サマフェス行きたかった!
凄く遅くなりました!
期末テストが返された。結論から言うと、全て平均点。私としてはホクホクの結果であった。
「まこちゃん、どうだった?」
なつちゃんがテストの結果を受け取って私に聞いてきた。
「私は普通かな?なつちゃんは表情から見てよかったみたいだね!」
「そう!聞いて!英語が98点で4位なんだよ!でも、上には上がいるみたいだね…。恐らく一位は四条空翔君と西条葉月様でしょ?2位は誰なんだろう」
なつちゃんは悔しそうにテストを見つめた。98点で4位か…。しれっと葉月に様付けしてるし。
〜
放課後、教室のゴミを片付けるために、ゴミ置場まで私は来ていた。ゴミを捨てる当番が私だと、クラスメイト総出で私達が出しに行きます!と言ってくるので恐ろしくなる。流石に、ゴミを捨てに行くことを任せるのは申し訳ないし、割り振られた仕事はきちんとやるべきだ。
『ゴミを捨てるのは私だ!』
と毎回全力でクラスメイトを振り切り、ゴミ捨て場に行くのだ。どうしてゴミを捨てるだけの行動にここまで大事になっているのだろうか。解せぬ。
ゴミをゴミ捨て場に丁寧に置き、振り返ると、ゴミを持った赤い髪の男子生徒がやってきた。赤羽君であろう。
「おお、誠か」
私の隣で立ち止まり、赤羽君はゴミをぶん投げた。
「ちょっと、赤羽君!ゴミはぶん投げちゃダメだよ!」
どこのお堅い委員長の言葉だよ!っとつっこみたくなるほどに真面目なセリフが口から溢れた。
赤羽君は小さな声でわりぃと謝ってくれた。
「ところで、誠はゴミの当番でここに?」
赤羽君の言葉に私は頷いた。
「赤羽君もでしょ?」
私がそう尋ねると一瞬の間を置き、ため息をつきながら赤羽君はまあなと言った。
「…クラスの女子が俺からゴミを取り上げようとしてきて全力で逃げてきた」
…どうやら私と同じ状況になっているらしい。
「私もだよ」
自分が思ったよりも低い声が出てしまった。赤羽君は同情しているような顔で私を見ていた。いたたまれなくなった私は期末テストについて聞いてみることにした。
「あ、赤羽君はさ、期末テストどうだった?」
「期末は結構良かったぞ。英語なんてあと一点で満点だった。10位以内に入れたし、このまま勉強していこうという威力が湧いた」
なつちゃんよ。どうやら英語の3位は赤羽君みたいだぞ。
「それは良かったね!赤羽君はモデルもやっているのに勉強もできてすごいと思う!文武両道なんてきっと事務所も誇りに思ってるよ!」
白雪事務所の上の白雪社の社長が言うんだから間違いない!
赤羽君は頬を染めて照れ臭そうに視線を彷徨わせていた。
「そ、そんなことないと思う。現にいつも怒られてばかりだ」
「いつも怒られるってことは期待されているっていうことだよ!その調子で行くんだよ!応援してる!」
と赤羽君にエールを送っていれば頭上から視線を感じた。ゴミを出して戻ってこないから、同じ掃除担当の人が痺れを切らして様子を見にきたのかな?
「ありがとう…」
蕩けるような笑みでお礼を言う赤羽君。その笑みを見た人はきっと溶けてしまうだろう。この笑顔を写真に撮ったらバカ売れするだろうな、と現金なことを考えて、赤羽君と別れた。
ゴミ出しから戻れば、なんかクラスメイトの顔が暗い。少し近寄ってみれば、
「奴なら、一殺だわ。もう終わりよ…」
「くっ、結局はそういうものなのか…?世の中はなんて理不尽だ」
などというつぶやきが聞こえる。どうやら、なにか理不尽な目に遭ったようだ。祈っておこう。
「まこちゃん、まこちゃん。サマフェス知ってる?」
目を爛々と輝かせた美智ちゃんが私に話しかけてきた。当然、白雪社の社長として、サマフェスを知らないわけがない。多くのアーティストが集まり、ステージで演奏を行うのだ。毎年豪華なアーティストが集合するので多くの客がやってくる。そして、日本の夏の経済を動かしていると言っても過言ではない。
「うん。知ってるよ。それがどうしたの?」
「あのね、実は、サマフェスにメモリアルが出演するんだって!!!」
美智ちゃんが興奮した状態で私の腕を掴んだ。腕をブンブン振ってくる。
「そ、そうなんだ」
「そうだよ!すごいことだよ!でさ、まこちゃん折角だから、一緒に見に行かない?」
まこちゃんが興奮しているのであまり反応できなかったけど、私は凄い驚いていた。メモリアルは夏が嫌いである。彼らの仕事着は軍服を模したものであり、分厚く、通気性が少ない。よって、メモリアルは夏には室内でのライブしか行わない。ただ、それ以外にも理由がある。メモリアルには普段の衣装の他に夏に着る用の衣装が存在している。その衣装を見たメモリアルは真っ青な顔をして、夏の野外ステージの活動を断った。以降、その衣装は仕舞われ続けている。
そう何を隠そうその衣装は、亮君と私と茜でデザインした、ほぼ半袖短パンの衣装なのである。メンバーカラーに合わせて作られた衣装。胸元がはだけていたり、片足だけ少し長かったりとメンバーの個性(演技)に合わせて作られた衣装は彼らの好みにはならなかったようである。特に、ほぼ水着と言っても過言ではないリーダーの衣装がダメだったようだ。
そのメモリアルがサマフェスというイベントの野外ステージに出る。これは、あのお蔵入りと言われている衣装を必ず着ることになるはずである。
ただ、残念なことにサマフェスを見ることができない。
「ごめんね。美智ちゃん。サマフェスが行われる時期は、親に会いにアメリカに行かなくちゃいけないんだ。夏休み終わったら、話を聞かせてほしいな」
そう、アメリカに行かなくてはならないのだ。私たちの保護者に会いに。
「そっか…。アメリカに行くなら、行けないよね。じゃあ、夏休み終わったら、サマフェスの話をするからか期待しててね!」
美智ちゃんは少し残念そうに、でも笑顔でそう言ってくれた。
そんな美智ちゃんに申し訳ないなと思いながらも、私は頷くしかなかった。
まあ、と言うわけで、夏は白雪社の幹部がお留守になる。よって、これから、少し仕事が忙しくなる。背中に掻いた冷や汗が何を意味しているかは言うまでもない。




