赤
その女性を一言で表すならば赤というのが正しいだろう。
全身は真っ赤なワンピースに覆われており、真っ白の足と手が際立って見える。とても森の中で行動できるような服装ではない。血赤色の眼球は煌々と光り輝き見るものを魅了する。
「大丈夫ですかぁ?」
「え、ぁはい。あのえっとあなたは?」
「まぁとりあえず着いてきてください。私の家が近くにあります。そこでいろいろ話しましょう。お腹も空いてるでしょ?」
その女性は俺が話しやすいようにわざわざ屈んで目線を合わせてそう言った。その言葉は今の自分にとって喉から手が出るほど美味しいものであり俺には断るなんて選択肢はない。
そこで俺はエリーの頭を優しく撫でながらゆすり起こしながら呟いた。
「エリー…助かったぞ。もう心配ない。あぁ」
視界は徐々にぼやけて頬を暖かい水滴が流れた。死を覚悟していたのにそこに救い糸が垂れて来たのだ。そんな時に泣かない子供はいない。そう考えた瞬間決壊が壊れ涙がとめどなく流れ出した。
そんな俺を彼女は聖母のような慈愛に満ちた表情で眺めていた。
「あれ、どうなったの。私生きてる…?」
スズは死を覚悟していたのか自分が生きているのが信じられないように、そうこぼした。
「おはようございます。お嬢さん。もう大丈夫ですよぉ」
「このお方が助けてくれたんだ。ご飯も貰えるらしいからついて行こうぜ!」
その言葉を聞いてやっと安心したのだろうか。張り詰めていた緊張感が緩和され、空気が落ち着きを取り戻した。
「でもカイルはどうなるの。私このままでカイルを置いていけない。」
「カイルって言うのはその死体のこと?あんしんしてもちろん離れ離れにはさせないから。」
そういうとその真っ赤な女性はカイルをお姫様抱っこして持ち上げた。
「ついてきて」
俺たちはその言葉に従ってその山のように大きく見える背中を追った。その足元には返り血なのかカイルの血なのかは分からないが血が飛び散っていて、血溜まりができていた。