめた。

 茶色い髪と黒い瞳。

 それ自体に違和感はないが全体的に見ると髪と瞳に強い違和感が残る。

 女性が羨むほどに白いその綺麗な肌にはあまり似合っていないからだ。

 またそのきめ細やかな肌にも負けない様な綺麗な顔立ちに加え、男性であるとわかるがそれでも高めの中性的な声。

 そんな風に少々以上に美形であるその彼なのだが……プランはその人物についてまだ一度も聞いた事がなかった。


 とは言え……その理由は薄らと予想が付く。

 全力でこちらに走ってきているメイド達の姿を見れば……。


「プランちゃんちょっと退いて! 大丈夫ですかノア君。酷いよね綺麗な顔をわざわざ殴るなんて」

「そうね。ほら。こっちは痛くない消毒液あるよ。こっちにしよ?」

「はい氷。食堂の方から分けて貰ってきたから冷やして。ついでにジュースも貰ってきたよ。いるかな?」

 そんな風にメイド達数人はわいやわいやとその若い男性を『ノア君』と呼び、わちゃくちゃにしていた。


 どうしてプランが『ノア君』の事を聞かされなかったか。

 その理由は単純であり……メイド達は割と本気でその『ノア君』を狙っているから年頃の近いプランに情報の流出を避けたのだろう。

 ここには確かに人情に厚い人が多く残っている。

 だが、それはそれで恋愛話となると別になる。

 メイド達は屋敷を護る従者であるが恋の事となると手段を択ばぬ狩人へと変貌していた。


「……はぁ」


 プランはもはや姿すら見えないほど女性に群がられた彼の溜息に苦笑いを浮かべ、小さく手を振ってその場を後にした。

「……ま、すっごく綺麗だったからその気持ちもわからなくもないんだけどねー」

 プランは微笑みながらそう呟き、ある用事を済ませようと考えた。


 殴られた人に関しては本人は望んでいない様だが治療班が揃っているし傷自体も大した事がない。

 それよりもう一人の男性の方がプランには心配だった。


 誰も心配してくれない、怒声を上げた人物を――。




 全盛期のオルシュタイン家と比べるとその全てが消失、劣化し現在は残りカス程度と言っても過言ではない。

 その中で現在存続しており、かつ全盛期と比べて落差が最も大きいオルシュタイン家が独自に作っていた商会である。

 理由はシンプルで、商会もまたバダフガンナ・オルシュタインと共に悪逆を尽くして来たからだ。


 だから今残っているのは末端の末端、悪さに関わる規模すらなかった小さな商店一つのみ。

 そしてその商店がそのままオルシュタイン家直属かつ唯一の商店となってしまっていた。


 その商店の人間すら上の方の人間は悪事に加担していたのかオルシュタイン家に見切りをつけて去っていった。

 残されたこのオルシュタイン商店にはノウハウもコネも流通ルートも、何もかもを奪われ独自にそれを見出す才能も能力もない者の集まりでしかなく……端的に言えば詰んでいた。


 その商店の店長を押し付けられたアリージオの部屋の前に移動し、プランはそっとノックをしてみせた。

「はい。どうぞ」

 丁寧な口調のやけに汚い声を聴き、プランはそっとその部屋の扉を開けた。

 そのプランの姿を見たアリージオはプランの顔を見て苦笑いを浮かべた。

「ああ。さっきのお客様か。すいませんね嫌な物を見せて」

 アリージオは部屋に入って来たプランを見てそう言葉にし会釈する様小さく頭を下げた。

「ううん。そう言う事も必要なのはわかってるから」

 その言葉にアリージオは驚きプランの顔を見つめた。

「おや、俺はてっきりさっきの事を抗議に来たのかと……。いつものメイドみたいに」

「……いつも殴ってるの?」

「ま、割と。物覚えは悪くないがいまいち仕事に熱が出ねぇからなあいつ」

「そんで毎日抗議に来るの。メイドさん達」

「おう。八割が殴るの止めろ顔は止めろで残りはいかに自分が素晴らしい女性かを力説していく」

「……お疲れ様」

 その言葉アリージオは肯定も否定もせず苦笑いを浮かべた。


「そんでお客様。殴った事に文句がないなら俺に何の御用で? 何か動かして欲しい物とか?」

「ん? 動かして欲しい物ってどゆこと?」

「ああ。俺らは一応オルシュタイン商店で俺も一応そこの店長ですけど全く機能してないんで仕事が全くないんですわ。だから今俺ら仕事は雑用で、特に重たい物を動かすのがお仕事ってね」

「そか。ううん。私は何か仕事を頼みに来たわけじゃないよ」

「おやそうですかい。ではどの様な御用か聞いても?」

「うん。えっと……大丈夫?」

 その言葉にアリージオは首を傾げた。

「大丈夫……とは一体? 俺ら商店はぶっちゃけ大丈夫じゃないですけど……」

「ううん。商店じゃなくて……アリージオさんが」

「俺?」

「うん。人を怒鳴るのも殴るのも……とてもしんどいよね?」

 その言葉にアリージオは鼻で笑った。

「はっ。まさかまさか。出来ない奴を躾けて殴るのなんて大した事ないですとも。ただ怒りに身を任せりゃ良いだけなんですから」

「自分の手の方を痛める様な変な殴り方して?」

 その言葉にアリージオは声を詰まらせた。


「喉、痛いよね。ずっとガラガラ声だもん。毎日叫び続けてるんでしょ?」

 その言葉にアリージオは反論しようとした。

 だけど何も言えなかった。

 どれだけ言葉を並べた所で、今の自分の声が、この酷い濁声が答えを物語ってしまうからだ。


「うん。そういうのが必要な場所がある事もわかってる。叱る事の大切さもあると思う。これでも酒場とかでお仕事した事あるし。でもさ……それじゃ……」

「殴られずに一人前になる奴がいるかよ」

 アリージオはそう言葉にした。

「アリージオさんはそうやって大人になったんだね」

「……ああ。殴られて、殴られて、そんでようやく俺みたいな腐った性根でも叩き直された。だからこそ……俺はそうしないといけないんだよ……。それ以外で大人になるやり方なんで俺にゃ……」

 そう言葉にするアリージオには誰かを殴る尊大な男の姿はなく、怯え追い詰められ震える子供の様な顔をしていた。


「うん。その事を私は否定しないしとてもじゃないけど出来ない。私はまだ子供だし。それにそれがアリージオさんの感じた事なら間違いなく正解だもん。でもさ、アリージオさんはそれをやり切れる? 殴るのにも、怒鳴るのも慣れている様子ないけど……」

「……俺はまだ未熟者だ。店長なんて任される器でもねえ。だけど……それでも任されたんだ。だったら俺がしないと……」

「……んで保つの? そんな苦しくて嫌な思いをし続けて……壊れずに」

「保たせるんだよ! 俺しかいねぇんだから俺がするしかないだろうが!」

 そう言って喉を張り上げるとアリージオは盛大に強く咳込む。

 その口からは零れる唾はほんの僅かだが朱が混じっていた。


 プランは何も言わず、アリージオをじっと見つめた。

 心配そうな顔で、水を飲み干すアリージオを。

 そして飲み干した後も、プランは何も言わずただじっと見つめた。

 もう限界であるとアリージオ本人がわかっている事をプランは気づいていた。


「俺には他の方法はわからん」

「うん」

「俺はこうやって一人前になったし、それを間違いとも思えない」

「うん」

「でも……あんたの言う通り……俺にはうまく出来ない。殴るタイミングも、力も、わからん。殴った後恨まれてないかいつも怯えてる。もう……どうしたら良いか俺には……」

「うん。だから、相談しよ?」

「……誰にだよ」

「誰にでも。私にでも……と言ってもアドバイスすら出来ないと思うけど。他にもフラウさんとか部下の人達とか。何ならさっきの『ノア君』でも。あ、ところで彼って『ノア君』で名前合ってる?」

「……合ってるぞ。ノアレだからノアだ。だけど……俺は怨まれてるから何も……」

「ううん。見る限りアリージオさんを恨んでる様子はなかったよ。感謝してる様子もなかったけど……。むしろ彼にとってはメイド達の方が……」

「え? あれだけ女にちやほやされたら嬉しくないか?」

「全員肉食獣が草食獣を前にした様な目してましたよ?」

「……そりゃそうか。うん。嬉しいわけないわな……。だけどそれでもやっぱり俺の事を……」

 そう言葉にしながらうじうじするアリージオを見てプランは苦笑いを浮かべた。

 このうじうじして自信がなくて、決断出来ない臆病で優しい人。

 人を殴る事も怒鳴る事も怯え勇気をもって悩み続けて来た人。

 おそらくだが、こっちが本当のアリージオなのだろう。


「……うん。でもさ、無理したって良い事ないよ? そもそも一人で出来ない事は皆で考えないと。ね? きっと皆助けてくれる。だってアリージオさんが頑張ってるって外部の私でもすぐわかったもん」

 そう言って微笑むプランを見て、アリージオは何も言わずそっぽを向き……そしてそのままぷるぷると震えだした。


 どれだけ我慢していたのかわからないし辛かったのかわからない。

 だけど一つだけプランでも分かる事があった。

 大人は人前で素直に泣く事が出来ないという事である。

 皆言っていたからそういうものなのだろう。


「……私はまだ当分大人になれそうにないなぁ」

 辛くても誰にも頼れず、泣く事すら許されなかったアリージオを見てプランはそう呟き、そっとその小さくなった背を優しく叩いた。


ありがとうございました。

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