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閑話:書記と執事

 お世話になった白雪さんにお礼と別れを告げ、俺は住宅街を後にして駅へと向かった。目指すは西園寺グループ本社。そこでもう一度話を聞いてもらい雇ってもらうのだ。乗車券を買い、電車へと乗り込む。ふと、制服を着た人たちばかりが電車に乗っていることに気付く。朝の7時半。おそらく学校の朝練などで早いのだろう。もしくは少し遠い学校に通うためにこの時間帯に乗っている人もいるのだろう。何にしても、高校生活なんて俺には縁のないことだ。


『緑越駅、緑越駅。次は緑越駅に停まります。御降りの方は右手のドアから御降り下さい』


アナウンスが聞こえる。どうやら、目的の駅に着いたようだ。俺はアナウンス通りに右側に行き、電車を降りる。電車を降りて、ホームから出ると、暖かな日差しが目に入ってくる。少し、目を細めながら歩いていると左側から腕をいきなり掴まれ引っ張られた。それが物凄い力だったもので、俺は抵抗をする余地もなく引っ張られ続け、口にハンカチを当てられ何かを吸って意識を失った。



 ぼやっとした中でお嬢様が笑って俺の名前を呼んでいるのが聞こえた。


「ん…」


ぼうっとしながらも身を起こした俺は少しの頭痛に頭を押さえた。


「お、起きたか」


横から声が聞こえ、思わずそちらを睨む。睨んだ先には黒目黒髪の引き締まった体をした男がドアに寄り掛かって立っていた。一つのベッドがある室内。どうやら誘拐された様だ。警戒されていると分かったのか、男は端正な顔でふっと笑い、俺に近寄って来た。


「寄るな。なにが用件だ」


ただ、1つ思ったこと。俺を誘拐してなにかのメリットあるのか?…ないよな?こいつが誘拐したのだとしたら、こいつは馬鹿ということになる。俺に誘拐するほどの価値は無いのだからな。


「猫のように警戒心丸出しって可愛いもんだな。用件は命令したボスに聞いてくれ」


男はそう言って横にずれ、ドアを開けた。そこには…。


「な、なぜお前がここに…」


ドアが開いた先にいた男は生意気そうな顔でふっと笑った。


「我が社のことを知ったお前をみすみす西園寺に差し向けると思うか?」


七海羽空。白雪社の社長の書記であり、経理部の部長である男。そして、お嬢様が恋焦がれている西条葉月のことをあいつと言った男である。


「ん?こいつはなにか我が社に関して重要なことを知ったのか?」


最初からいた男が七海羽空に話しかける。


「まあ、知ったといえば知ったな。俺にはそれがとても許せない」


「…私事に俺を巻き込んだのか?」


「いや、お前には関係ある」


「じゃあ、なんだよ」


「ちょっと、耳を貸せ」


話をしていた男たちはひそひそとした会話をしだす。口を手で隠しているので俺には何を言っているのか全く分からなかった。


「ほう、なるほどな。それは重要なことだな。俺も知らないのにな…。今度聞いてみるか」


「もし、お前がそれを聞くとしたら俺は全力でお前を邪魔しよう。二人きりには絶対させないからな」


七海羽空が男を睨んだ。男は飄々とした態度で肩を竦めた。仲間割れだろうか。


「で、お前…遠山だったか?」


なぜ俺の名前をこの男は知っているのだろうか。いや、七海羽空から聞かされたのか。


「仕事を探しているんだろう。俺の元で働かないか?今なら新入社員として雇ってあげるぞ。給料も結構いいと思うが。あ、自己紹介まだだったか。俺は東原純。白雪社の警備課の課長だ」



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