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地獄の新入社員選考7

 運動会が終わって期末テストの前の休日。いよいよ新入社員選考の面接と試験、新入社員の選考が始まる。選考は面接と試験はセットで2日。選考は1週間で行われる。朝いつも通りに起きて準備を行い、書記の迎えで会社に向かう。会社に入りいつものように朝議を行う。


「はい、今日は新入社員選考です。私も社長室で白霧静になります。始めに今回の応募者人数と各自仕事の分担について確認を行います。まず今回の応募者ですが5034人となっています。我が社始まって以来の大人数となっています。よって、いかに効率よく、選考をすることができるかが大事になっています。みなさん、自分に与えられた仕事だけでなく、他の仕事に目を向け、手伝えるところは手伝えるようにしてください。新入社員選考の第1日目、2日目は面接及び小論文、試験です。第1日目では2508人という人数の方が来ますので頑張りましょう」


「「「はい」」」


私のお仕事モードにみんな真剣な顔で聞いてくれる。今日は珍しく副社長もいる。副社長はこのあと、全社員に放送で私の言った言葉を伝える役割があるからだ。


「では、まず副社長から。副社長はこの朝議の後、全社員が集合している玄関ホールにて直接顔をだし、激励の言葉と各自の仕事内容を説明してもらいます。その後この会議室に戻り、副社長用の資料を取りに来てください。そこから、一度資料に目を通し、資料どうりに動いてください。それが終わったら、昼食です。昼食後また資料を用意しておくので会議室に来てください。再び資料を読み、その通りに。終わったら帰って結構です」


「了解した」


副社長が頷いたのを確認して次の人の説明に入る。


「次に経理部部長。経理部は9時までいつも通りの仕事を。9時から各自面接の持ち場へ行ってください。部長も含め、どのような配置で面接をするか、どのような仕事内容なのかは朝議の終わった後に資料を配るので確認しておいてください。経理部のお昼休みは11時からの1時間です。12時からは会議室に資料を置いておくので代表が取りに来て各自確認するようにしてください」


「はい」


今回、書記は経理部部長としての仕事を担当してもらう。「書記」と呼ばれなかったことが不安なのか目の奥が揺らいでいる。けれど無視。時間がないからね。


「次、第1課課長。第1課は8時に社員へのお弁当の準備を始めてください。食堂が今日はやっていないので食堂にて社員弁当を配布。その際、社員証の提示を徹底してください。間違えて1人でも入社希望者に渡してしまうと混乱すると思うので気を付けてください。また、9時には各自面接の持ち場へ行ってください。資料については経理部と同じです。また、10時に面接担当を交代になる方がいます。その方は食堂へ行き、先ほど言った注意事項に気を付けながら、昼食を食べに来た社員にお弁当の配布をお願いします。お昼休みは午後1時から2時までとなります。午後2時から小論文と学力テストが行われるのでその時までに代表が会議室へ資料を取りに来てください」


「はい」


第1課課長も真剣に頷く。今回は忙しいため、荷物を持つと時間がなくなる。お弁当を自分の荷物のあるところまで行って取りに行くのは面倒なので、お弁当を頼んであるのだ。なお、あらかじめそのことは告示しておいたので社員は分かっているはずである。


「第2課課長。第2課は第5課の補佐に回ってもらう。よって、指示は資料に書いてある通りなので詳しく読んで社員にも知らせてください。また、面接官や試験監督に割り振られているなどそれぞれの社員にそれぞれの仕事が割り振られているため、社員にも資料を用意します。名前を間違えないように渡してください」


「はい」


第2課は華の美人が多い。その為、案内や受付や監視員など本当に多岐に渡って仕事が分かれている。しかもお昼まで別々だ。少し心配だけどしっかりと頷いた第2課の課長の顔を見れば大丈夫だと確信できる。彼女はやれる女なのだ。


「第3課課長。第3課はまず、数日かけて配置した面接室及び試験室、待機室の家具の配置、不備がないかを確認。もし不備があった場合は速やかに予備の家具との変更をお願いします。確認の優先度は待機室、面接室、試験室の順番になっています。待機室には9時、面接室には9時半に人が入ってきますので気を付けてください。また、終わった後は通常業務を行ってください。お昼は少し早いですが10時から11時になっています。その後は会議室に置いてある資料を代表が取りに来て中を読んでおいてください」


「了解しました」


第3課には申し訳ないことをした。お昼が10時だなんて社員いじめな気もする。申し訳なかったので3時におやつ休憩という名の軽食の支給を資料とセットで置いておくことにした。


「第4課課長、第4課は通常業務を12時までしてください。なお、新薬のモニターの結果の報告を明日お願いします。12時から午後1時まではお昼休み。午後1時からは試験の準備をお願いします。詳しくは資料を読んでください」


「はい」


第4課は今一番仕事があるので午前は通常業務を行ってもらい、そして午後からはほぼ全員に試験関連の仕事をお願いしてある。また、答案の答えも数人につけてもらう予定だ。まあ、答案の丸付けは他の課からも何人かエリートをお借りしてやってもらう予定なんだけどね。


「第5課は8時くらいには受付に数名が行き、入社希望者の案内をお願いします。人員が少ないので第2課からも応援が行きます。仕事の指示は課長が主にお願いします。また、待機室にも数人割り振って下さい。9時からは面接室への案内を全員にお願います。面接室の室数は200部屋。地下2階から、39階まで様々な配置になっているので入社希望者の方が迷わないようにしっかりと案内お願いします。午後1時から2時までがお昼休みで午後2時からは団体での案内になります。そこは警備課と団結して取り組んでください。なお、試験場所は地下1階の中広間と地上の2階すべての部屋となりますのでお願いします。また、午後の分の資料はお昼休みの時にこの部屋に取りに来てください」


「はい」


第5課は今、色々なアイドルのコンサートで人がいない。メモリアルなんか今日に限って武道館でライブだ。さらに新しいユニット『新星の夜空』なんて熊本でライブだ。その他にも商談に行っている社員もたくさんなので今半分ぐらいしか人数がいない。98人しかいないのだ。確実にやばい。よって、他の課から人を集める作戦を決行した。


「最後に警備課。警備課はまず、8時から駐車場の見回り。我が社の駐車場は30階建てだけれど、車を利用している方がどのくらいいるか分からない。そして、駐車場がどこだかわからない人にも教えてあげてください。そして、不法駐車の見回りもお願いします。9時からは外の人員を減らし、中の見回りをお願いします。内数人には待機室の監視もお願いします。ローテーションを組んでお昼は空いている人からお願いします。ちなみにお弁当配布は2時まででそれ以降はセルフになります。ローテンション等については資料を渡すのでよく見てください」


「はい」


警備課は面接官をしないで警備に集中してもらう。監視カメラとかもしっかり見て、万が一の時の問題に備えてもらうつもりだ。ほら、面接中に地震が起きたらどうするの?火事があったらどうするの?無いとは思うけど慢心は禁物。備えあれば憂いなし。


「以上で私からの指示は終わりにします。ここにはいない他の課や部の方々には副社長が説明してくれます。なにか質問はありますか?」


第2課課長が手を挙げた。目で促すと茜が質問してくる。


「万が一、面接等で使っているペン類のインクが切れた場合はどうすればいいですか?」


さすが第2課課長。


「備品は足りているか定期的に事務の社員が回る手筈となっております。もし、本当になくなって困った場合は室内にある電話を事務に掛けてください」


「わかりました」


そして、第2課課長の質問が終わった後に第1課課長が手を挙げた。


「もし、具合が悪くなった人がいた場合はどうしますか」


これも良い質問だ。


「休養室が1階の所にあるので具合の悪い人はその場にいる社員に自己申告してもらい、社員の付き添いで休養室まで行くという形です。もし、本当に具合が悪くなり、担架が必要だなどという場合は第4課に連絡をお願いします。そのあとは第4課の方の指示に従ってください」


「わかりました」


「他はありませんか?」


最後に確認で聞いてみるとどうやらないらしい。


「では、もし分からないことがあったら各自臨機応変に対応をお願いします。本当に緊急の場合は会社内放送でお伝えください。では、資料配布に移ります」


会社内放送とは会社内すべてに放送することだ。会社の各部屋に必ず1つはあり、緊急の際に伝えるものだ。


 私は資料を配るため、テーブルに視線を移す。なんとも言えない気持ちになるような資料の山が置かれている。テーブルが私のお腹の位置で、書類のてっぺんは私の頭より少し高い。それが各部署ごとに分かれている。特にひどいのは副社長だ。副社長の分は手を伸ばさないとてっぺんに触れない。


「これが副社長の分です。しっかり読んで7時50分に放送をお願いします」


「もう読んだから、やってきます」


…どうやら、私の話を聞きながら書類を読んでいたらしい。ものすごい速さでの速読に並行して私の話を聞く。相変わらずの頭の素晴らしさに舌を巻くしかない。


「では経理部はこれ、第1課、第2課、第3課と並んでいるので持ちきれない分は部下に運ばせてください。私は先に退室して準備に入ります。では、頑張りましょう」


7人の小人の様子を見ながら静かに退室し、最上階の社長室へと向かう。さあ、いよいよ地獄が始まる。



会社紹介


白雪社

白雪 誠が社長。西条 葉月が副社長。白雪グループには7人の長がいる。通称7人の小人。そして、彼らにより、白雪グループは発展を遂げてきた。バード大学の卒業時期に合わせて新入社員を募集している。年々募集人数が増えてきている。


バード大学

かの有名な世界で1番頭のいい大学。


7人の小人

第1課『食品』部門の藤堂 吹雪

第2課『衣類』部門の発芽 茜

第3課『住宅等』部門の大峰 進

第4課『薬・医療』部門の秋風 琴音

第5課『娯楽・他』部門の夏目 亮

警備課の東原 純

書記の七海 羽空の7人。


白雪社本社

40階建て。社長室、副社長室は最上階。直通のエレベーターがある。裏口がひっそりといくつかある。社員は警備員に本人確認をしてもらい、ようやくエレベーターで仕事場に行ける。朝議の階は39階。警備員は警備課から配属。

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