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恋の音の違い

作者: るりはる
掲載日:2018/03/26

 中学三年生の夏休み。

 吹奏楽部の練習も終わり、家でのんびりとしていたある日のことだった。

 窓の外から大きな笑い声が聞こえてくる。

 カーテンを開け、外を見たらそこには私のよく知る野球青年二人がいた。

 キャプテンの(まなぶ)とエースの響輝(ひびき)

 学は少し変わっていて、それでいてすごく優しい。

 響輝は頭がよく、イケメンの完璧人間。

 なのに彼女がいるという噂がない不思議な奴で、ご近所さんだ。

「二人で何してんの?」

 体が勝手に家を出ていた。

 アパートの階段を急いで降りながら言った。

「あれ?花じゃん、どうしたの?」

「どうしたのって、家の近くで大きな声で笑ってたら気になるよ」

「でも来ることないじゃんか」

「別にいいでしょ」

 響輝は不機嫌だったが、学はなんやかんや歓迎してくれているようだった。

「それで何してたの?」

「野球の練習。もういいだろ、帰れよ。」

「いいじゃんか響輝。なんなら一緒にやるか?」

 笑いながら優しくしてくれた。

「いいよそこまでは。見ているだけでいいから」

「はぁ~、ほんとなんで来るかな」

 グダグダしながらキャッチボールを始めた。

「ところで学さー、携帯って持ってるの?」

「あるけど、それがどうしたの?」

「ちょっと貸してよ」

「いいよ。そこのカバンの中だよ。」

 そこにあったのは青色のカバンと黒のカバンだった。

 黒のカバンを手に取ったとき、

「それは俺のだ。」

 響輝が若干怒りながら言った。

「ごめんごめん」

 青のカバンを開けてスマホを取り出した。

「私の連絡先追加したからね」

「何勝手にやってんのさ」

 キャッチボールをやめ、携帯を奪った。

 そこに響輝がのぞき見してきた。

「あーあ」

「ちょっと!」

 学が追いかけてくるが駆け足程度だった。。

「あきらめろ」

 響輝が「はっはっは」と言わんばかりの笑い方をした。

「ま、俺は別にいいんだけどな。さ、続きやるぞ」

 やっぱりフォローをしてくれた。

 しばらくキャッチボールをしながら部活の話をしていた。

 それを私はじーっと見ていた。

 そしてキャッチボールもやめ、雑談を始めた。 

「花って好きなやつとかいないわけ?」

「いないよ別に。響輝こそどうなのよ?」

「同じ学校の女子とは付き合わないって決めてるから」

「じゃあほかの学校の人かいないの?つまんないなー」

「うるさい。そういうお前はどうなのよ」

「俺が作っても意味ないから」

 そっか、いないのか

 そう安心している私がいた。

「もう暗くなってきたから俺帰るわ。また明日な響輝。」

「おう、明日」

「花も、じゃあな」 

「え?う、うん!またね」

 学は自転車でさっそうと帰ってしまった。

「俺も帰るから」

「ちょっと待って、もうちょっと話さない?」

 わかりやすく嫌な顔をされた。

「は?なんで?」と言われたが受けてくれた。

「本当に好きな人とかいないわけ?」

「そう言ったろ」

「ならいいけど」

「?どうしたのさ」

「いや、もう中学生だからさ、彼氏彼女の関係があってもいいからさ。あと響輝モテてるからさ。」

「何言ってんの?モテないよ俺は。」

「今すぐにでもモテない男子たちに謝ってきた方がいいんじゃない?」

「なんで俺が謝らんといかないのさ?」

「そんな反応ばっかりしているから彼女出来ないんじゃないの?」

 いま、私の心は不思議と華やかな気分になっていた。

「俺ももう帰るぞ。じゃあな。」

「うん!またね」

 その日から学は毎日響輝と遊んでいて、私もほぼ毎日一緒に遊んだ。

 そのたび響輝に嫌な顔をされたけれど

 友達の安菜(あんな)を誘って四人で映画を見たり、ショッピングに行ったりした。

 映画も見に行ったがホラー物で思わず響輝に抱きついてしまった。

 それを横目で学がニヤニヤしながら見ていた。

 きっと赤面にでもなっていたのだろう。

 それとも両腕に女子が抱きついている響輝を笑っているのかどっちかわからなかった。

 そして夏休みも終わりに差し掛かっていた。

 今日もいつものように昼から響輝と学がいた。

 たまたま安菜と遊んでいたからもう一人、近所の鈴音(すずね)を誘って三人で行った。

 響輝はいつもの嫌な顔だった。

 いつもと違ったのは学の反応だった。

 私以外の女子を見た途端、顔がこわばって響輝の後ろに逃げていった。

「学、どうしたんだ?」

「俺、あの二人は超絶苦手なんだ。」

 それを聞いた杏奈が、

「久々だね職人(・・)

 それを聞いた学は震えながら「言わないでください」を連呼していた。

「なんなの職人って?」

「花、それはね」

「お願いだから金輪際その名前を言わないでください。」

「しょうがないな」

 ニヤニヤして安菜が言った。

「なんでここに鈴音がいるわけ?」

 響輝が脅しをかけるように聞いてきた。

「う~ん、家が近いから?」

「そんな理由で私呼ばれたの!?」

「暇だったからいいでしょ?」

「部活後だったから暇だけど」

「あのな、俺らの練習は見せ物じゃないんだぞ?」

「じゃあここでやらないでよ」

「ここしかないんだからしょうがないだろ。まあいいや。学、さっさとやろうぜ」

 響輝が振り向いたら悶絶している学がいた。

「・・・どうしたんだ?学」

「安菜と話してたらこうなった」

「どんな秘密握られているのさ」

「それ以上聞かないでくれ。頼む」

「それ、余計に気になっちゃうよ。あとで教えてね、安菜」

 その日の野球練習の学は元気が全くないようだった。

 そして夏休みが終わってしまった。

 待っていたのは全生徒が嫌いであろう後期中間テストだった。

 私の成績は中の下くらい。

 響輝は上の下くらいで学は中の中。

「響輝、勉強会しようよ」

「は?やだ」

「なんでよ!」

「バカとはやっても意味ないから」

「じゃあ学でいいよ、教えて」

「俺はあんまり勉強したくない方だから無理。そうだ響輝、今日も練習しようぜ!部活もないわけだし。」

「もぉー!みんなでやるよ!安菜も誘って学の家で」

「うちは無理、部屋の片づけ終わってないから」

「なら今日中に終わらせて、明日決行ね」

「なんで決定してるのさ」

「勉強したくないのに」

 色々あったが無事、勉強会が始まったが・・・

「もうやめよーぜ」

「学、飽きるの早すぎ!」

「勉強したくないって言ったしょ」

「俺も同意見。なんかマンガ貸して」

「そこの棚の好きなやつ読んでいいよ」

「じゃあ安菜も」

「みんなちゃんとやろうよ!」

「そういう花が一番最初に飽きてたろ、なぁ響輝」

「そうだな」

 手元にはいつのまにか学のマンガがあった。

「ほんとだ」

「だから言ったろ」

「じゃあいいや」

 私は椅子からベットに変えた。

 それに続いて響輝と杏奈も座った。

「この心理テストやろ!最初は響輝ね」

「なんで俺?」

 適当に開いたページから出した。

「あなたの前には赤と青の扉があります。その扉を開けたらある異性がいます。それは誰?赤と青両方教えてください。」

 二、三分考えて、

「赤には鈴音で、青には妹かな?」

「結果はどうなの?」

「なんでお前が気になってんのさ」

「えーっと、赤の人物はいなければならない人で、青の人物はいつも頭の片隅にいる人だって」

「おぉ~鈴音なんだ」

「一発ぶん殴るぞ?」

 学は笑いながら謝った。

 時計を見た安菜が立ち上がって、

「ごめん、私これから塾だからもう行くね。」

 すぐに身支度をして帰っていった。

「俺もこれからスポーツショップに行かなきゃならないから帰るわ」

 二人ともさっそうと帰っていった。

「花はいいの?」

「うん、今日はずっと暇だから」

 それから十分くらい沈黙が続いた。

「俺にもなんか出してくれよ」

「え?わかった」

 すぐに隣のページの問題を出した。

「赤、青、黄色、緑、黒のイメージの人物を想像してください」

「紙かなんかに書く?」

「面白そうだからそうしよう」

 すぐに紙とペンを用意してすらすらと書き上げた。

「早いね」

「大体問題は予想していたから」

「じゃあ回答ね。赤は好きな人、青は憧れの人、黄色は自分と正反対と思っている性格の人、緑は優しくしてほしい人、黒は苦手な人だってどうだった?」

 紙をのぞいたら赤には私の名前があった。

「やっぱり当たんないんだね。」

「意外とあってるぞ?」

「ほんと!?何色が?」

「緑と・・・・赤」

「ほんとに!?誰が書いてるの?」

 学から紙を奪って見てみたらそこには緑に学と同じクラスの女子の名前があり、赤には私の名前があった。

「当たってないじゃん!嘘はやめてよ」

 学は黙って顔を赤くしていた。

 この沈黙が意味することは私にも理解ができた。

「え?ほんとに?」

「・・・・うん」

 私まで顔が赤くなってしまった。

 反応に困っていた。

「じ、じゃあ次行こうか」

 切り替えようとしたが、

「待って」

 静かに学が言った。

「もう後戻りはできないから言わせてもらうよ。」

 目が真剣になるのが分かった。

「俺と付き合ってくれ」

 また沈黙が出来てしまった。

 返答よりもびっくりしてしまって声が出せなかった。

「え、え~っと」

「って、ごめん。困らせたね答えはわかってるから大丈夫」

「でも、」

「ほんとにいいんだ」

 少し涙目になっていた。

「うん、ごめんね」

 そう言い残して帰ってしまった。

 それからすれ違うことはあったけど、話すことは一切なかった。

 メールは返してくれるけど2、3回のやり取りですぐに終わってしまう。

 このことを響輝に相談しようとも考えたけど、「なんで俺に相談すんのさ、そんな話付き合いたくないんだけど」とか「学のこと好きなの?」って言われるからできない。

 そこで安菜に相談してみた。

 学の名前を伏せて。

「なるほどね。花は告白されたんだ、良かったじゃん」

「いや、そうなんだけど・・・」

「花は学・・・じゃなかったその男子のことどう思っているのよ?」

 安菜が慌てて言い直した。

「学じゃないよ!」

「ごめんって、でも今の説明を聞いたら誰でも学だと思うよ、きっと」

「・・ほんと?」

「やっぱり学なんだ」

 安菜がニヤニヤしながら迫ってきた。

「それでどうすんの?告白されたんだからしっかり答えてあげなきゃダメだよ」

 指を指して言ってきた。

「でも、学は答えなくてもいいって言ってたし・・・」

「逆に聞くけど、花は誰かに告白して答えを聞かなくてもずっと平然な顔して過ごせるの?」

「で、できないけど」

「でしょ?学も同じだよ。自信がないからその場で答えを聞きたくないんだよ」

 若干呆れながら安菜が言ってきた。

「そうじゃなくてさ・・・」

「じゃあ何?」

 帰りたい雰囲気満々で聞いてきた。

「わかんないけどなんか嫌なの!」

 思わず叫んでしまった。

 数名がこっちを見ている。

「わかったからとりあえず行こっ」

 安菜が手を引っ張って家の前までついた。

「ちょっと待って、もう動けないよ」

「あんなところで大声上げないでよ」

 怒っているのが伝わるはずなのに何にも考えられない。

 自分の気持ちの整理がついていないからだろう。

「話し戻すけど、ちゃんと答えてあげないとだめだよ」

 そんなこと言われても

「・・・・無理だよ」

 ボソッと口にしていた

「無理に決まってんじゃん。(アイツ)のことどう思っているかなんて私にもわからないんだもん」

 とっても疲れた

 思っていることをさらけ出してしまった。

「・・・他に好きな人がいるのね」

「っ!」

「その反応、やっぱりそうなんだ」

「何言ってんの?」

 いくら勘のいい安菜だとしてもそんなことありえない

「きっと響輝なんでしょ?」

「それは絶対ないよなんでアイツのおことを好きならないといけないの?いっつもどんな態度で接してくるか知ってるでしょ?」

「もちろん知ってるよ。でも、花もまんざらじゃない表情だったよ?」

「そんなことないよ」

 そう、そんなはことない。

 あるわけがないんだ。

「決めた」

「決めたって何を?」

 すっきりして気持ちになった。

 心の中にあった霧が一瞬にして消えるようだった

「私、ちょっと行って来る」

「え、どこに?待ってよ花!」

 安菜の言葉は聞こえたけど、それに従おうなんて気には全くならなかった。

 とにかく走った。

 一つのことしか考えずに走った。

 (アイツ)にこの言葉を言うまでは止まるわけにはいかなかった。

 雨が降り、体が冷えて思うように動かなかった。

 だけど、どんなに転んでも、どんなにつまづいても何度でも立ち上がり、歩みを止めるわけにはいかなかった。

 やっとの思いでたどり着いたのは学の家だ。

 インターホンを押しても返事がない。

 時刻は午後6時30分を回っていた。

 家にいてもおかしくない時間だ。

 ここで帰るわけにもいかないし、玄関フードの中で座っていた。

 長い時間がたっていた。

 夕暮れ色に染まっていた空も今では真っ暗になっていたが、雨はずっと激しく降っていた。

 そろそろ家に帰らないと親が心配してしまう。

 諦めて帰ろうとした時、私が目にしたのはガラスをはさんでじっとこちらを見ていたのは学だった。

 傘を差し、驚いた表情をしていた。

 濡れている私を見てすぐに家の中に入れてくれた。

 タオルとジャージを貸してくれたからシャワーを借りて着替えた。

 リビングに戻ると学がホットミルクを入れて待っていた。

「傘もささずにどうしたの?」

 本気で心配してくれているようだった。

 そんな優しさに我慢してた涙がこぼれた。

 これ以上心配させないと思っていたけど、学の声を聞いたら、姿を見たら、話していたら何も考えられなくなっていた。

 真っ白の空間の中には私しかいない、そんなようなところに一つ。暖かく、大きな見慣れた手が伸びてきたと同時にその人の声が心の奥底に響き渡って云った。

「泣かないで」

 その何げない一言を聞いたときに確信した。

 私はこの人に心を奪われていたんだ。

「私でもいいならよろしくお願いします。」

「・・・へ?」

 口にしていた言葉は感謝でも心配への返答でもなかった。

 雨音はいつまでも続いている。

 沈黙になってしまい私は気まずくなった。

「何て言ったの?」

 聞こえなかったのかと思ったけど、

「泣かないでって言ったのに何で『よろしくお願いします』って言うの?」

 それを聞いて止まりかけた涙が更に出てきた。

「もう・・・馬鹿なんだから。もういちどいうね。学、私でよかったら付きあってもいいよ」

 やっと言えた。

 かかっていた霧がきれいに消えて行った。

「待って、ちょっと待ってよ。色々あって整理できないよ。とりあえず、ほんとにいいの?」

「いいって言ったでしょ。」

 そう言ったら学は私に抱きついてしばらくいた。

「・・・どうしたの?」

「・・・・嬉しくて、嬉しくて、つい・・・な」

 大きな背中に私も腕を伸ばし、包み込んだ。

 さっきまでとは意味が違う涙が流れた。

 頬を伝う暖かい液体に込められた思いは、

 『有難う』

 そして私に大切な人が出来た。

 だけどこの決断が学を悲しませることになるとは思わなかった。

 運動部はこれから大きな大会がある。

 名前は『都道府県別中学校体育大会』

 これは予選、管内、そして全国と続いていく。

 吹奏楽部は全国まで行くと応援に行き演奏をする。

 そのために吹奏楽部と運動部は一番活気が溢れている。

 土日も一日中部活が続いているからデートらしきこともできない。

 雨が降った時はどちらかの家で遊ぶことはあるもの出来ることが限られているから続くこともなくすぐに帰ってしまう。

 時は流れて大会前日。

 学の調子を聞くためメールを出した。

 ものの二、三分で返ってきた。

「みんな一生懸命にやってるし、響輝も調子いい感じダヨ。もちろん俺も絶好調!今年こそ全国行けるよう頑張るよ。だから応援ヨロシクね」

 市内には六校あり、うちの野球部は一昨年から運悪く市内一位の学校と当たって管内にも行けなかった。

 後がない学たちは血眼で頑張っている。

 学校内のイメージは万年初戦敗退で期待値は底辺だった。

 そのことは本人達が一番わかっている。

 みんな今年こそはと思っているんだろう。

 校舎で部活をやっていても野球部の声がどの部活よりも聞こえてくる。

「そっか、調子いいんだね。じゃあ今年こそ演奏できるようにがんばってね。云い演奏聞かせたいからさ(笑)」

 送って一分くらいしか経ってないけど携帯を見てしまう。

 そこにタイミング良く返信が来た。

 でも、安菜からだった。

「お・め・で・と❤」

 安菜には何にも言っていない

 安菜は学年でも有名な情報ツウだ

 学は特に恐れていると言っていた。

 そのあとちゃんと学からメールは来た

「終わったらたくさん遊ぼうな」

 これが来た時は嬉しくて倒れるかと思った。

 ちなみにこれを送った時、学は蕩れたって言ってた。

 『蕩れ』ってなんだろ?

 そして大会本番

 学校では本来見に行ってはいけないがこっそり見に行った。

 途中だったが、二回表で相手チームの攻撃

 得点番を見るとそこにあったのは7‐0

 このままでは負けてしまう

 そんな中でも相手の攻撃は続き、どんどんランナーがたまっていく。

 その中、響輝がピッチャーになった。

 打たれていたがなんとか点は入んないで終わった。

 学達の攻撃は相手の球が速く、二人ともアウトになった。

 そして学の番

 四球見逃して五球目、『カキーン!!』と大きな音が聞こえた。

 音の方を見たらそこに広がっていた世界は見たことなかった。

 いつも見ている空のはずなのに汗をかいて、泥だらけになっている人たちを見た後では、美しく、碧色に見えた。

 そこにある白球は高く高く舞い上がっていた。

 落ちたところは相手のグローブの中に入った。

 そのまま試合は流れていて、巻き返しも起こらず結果10‐0で負けた。

 私は変な気持で帰った。

 その日の五時頃にメールで結果を教えてくれた。

 文は一言「負けた」としかなかった。

 どう返そうかわかんなかったからとりあえず「残念だったね」と送った。

 返って来たのは「ごめん」とだけだった。

 それからメールを出すもの返信はなかった。

 何にもやる気にならず、そのままベッドに入った。

「私もどうしたらいいのかな?彼女なのに何にもしてあげられないや」

 うっすら涙が流れた。

 悲しくてすっきり寝れなかった。

 でもそれは何もできなかった悲しさではないような気がする。

 次の日、初戦で負けてしまったから野球部は午前中で終わるらしくデートに誘ってきた。

 けれどもなぜか乗り気になれず、断ってしまった。

 このことを安菜に相談するため家にすぐさま向かった。

「急に来てどうしたの?」

 ちょっと迷惑そうにドアから顔を覗かしてくる。

「学とのことで相談なんだ・・・」

「さっさと入って!」

 強引に腕を引っ張りそのまま部屋まで連れてかれた。

「早く話しなよ!何があったの?」

 なんだか目を輝かしているようだった。

「学と話す気になれないっているか、よくわかんなくなってるの」

 そういうと安菜が呆れ顔を見せた。

「・・・はぁ。やっぱりね」

「やっぱりって何?」

「一つだけ質問するよ?」

 そうすると安菜は写真を二枚見せてきた。

「響輝と学どっちが好き?」

 二人の写真を私の前に置いた。

 私はもちろん額の彼女だもん、そんなの決まっている。

「学に決まってるよ」

「もしも、学に告られる前だったら?」

 真剣なまなざしで聞いてきた。

「それは・・・・」

 なぜかすっごく悩んでいた。

 響輝のことは何とも思ってないはずなのに悩んだ。

「悩むんだ」

 安菜が分かっていたような口調で言った。

「前に花言ってたよね。響輝のこと何とも思ってないって言ってよね?じゃあ何ですぐに答えられないの?」

 確かにそうだと思った。

 学のことは少し思っていたから答えは出ているはずだった。

 なのに響輝のことが頭の中を巡

 っていた。

「それは・・・」

「もうわかってるんじゃない?」

 そんなことないよ安菜。

 あったらダメなんだよ?

 でもそれが一番納得できる答え

 この決断は確実にしてはいけないものなのはわかっている。

 だけど私はこうした方が幸せになる。

「自分か、学か・・・」

 考えたくない

 自分が我慢するか、(アイツ)が不幸になるか

「自分のためになることをしなよ」

 そう言って私を追い出した。

「もうちょっと相談させてよ!」

「あとは自分で考えて決断しな。」

 さっき出した二人の写真を私に持たせた。

「いらないよこれ」

「どっちか決めたら違う方を渡しに来てよ」

 不意に綺麗でいつまでも見れるような笑顔をして言った。

「明日ちゃんと部活に来なよ」

 そう言い残し家に戻っていった。

「一人じゃ決められないよ」

 帰り道に一人そう呟いていたらそこに響輝と学がいつものようにキャッチボールをしていて、その様子を鈴音が見ていた。

 響輝が私に気づいた。

「なんでお前も来るんだよ」

 いつもの顔が違って見えた。

「今日もいい音鳴らしてるね」

「気持ちいいくらいだよね」

「このくらい普通」

 いつもの冷たい反応が返ってきた。

 やっぱりむかつく

「確かにね」

 笑いながら学は言った。

「試合見に行きたかったな」

「花は見に来てなかった?」

「なんで知ってるの?」

 響輝が「またか」って顔をして言った。

「学ってな、見てないようでいろんなところを見ているんだ。花が来たことに一番早く気づいたのはきっと学だろ」

「よくわかったな」

「予想しただけだけど」

「きっも」

 鈴音が本気で言った。

「周りをよく観察してるんだよ」

 こんな何気ない会話をしていくうちに決まった。

 どっちにするか決まった。

「私は帰るね」

 そのままさっさと家に帰った。

 そしてそれから二週間がたった。

 私は学を近くの公園まで呼んだ。

「花、今日はどうしたの?」

「大事な話があってさ」

「・・・・なに?」

 不安そうな表情を見せた。

 きっと私もそのような顔なんだろうな

「実はさ・・・」

 言葉が出てこない

「実は!」

「ちょっと待って!」

 学が大声で止めた

「ちょっと・・・トイレに行かせて」

 私が答える間もなく言ってしまった。

 しばらくしたら学でなく、響輝が来た

「なんで響きが来るの?」

「なんでって学に呼ばれたんだよ」

 そこには学の姿が見えなかった。

(アイツ)が今すぐここに来いって」

 携帯のメール画面を見せてくれた。

「なんでお前しかいないんだよ」

 分かりやすく嫌な顔をした

「もう帰るからな」

「待った!」

 腕をつかんで止めた。

「話があるの」

 響輝が腕を振り払った。

 けど、その場で話を聞いてくれた。

「私、好きな人ができてさ」

「なんで俺に言うのさ」

 更に嫌な顔になった。

「学にでも相談しろよ。あいつそういうの得意だから」

「違うの!そうじゃなくて」

「なんだよ!」

 本気で怒ってきた。

 なにがなんでも手を出してこなかったのに今回ばかりは拳を上げた。

「いい加減にしろ!」

「好きなの!」

 動きかけた手が止まった。

「今・・・・・なんて・・・」

「好きなの!響輝のこと・・」

 五時のチャイムが鳴り響いた。

 曲は『大嫌いなはずだったのに』

 認めたくなかったのに気づいてしまった。

 一度ほかの人といたのに好きになってしまった。

 悪いことなのはわかってるのやってしまった。

「何言ってるんだ?」

「言葉の通りだよ。私は、響輝(あなた)が一番大好きです!」

 また涙が零れ落ちた。

 透明に澄んだ綺麗な色をしている事だろう。

 きっとそうに違いない

「返事・・・・聞かせてよ」

「うん」

 真っ赤にして言った

 その言葉はずっと待っていたものだった

 ・・・っと思ったら

「いきなりで困ってるから待って」

 それを言い残し走っていった。

「なんでぇ~」

 泣きそうだった。

 時が流れて卒業式

 三年生で歌った曲は『手紙』

 女子も男子もみんなして泣いた

 先生と写真を撮ったり、後輩に一言喋ったりしている。

 吹奏楽部は音楽室に集まって曲を弾いてくれた。

 そのあと私は校舎裏に行った。

 いたのはもちろんあの人だった。

 好き、恋、惚れた、慕う、いとおしく思う、好く

 言い方は千差万別だけどそんなのどうだっていい

 大事なのはこの人の隣にいれることだ。

 安菜と学はきっと気づいたんだろうな。

 だからあの時いなくなったんだろうな。

 私のことが大事だから

 私の恋人だったから

 私を・・・


 愛してくれたから


 この恋は続いていった。

 高校卒業しても

 大学を卒業しても

 ずっと、ずっと

 続いた


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