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目指せ1位の体育祭!9


 昼休みになった後、私は担任に呼び出され、職員室に来ていた。


「失礼します」


そう言って職員室に入った職員室では先生方がご飯を食べていた。そこを横目に通り過ぎながら、手招きしている担任の方へと向かう。そこはお茶が飲めるようにテーブルが置かれ、ソファが置かれている所だった。そして、衝立で仕切られていた。やってきた私に担任は満足そうに頷き向かいの席を促した。向かいの席には書記が座っていた。どうやら衝立で隠されるように座っていたらしい。私は促されたが担任の横で足を止める。


「s…ま、誠。お元気そうでなによりです」


なんとなく担任の言いたいことが想像づいた。おそらく、この顔面兵器をどうにかしろということだろう。


「…羽空兄さんよく来たね」


とりあえずトーンを下げて言っておく。そうすると、書記は顔面兵器としての力を見事に発揮した。そう、微笑んだのだ。その瞬間周囲が明るくなる。担任が顔を顰める。


「白雪さん。あなたの保護者の方が少し…その」


言葉を濁さざるを得ないよね。どこの人が「お前の保護者顔面凶器だから隔離した」とか言えるというのだろうか、いや、言えまい。


「そ、その節はお世話になりました。早く帰ってもらうように言いますね」


本人の目の前で私はそんなことを言った。ちらりと書記を見れば怪訝な顔をしていた。


「あなた、私のs…誠を私から離そうとしても無駄ですよ」


「…羽空兄さん。そういう問題じゃないよ。羽空兄さんがカッコいいからいるだけで女の子が被害を受けちゃうの。おとなしく帰ってもらえる?」


なんか、面倒くさいから回りくどくしないで単刀直入に理由を述べる。


「ま…誠」


書記が驚いたようにこちらを見る。おそらく書記と担任から見える私の目は死んでいるだろう。濁った瞳を見て書記は何を考えたのか急に真面目な顔になり、真剣に言った。


「わかりました。帰らせていただきます。誠も私がここにいては気分が悪いでしょう」


うんうん。なんかわかってくれて私も嬉しいよ。早く、できるだけ他人に顔を見せずに帰りなよ。書記は綺麗な動作で立ち上がると担任にお辞儀した。


「では、先生。私は帰らせていただきます。どうやら、私の誠は私があまりにカッコいいため、嫉妬してしまうみたいなので。では、誠。後で存分に私を堪能してくださいね」


書記の言葉にドン引きした私は一歩後退する。書記は私が道を開けてくれたと思ったのかにこりと微笑み職員室を出て行った。食事をしていた先生たち(主に女の先生)がお弁当やら飲み物などを喉につっかえさせたり、噴出していたりしているのを虚ろな目で視界に捉えた。


…どうしよう。なんか誤解を与えたらしい。今日の帰りが怖い。


「…白雪。…大丈夫か?」


担任を見れば担任は可哀相な目で私を見ていた。読み取れる心情は憐れみ、心からの心配。


「いいえ。全く」


担任の言葉に首を振る私。だよなぁと言いたげにこちらを見た担任は向かいのソファを示した。


「少し心を落ち着かせろ」


どうやら担任の優しい心づかいのようだ。疲れている私は頷き先ほどまで書記が座っていたソファに腰を下ろす。革張りのソファは私をいたわるように支えてくれた。


「とりあえず、すまなかったな。女子生徒5人ほど保健室に運ばれてってな」


「あはは、こちらこそ迷惑かけました。あとで学校に来ないように釘を刺しておくので安心してください」


「いや、それは悪いだろう。白雪にも、保護者の方にも。だから、次からはサングラスとかマスクとかして来るとか工夫してもらえば問題ない。あの人の顔さえ見えなければあんなことにはならないからな…」


つまり、顔面の兵器を封印するならOKということだよね。


「わかりました。そう言っておきます」


言った途端思い出した。今お昼休みじゃん!


「先生、私ご飯食べてないので失礼します」


慌ててそう言って、職員室を出る。


「…全く、しっかりしている奴なんだか、はたまたあわただしい奴なんだか。…変わっているのは事実だな。あの保護者の過保護っぷりと呼び名の「鯱」。あまり頭を突っ込みたくないが、調べてみる必要があるのかもしれない」


そう小さくつぶやかれた言葉を全く聞かずに私は廊下を早歩きで歩く。今腕時計で時間を確認すれば、時間は12時半となっていた。ちなみに午後の部は12時40分からとなっている。あと10分で自作した弁当を食べなければならない。そして、応援席に行かなくてもならない為実質食べれるのは5分強くらいだ。階段を一歩抜かしで登れば前に人がいた。MAIである。


「わ!」


「あ!」


お互いに驚き足を止める。ただ、私のお腹が風前の灯である。


「こ、こんにちは!ちょっと急いでるんで!」


私はMAIの横を通り抜けようと横にずれ、階段を上り始める。


「ちょっと待ちなさいよ!あなた、私の…」


あ…。勢いよくMAIに腕を掴まれた。そして、前に行こうとした私をしなる鞭のような腕で引き留められた。必然的に私は下へと落ちていく。驚いたMAIは腕の力を緩めてしまう。スローモーションビデオを知っているでしょうか?あの可愛い女の子の声も野太い男の人の声に変ってしまう恐ろしいビデオだ。今私はMAIの驚いた声がそのように聞こえている。男の人のような声がMAIから聞こえる中、私は素早く下を見る。どうやら落下先は階段の途中のようだ。このままではただ転落だけでなく、体のあちこちが酷い目に遭うだろう。そう思って、手を階段に垂直に置き、体を片手で支える。つまり片手逆立ちなうということね。そして、バク転の要領で手を離し、捻って、階段の踊り場に背中から落ちる。その時に純に習った護身術の登場だ。まあ、ほぼ柔道なんだけど。まず、体を地面と平行になるように保ちます。これは鉛筆の芯とダンボールを手にぶつけた場合どちらが痛いかと考えた場合に、明らかに鉛筆の芯の方がめり込むし痛いよねという力の働き方を応用した行動。どこか一か所をぶつけるよりも全体で受けた方が体への衝撃を和らげることができるはずっという私と純考えから生まれた行動。そして、背中から着地の時に衝撃を手と足を使って周囲に飛ばすのです。まあ、柔道の後ろ受身的なものを行う。その際頭だけは内に入れておくことが重要。頭大事。


ダン!と音が鳴り、世界が通常の速さに戻る。ちなみにダンという音は着地した時に床を叩いたときに出た音だ。つまり無傷ということ。…一応痛がった方がいいのかな?


「…い、いてててて」


一応言葉を発して頭を撫でておく。何で頭を撫でるのだろうか。ドジっ子がよくやる行動を思い浮かべて行動してしまった。ドジっ子ってよく人とぶつかって自分の頭を気にするよね!あれ?そう言う風に思っているの私だけ??


ふと前を見ればMAIが蒼白な顔でこちらを見ていた。私は大丈夫だよとという言葉を発しようとした所、MAIが口を開いた。


「私、確かにあなたが気に入らなかったけれど、こんなつもりは…」


ふと、MAIの後ろから女子が歩いてくるのが見えた。よく見れば鳥羽さんと谷川さんだ。これじゃあ、MAIに落とされた私的な構造になってしまう…。そんな風に考えて立ち上がろうとした私は少し遅かったようだ。


「え…MAI?…と白雪さん?」


弁明しようと立ち上がればMAIが階段から逃げるように去って行った。


そこで逃げたら、ダメでしょ!!!これじゃあMAIが私がやりました的なことになっちゃうよ。


「白雪さん大丈夫?一応保健室に行こう?」


鳥羽さんが私の所に駆け寄ってきて立ち上がるのを手伝おうとする。


「全然平気だよ!偶々落ちちゃっただけで!怪我も何一つしていないから!」


私は鳥羽さんの手助けを遮って自ら立ち上がる。


「いやいや、どう見ても…落とされたよね?」


鳥羽さん、引かず。本当に落とされたわけではない。あれはお互いに悪かった事故だ。


「とりりん。とりりんはクラスの方に戻ってなよ。ご飯まだでしょ?もう昼休み終わるし、私は食べ終わってるから白雪さんを保健室に連れて行くよ」


「…ありがとう。私は教室に戻るけど白雪さんをよろしく」


「あいあいさー」


「…私どこも怪我していないんだけど」


「白雪さん、怪我していなくても念のため見てもらった方がいいよ。見えないところに怪我があるかもよ」


谷川さんに手を引かれ静々歩き出す。怪我はないと思うけれどさっと行って来よう。そして、それを理由にちょっとお弁当を食べる時間を得よう。しょうがないけれど○×ゲームは休もう。鳥羽さんが心配そうにこちらを振り向きながら階段を上がっていく。私は急いで上がっていた階段を静々降りる。


…急がば回れならぬ急がば慌てるなだったな。


ふとMAIのことが気になった。蒼白な顔で現場を去った彼女。今どうしているのだろうか。罪悪感に苛まれていないだろうか。



柔道、護身術は想像の産物、フィクションでございます。


~人物紹介④~白雪社編

西条 葉月(16)

イケメン。バード大卒。白雪社副社長。いつもは仕事をせず、髪はぼさぼさでジャージで生活。ほぼ遊んでいる。そのため、会社内でサボり魔と呼ばれている。基本会社の表の顔をこなす。見たこともない商品を見事なプレゼンテーションで大ヒットさせることができる。有能。バード大では不良をやっていた。春野高校に編入した。クラスは1-1。


七海 羽空(20)

イケメン。白雪社で社長の書記と経理部部長を務めている。7人の小人の1人。白雪 誠のストーカー。西条 葉月となにかありそう。大学4年分の授業を全て入学時に予習していた。案外真面目で気が利く。社長に対して馴れ馴れしい人が気に入らない。


藤堂 吹雪

イケメン。バード大学卒。第1課の課長。7人の小人の1人。別名食品会のプリンス。甘いマスクに華麗な仕草。白馬が似合う男。白雪 誠からはおじさんと呼ばれている。自称文系。給料に厳しい。


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