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6-4話 気になる事の多い依頼人


 プラン、サリス、エージュの三人は学園の方ではなく学園外の依頼受付所を目指してゆっくり歩いていた。

 その足取りが重いのは緊張……というわけでもなく……それは……。

「これぜっっっっったい厄介事だよな」

 そう力を込めて言い放つサリス。

 それはもうそうである事がサリスの中で予定調和を通り越し必然ですらあり、何かが起きる事をサリスは確信しきっていた。

「ま、まだそうと決まったわけじゃないよ! もしかしたら偶然私達の活躍が目に留まって……」

 そうプランは言うが、正直自分でもその言葉は相当苦しいと思っている。

「ほう。そうかそうか。じゃあプラン。俺の目を見て、もう一度同じ事を言ってみろ」

 そう言われ、プランはサリスの目を見つめる。

 見つめた上で――。


「ごめん。たぶん厄介事だし私名義だから私の事だ。巻き込みたくないし今なら二人は止めても――」

「どあほ」

 そう言葉にし、サリスはプランの頭を小突いた。

「あいたっ」

「今更何だよ。むしろ厄介事ならもっと頼れ。そんなに俺が薄情な奴に見えるのか?」

「ううん。サリスも、もちろんエージュもこんな私にずっと付いてきてくれてる。いつも嬉しいと思ってるし本当に助かってる。でも……こう罪悪感が……」

「良いんだよ。代わりに俺らが困った時はプランにも助けて貰うから。なあエージュ」

 サリスの言葉にエージュは微笑み頷いた。


「……二人共ありがと。うん。二人が困ってる時は全力で助けるね!」

 プランはぐっと握りこぶしを両手で作り力を籠めそう言葉にした。

「……私の時は六割位でお願いします。プランさんの全力は本当何が起きるのかわからないので……」

 エージュは苦笑いを浮かべ申し訳なさそうにそう言葉にした。

「俺んときは全力で頼むぜ。その方が面白そうだ」

 そう言ってゲラゲラと品なく笑うサリスにエージュは渋い顔をして見せた。


 何が起きたのかと言えばそれ自体はそう大した事ではない。

 むしろめでたい事と言っても良い。


 冒険者組合からプランを指名した依頼が届けられたという連絡が学園に届けられた。


 名指しの依頼、それは冒険者としては考えるならば間違いなく名誉な事である。

 普通の冒険者であるならば……。


 まず、プランは学園生活の鬼門である三か月を乗り切ったとは言え、冒険者としては間違いなく無名の新人であり、新人に名指しでの依頼が来る事など普通ありえない。

 一部の例外としてクリア教の枢機卿や王妃など凄い知り合いこそいるが……逆にそういった人達がかかわる話なら組合など経由せずプランに直接話が届けられる。


 そうなるとその依頼人は何を思ってプランに依頼を持って来たのかという話となってくる。

 そしてそう考えると……どう考えても厄介事の香りしかしてこず三人の組合を目指す足取りは微妙に重たかった。




 受付に向かい、依頼人と直接会える算段が付き、用心の為個室を借りて三人は依頼人を待った。

 そして依頼人が姿を見せた時、三人は目を丸くさせて驚いた。


 その依頼人が自分達よりも年下の女性であり、可愛らしいメイド服を着ている。

 だが、そんなありきたりな事なんか頭に入らないほど、とある事実が三人を驚愕させていた。

 それは……。


「おいプラン。お前妹居たのか」

 そうサリスは呟いた。

「……ううん。隠し子作る様な甲斐性父にはなかったし母は私が物心ついた時には……」

 そう言葉にして、プランは再度その依頼人の少女の全身を見つめる。

 そして、再度同じ事を思った。

 その少女は自分に良く似ていた。


 ショートカットでちょっとくるっとした栗色の毛に同じような色合いの瞳。

 ちんちくりんと呼ばれてしまう悲しいほどに幼い顔立ちと穏やかな目元にそれを引き立てるほど良い低身長。

 それは似ているという言葉を通り過ぎ、並ぶとまるで姉妹の様に感じるほどだった。


「……えっと……その……もしかして生き別れの妹だったりする?」

 そんなはずないと知っているプランでさえそう思ってしまうほど良く似ており、プランはそう尋ねてみた。

 依頼人は困った顔を浮かべ首を横に振った。

「いえ。私の家族に姉妹がいたという事は聞いた事がございませんし貴女の様な姉もいませんのでご安心を」

「そっか。うん。良く見たら君の髪も目もクリーム色で私より少し明るいね。うん。綺麗な色」

 その言葉に依頼人は目を丸くし、恥ずかしそうに目を逸らした。

「あ、ありがとうございます……」

 その声は蚊の鳴く様な声だった。




「とりあえず。自己紹介をしますね。私の名前はトレス。見習いメイドをさせていただいています」

 そう言葉にし、依頼人のトレスはぺこりと頭を下げた。

「おう。よろしく。その前に依頼とは関係ないんだが……歳聞いても良いか?」

「え、あ、はい。今年で十二です」

「なるほど……」

 そう呟き、サリスはプランの方をちらっと見た。

 その瞳の意味は良くわかる。

『三才差がある様には見えねえなぁ』

 そうサリスの瞳は口以上に強く物語っていた。


「わーってるわいそんな事」

 プランはぷくーと膨れそう呟く。

 それを見てサリスはにししと笑って見せた。


「えっと……その……」

「……すいませんトレスさん。気にせず話を進めて下さい」

 エージュは心から申し訳なさそうにそう言葉にした。


「えっと。依頼内容は……その……」

「ちょっと待って。依頼内容の前にどうして私を名指ししたのか教えてもらって良い?」

 プランはその事実を思い出し、言いにくそうなトレスの言葉に割り込みそう言葉にした。

 ただ、その言葉にトレスは更に言い辛そうにしだした。


「えっと……あの……その……」

 露骨なまでにオロオロとするトレスにサリスとエージュは顔を合わせ困った表情を浮かべた。

 厄介事と思ってもう間違いないだろう。


「うん。怒らないから教えてくれない? どうして私みたいな新人無名の冒険者をわざわざ名指ししたのか」

 そうプランが言うと、トレスはぽつりと呟いた。

「その……きっとこの人なら断らないと……。私のお給金からですので報酬も安く、その上諸事情で誰も受けたがらない依頼でも受けてくれるかもと……思いました」

 そう言葉にした後、トレスは事情を簡単に話し出した。


 トレスがプランに依頼を持ちかけた理由は単純であり、プランの背景に関係があるわけではない。

 単純に、噂話で困った人を助けてくれると聞いたからである。


 トレスは教会に通うのが趣味であり、その時ちょっとしたご縁で位の高そうな人と話をする機会に恵まれた。

 そしてちょうどプランが教会からの依頼で清掃を行っており偶然顔を見かけた。

 その時、その位の高そうな人からプランの話をトレスは聞いた。

 若いのに熱心に、こまめに教会からの依頼を受けてくれる。

 それも清掃なんていう地味で報酬も安い金額の依頼を。

 それを中心にその人はとにかくプランをベタ褒めし、困ったら頼れば良いとまで言っていた。


 だからこそ、トレスはプランに依頼を持って来たのだと説明した。

 皆が断りそうな厄介な依頼であると伝えながら……。


「……ちょっと待ってね」

 プランはトレスにそう伝え、三人で集まりひそひそ話を始めた。

「というわけで私絡みの厄介事じゃなさそうだよ」

 そうプランが言うと二人は頷いてみせた。

「だな。だけど厄介事っぽいぞ。皆が断りそうなんて前置き付けやがった」

 渋い顔のサリスにエージュとプランは困った顔を浮かべた。

「でも……あの子困ってるんだよ? 十二歳なんだよ?」

「歳なんて関係あるかよ。俺らだって三つ四つ程度しか違わないだろうが」

「ですが……困った人を助けるというのも冒険者の……」

 そんなエージュの言葉にプランは何度も頷いた。

「……ま、そうなるとは思った。だけど俺はお前らみたいに博愛主義者じゃない。話を聞いてマジでやばいと思ったら絶対依頼受けさせないからな」

 その言葉にプランとエージュは頷き、三人は元の席に戻った。


「はい良いわよ。依頼内容について教えてくれる?」

 プランの言葉にトレスは頷いた。

「はい。まず……私の勤めているお家はオルシュタイン家と言うのですが……」

 その言葉が出て来た瞬間、エージュは顔を顰めた。

「……プランさん。断りましょう」

 さっきまでの態度とは真逆となり、嫌悪感を見せながらエージュはそう言葉を吐き捨てた。

「ちょ。待ってよエージュ。どうし――」

「――。いえ。知っている方ですとそうなるのは当然ですから」

 そう言ってトレスは寂しそうに微笑んだ。


「……話を聞いてからだ。トレス。オルシュタイン家とは一体どんな家何だ?」

 サリスがそう尋ねるとトレスは困った顔をしだした。

「すいません。私あいにく学がございませんで……。いまいち良くわからないのです。ただ……悪徳貴族と称されもうすぐ貴族でなくなるという事しか……」

 そう言葉にし、トレスは詳しい説明を求める様エージュの方を見つめ、プラン、サリスも動揺エージュに目を向けた。


「……オルシュタイン家は貴族ではなく、名誉貴族ですわ。このノスガルド王国の王都内に代々住んできて王を助け、それこそ本物の貴族と比べても遜色ないほど素晴らしい貢献と功績を見せて来た偉大なる一族……でしたわ」

 エージュが過去形で締めくくったのを見て、何となくだがプランは事情を察した。


「私も奥様も詳しい事はわかりません。ただ……国家に対して反逆を行った罪、だそうです」

 トレスはそうぽつりと呟いた。

「……もしかして、依頼ってその人は冤罪だから助けてくれとかそういう類?」

 プランがそう言うとトレスはそんな事考えた事もなかったというような顔で目を丸くし、首を横に振った。

「いえ。主様……元主様の罪状は冤罪ではなく、間違いなく事実です。そう証拠を幾つも見させられたと奥様がおっしゃっておられました」

 そうトレスが言葉にしたのを聞いた後、プランはエージュの方を見つめた。

「国家反逆というよりは、私利私欲の為に暴力を用いて王都の民から金品を奪い取っていた、が正確ですわ」

 どうやらそれ自体には間違いはないらしい。


「じゃあ依頼って何を頼むつもりだったの?」

「……問題となるのは、その……元主様の悪行が露見したきっかけなのです」

「ふむふむ。それはどうして?」

「どうやら今世間を賑わしている怪盗から予告状が届いたらしくそれがきっかけで……」

 話が予想の遥か斜め上に向かい思った以上の面倒事の予感がして三人は顔を見合わせ眉を顰めた。



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