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side 赤羽海叶



髪を染めたのはいつだっただろうか。

確か、両親が海外に行き、俺だけ取り残された時だった。


当時の俺はかなりやさぐれていた。父親の単身赴任で母親がついていく。そう言ったのだ。相談もなしに俺は1人暮しを強要され、両親は旅立って行った。中2の冬だった。


寒い冬の日に、楽しそうに横を通り過ぎたカップルがいた。赤い髪の男に、金髪の女。派手な服装のカップルだった。それでいて楽しそうな様子に俺は少し羨んだ。


それから、赤髪にした。赤をこれでもかと強調した髪はみんなを怖がらせていた。


「不良だ!」


そう言われたことも何度かあった。知らない奴に喧嘩も売られた。訳もわからず買って、難なく勝った。


それから、俺は先生にも不良のレッテルを貼られ、迂闊に生徒も近づかなくなった。


そんな俺は悔しくて、受験を頑張ってそこそこ頭のいい高校へ入った。


けれど…やはりクラスでは、1人になった。どこか期待していた自分と冷たいクラスメイトに腹が立った。だから、屋上へと逃げた。


そうしたら、あいつが来たんだ。コイツも俺を見たらさっさと去っていく。そう思ったら、自然と口が動いた。


「…なんだお前。見てんじゃねーよ。カス」


これでコイツもいなくなるだろう。そう思っていたら、なぜかコイツは少し嬉しそうだった。


え?まさかのドMとか言うやつか?焦って口を開けば、コイツいきなり変なこと言いやがった。


「ねえ、少年!アイドルやりなよ!」


正直言ってかなり引いた。カスと言われたのになんかアイドルやれみたいにいきなり言ってくる奴なんて正常なのか?


まじまじ顔を見れば、コイツの顔は驚くほど整っていた。優しげなクリクリした瞳にすっと伸びた鼻。誘っているような唇。って、いくら綺麗だからってこれ以上関わりたくねえ!


「は?お前…何言ってるんだ?」


そう言えば、逆効果だったのか事務所紹介するとか怪しいことを言われ、名前を聞かれた。


抵抗すれば襟を掴まれ、コイツの綺麗な顔が近づく。そして、何故が動機が止まらなくなった。慌てて返事をする。


「は?…分かった!分かったから揺らすなよ!揺らさないでくれ…!」


「じゃあ、名前は?」


「…赤羽 海叶かいと


「じゃあ、赤羽くん!何年何組!?」


まだ、動機が収まらず視線をさ迷わせてから答えた。


「1年3組…」


「よし!放課後、一緒に来てね!来ないと追いかけるよ!私、ストーカーについて多少の知識はあるんだから!」


あいつは俺の襟を離して仁王立ちした。

その姿がなぜかとても可愛く見えた。思えば、こうして接して貰えたことはなかった。

それが嬉しくて悲しくて複雑な感じで、しゃがみこむ。そういえば、名前なんて言うんだ?俺はコイツのこと何も知らねえ。


「お前…。お前は名前なんて言うんだ?」


そう言えば、戸惑いもなくあいつは答えた。


「私?私は白雪誠」


誠。名前を聞いただけなのに、俺は今までで1番嬉しかった。ドキドキが止まらない。その原因は誠だ。


「誠…てめぇ覚えてろよ?」


だから、こう言った。そしたら、誠は何を勘違いしたのか分からんが、ドヤ顔で


「覚えてるに決まってんじゃん!」


そう返してきた。何だか笑ってしまった。ああ、本当に変わっていて面白い。


「お前…面白いよな」


思わずそう言えば、誠は表情をコロコロ変えて


「そうかな?」


俺の周りにそんな表情コロコロする奴はいない。


「ああ。変わってると思う」


そう言えば、誠は凄いショックな顔をしていた。


…そんなに変わってるのは嫌なのか?


「俺はそういうところがいいと思うんだが」


「そ、そう…変わってるんだ…と、取り敢えず、放課後教室に行くからいなかった本当にストーカーやるからね?」


あ〜、俺変なこと言っちゃったかな?誠は腕時計で時間を確認するとそそくさと屋上からいなくなった。


どうしよう、授業サボろうと思ったんだけど、やっぱり受けようかな。


放課後、誠はひょこりと教室に現れた。誠は可愛いから、クラスメイトの何人かが誠を凝視している。なぜか、胸がチクリと痛む。


「やあやあ、逃げなかったね。赤羽くん」


そんな事を知らずに誠は俺に話しかけてくる。クラスメイトの視線が痛い。


「ああ」


「ちょっと、そこの君?」


俺の言葉にほぼ被せるように誰かが言った。


後ろを向けば、クラスで俺の噂を流した奴がいた。


「こんな奴に近づかない方がいいよ!コイツ不良だから!」


大きな声で奴は言った。何でコイツはこんなに俺を孤立させたがる。イラついて口を開こうとすれば、誠が先に口を開いた。


「え?別に赤羽くん面白いし、普通だと思うよ?不良?何かの間違えなんじゃない?」


「昔、コイツは色んな所の奴ぶん殴ってたんだぞ。不良に決ってる」


「…昔とかよく言う人いるけどさ、昔は昔だよね?別に今じゃないじゃん」


「今でも隠れてやってるかもしれないじゃないか」


「かもしれないとか確定してないこと言わないでくれる?それにそんなイカれた人だったら、私殴られてるわ。襟つかんだんだからね」


そこでクラスの奴らが騒ぎ出す。


「襟つかんだのに別に殴らないし、怒鳴らなかったよ?そんな優しい人が人殴るとかするわけないじゃん」


「…でも昔は」


「昔?昔にやらかしてる人なんて沢山いるんじゃないの?大切なのは今だよ。赤羽くんが人殴ってるのなんて噂で聞いたことないし不良のレッテルはおかしいよ。」


「…」


その言葉に俺の心が温かくなるのを感じた。

もしかしたら俺は誰かにそう言って欲しかったのかもしれない。


「用は済んだ?私だって昔は色々とやらかしたんだからね。その点では赤羽くんと同じなんかな?不良では、なかったけど」


「ふ、ふん!覚えてろよ!」


反論が出なかったのかあいつは去って行った。そもそも、俺、あいつの名前知らないなあ。


「よし、赤羽くん。行こう!」


そう言って誠は俺の手を引っ張って歩いて行った。


ありがとう。誠。


俺は手の平に汗が出てないか心配になりながらも静かに後をついて行った。


後で思ったんだか、俺は女子か!こういう時は普通、男が引っ張るよな?




海叶がストーカーについて一切触れなかったことについてつっこみたかったけどツッコミ要員がそこにはいなかった…。


ちなみに誠は書記のストーカーには気づいていませんが、本でストーカーの本を茜に沢山読ませられました。


茜に取ってみれば、それは書記に気をつけろの意味でしたが、誠は違うように解釈しました。茜がそれを知ったら、誰もいない所で膝をついていることでしょう。



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