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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

花が咲いたよ

作者: 水野忍

クラス毎異世界に呼び出されて最初は浮かれていたのだが自分が手に入れたスキルを知ってからは明るい気持ちはどこかへ行ってしまった。


俺が持っていたのは【現代アート】というスキルだった。美術部でもないのに何故アートなのかわからなかった。


初めて聞くスキルに異世界の人たちは最初興奮していたのだが、クラスメイトが絵を描く美術系スキルじゃないかと言ったらとんだハズレスキルだと笑われた。

悔しかった。悲しかった。

自分の意思とは関係なく異世界へ呼び出され、自分の意思とは関係なく付けられたスキルが原因で惨めな気分になり他人に笑われる。

こんな世界になんて居たくないと心底思った。


時間が経つと悲しい気持ちが無くなり馬鹿にされたことに対する怒りだけが残った。

腹いせにスキルで顔に絵とか描けないかと思い、とんだ外れスキルだと言った奴を見てスキルを発動したら【花】という項目が左目に出た。


花? 花の絵を描くスキル?

ハズレスキルって評価は正しい気がした…。


【花の種類】を選ぶ。

【対象者】を選ぶ。

【部位】を選ぶ。


ファンシーな姿になってお前も笑われてしまえば良いと思ってスキルを実行した。

これが原因で殺されてしまうかも知れないが、それでも良いと思った。


頬とかに花の絵が描かれた間抜け面を見るつもりだったが、実際は頭頂部から芽が出て薔薇の花が大輪を咲かせた。

俺を笑った男だった物は咲かせる為の水分や養分を吸われて干からび、その場に倒れ床に中身を散らばらせた。


俺は吐いた。

クラスメイトも吐いた。

人が死ぬのを見るなんて初めてだし、こんなグロい死に方なんて吐くに決まってる。

人の脳みそや臓器なんて見たいわけがない。


気持ち悪くて倒れていた間に、男をやった犯人は植物系のスキルを持った佐田と言うことになっていた。

植物系のスキルでも戦えるのですな〜と褒められて満更でもなさそうな表情に、なんとも言えない気持ちになる。

俺が殺しましたとは何故か言い出せなかった。


彼らの求める戦う為の攻撃スキルを持って居ないと思われている俺は1人部屋から連れ出され、地下まで連れて行かれた。

そこには深い穴が有った。

儀式の間から直通なあたり、召喚者を処分し慣れているのだろうなコイツら。


後ろから剣を突きつけられ、刺されるか飛び込むか選べと言われる。

死にたくないので現代アートスキルを使う。

兵士が花を咲かせて倒れた、そして俺も気持ち悪くて倒れた。


「どうした?」


扉の前で待っていた兵士の事を忘れていた。


「な! お前が、殺したのか!」

「その質問に意味はあるのか?」


花たちを穴に棄てた後、その穴に向かって吐いた。

グロいものを見たからか人を殺してしまったという罪悪感からかわからないが、このスキルを使って生きて行くなら慣れるしかない。


今回は相手が油断してたから良いが、本気で掛かってきたら鍛えていない俺は殺されるの確実だろう。

どうすれば良いんだろうな、これから。

連中に従う気になれないクラスメイトと一緒にここを出られるのが1番良いんだが、俺が連れ出される時に戦う力があって良かったと安堵してたのが多かったから期待は出来ないか。


この国を混乱させたら俺の追っ手に人手を出す余裕が無くなるのではないか?

王と王子が居なくなったら跡目争いで混乱するかな?


最初は知らずに殺してしまった、次は身を守る為の手段のしてスキルを使った。王と王子を殺すなら、殺すつもりでスキルを発動させることになる。心情的には初めての殺人、殺す前から不快感が込み上げくる。

だが、冒険者などをして稼ぐなら生き物を殺すことが当たり前になる。盗賊を殺すこともあるだろう。なら、ここで乗り越えておいたほうが良いはずだ。


この先のことを考えてる自分にふと気がつき思わず笑ってしまった。

「殺せるスキルを持っていると知ったら死ぬ気がなくなるなんて、結構病んでるんじゃないかな俺」

声が狭い階段で響く。


降りてきた階段を上がり、召喚された部屋へ行く。

部屋と階段の間にはドアがなく、上がり切ると隠れる場所が無いので頭だけ出してスキルを使うことにする。

まずは王に対してスキルを発動させ花を咲かせる。

次に王子をと思ったがスキルが浮かんでこなかった。回数制限? 魔力切れ? なんで使えないと悩んでいたら見つかってしまったのでハッタリかまして誤魔化す。


「あいつは俺を処分しろと言った。だから殺してやった。目には目を歯には歯を、そして命には命を!」

「お、お前の命と父上の命が等価値な訳がないだろう!」

「そうだな、俺の命は王1人じゃ足りないな」

「貴様!」

「あんたも花を咲かせてやろうか?」

「クソが!」


この場から逃げるなら交渉役の王子を残ったのは逆に良かったかもな。両方殺してたら残った連中が敵討ちだとかかってきたかも知れないし。

こう言うのを怪我の功名と呼ぶのか? 違うか。


それにしてもなんでこんなことになってしまったのかなぁ。

間違った説明をしたクラスメイトが悪いのか、それを聞いてスキル内容を調べようとしなかったこの世界の奴らが悪いのか、あるいは佐田が間違われた時に名乗り出なかったの俺が悪かったのか。


そもそも【現代アート】が攻撃スキルだなんて普通の人はわからないと思うぞ。

ネーミングセンス無さすぎだよ、神様。

もっとわかりやすいスキル名にして欲しかった【人体園芸(ヒューマンガーデン)】とか、…あ、やっぱ無しで。

【花】花を咲かせる

危険な部位を選ばなければ死ぬことはない。

最大有効半径は200メートル、居るのを確認した後なら視界に映らなくても苗床にすることは可能。

咲かせる花の種類によっては麻痺や催眠状態にすることもできる。

身体から咲いた花には特殊な効果を持つものが有り、魔女や錬金術師を喜ばせるかもしれない。

種は魔力で作られる。


実は土にも植えられ、進化すると花以外の植物も植えることが可能になる。

召喚のされ方が違えばスローライフもあり得たのではないかと思われる。



佐田のその後。

主人公が連れて行かれるのを見て助かったと安堵するが、佐田が殺したことになっている男の妻と子供に刺されて死ぬ。

この国には仇討ち制度があるらしい。

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