目指せ1位の体育祭!6
私は下山有紗。春野高校に通う普通の女子高生。まあ、普通と言われれば、もしかしたら普通じゃないのかもしれない。
だって、服の流行とかあまり乗らないし、いつも大人っぽく見える服ばかり着ているからね。でもそんなこと言ったらみんな普通の人間だって言えなくなるのかもしれない。本当の普通の人間じゃない人はこのクラスにもいる。
まずは、日向。アイドル。はい、この時点で既に普通であるかと言われて、普通じゃないと言える。アイドルなんてめったにお目にかかれない芸能人である。日向のかっこよさを語るとしたらきっと24時間かかるだろう。…ちょっと誇張したかもだけど私は日向のファンであることがわかるはず。
そして、山田美智。中学からの友人であるが、大和撫子のような美しい顔と少しおっとりした優しい性格。クラスでの人気もかなり高い。ただ、メモリアルというアイドルユニットにはまっている。彼女が持っていないメモリアルグッズは存在しないと言われている。
ちなみに私はなぜか女子からのヘイトが高い。とても悲しいけれど、自業自得だなと思う節もある。私は無愛想だから女子につれない性格だと考えられているに違いない。男子には普通に対応できるから不思議である。
さらに、須川菜摘。一言いえば、アイドルでもやればセンター取れるんじゃないか?と思う顔立ちで、とにかく可愛くあざとい。ただそのあざとさがあまりにも高度であるから私にはわざとだか天然なのかがわからない。
…私は何を言っているんだろうか。クラスでもその人気は高く、リーダーシップもある普通ではない人間の一人である。小・中学校から仲が良い彼女は中学からモテモテでニコリと笑えば男子がざわつくのが当たり前だ。この2人とは縁あって中学から高校の今に至るまで仲良くさせてもらっている。こんな私と仲良くしてくれてありがたく思っている。
クラスの中でもっとも普通じゃないと感じたのは白雪誠だ。彼女は高校で知り合い、仲良くさせてもらっているけれど、最初に教室に現れたときにはあまりの美しさに言葉を失った。それでいて、体力テストの成績は文句なしのオールAで、さらに優しいし勇気も備わっているしエトセトラエトセトラでとにかく普通じゃない。
そんな彼女はクラス1の美女であり、人気者であり、アイドルでもあり、只者ではないと思う。世界経済を回していそうな人という印象を私は持っている。彼女が店頭に立てば、大勢の人が財布の紐を解いて金を出す…みたいな…。
話は変わるけれど現在は体育祭中。クラス一丸となって優勝を目指してきた成果が今日現れる。クラスの応援席から競技の場となるトラックを見れば、現在、3年男子の先輩たちが走っている。一緒に座っていた須川菜摘ことなつは二人三脚で入場門に行っている。
そして、隣に居る美智は…。あまりの狂喜乱舞に私は静かにため息を吐く。…100メートル走はメモリアルメドレーというアルバムがかかっているようで、美智の大好きなメモリアルの曲のメドレーがさっきからずっとかかっている。そして、美智は立ち上がって踊りだしたのである。満面の笑みでダンスを踊る美智を見て、さっきから男子は嬉しいような驚いているような顔でこちらをちらちら見ている。
他のクラスや学年を見て見ても熱狂的なメモリアルファンらしきものがいるらしく、立ち上がって踊っている女子が何人も見える。
「ねえ、あーりん!この曲は知ってる!?」
急に曲が緩やかになり、美智が違う踊りを始める。
「…わからない…」
さっきからずっとこのやり取りだ。
「この曲はね、メモリアルのデビューから5曲目の曲なんだよ。タイトルは『待ってた』!!歌詞はね、ずっと眠っている眠り姫を待ち続けていた王子様みたいな感じの歌詞でとてもメルヘンで舞踏会で踊るような曲なんだよ。ステージ上でメモリアルが王子様の服を着て男の人が舞踏会で踊るような振り付けをしているの。メモリアルには女性がいないから、みんな男の振り付けを踊るんだけどまるで女の人が隣に居るみたいな踊り方をしてるんだよ!私はいつもそれを見ながら、自分が隣に立ってることを想像して見てる!PVだと実際に女の人が踊ってるんだけど、見るたびに羨ましいな~って思うんだよ!」
「へ…へえ、メモリアルはダンスも上手いんだね」
つまり今のは要約するとメモリアル、振付最高!ということに違いない。
「そうよ!ちなみにこの振り付けも社長と亮となっていて、彼等はすっごく悩んでこの振り付けにしたに違いないっていう話が話題になっているの!有名な振付師や、専門家たちを集めて、メモリアル専用の会議を行ってるとかすごい色々出てきてて、メモリアルファンは誰が振り付けの意見を言ったのか血眼で探しているんだ!」
「凝ってるんだね」
美智は恐ろしい…。よくこんなに色々な知識が飛び出てくるよね。私は美智のメモリアル豆知識を重複して聞いたことが一度もない。末恐ろしい…。
「お、1年始まるぞ!」
男子の声がふと聞こえて、トラックを見る。見れば構えている男子の姿が見える。スタートはクラウチングスタートなので手を地面について真剣な面持ちで前を見据えているようだ。私のクラスからは陸上部の2人が出ている。ただ、100メートル走は基本陸上、バスケといった短距離主の人ばかりが出ているので、陸上部といっても油断はできない。…その中でも誠ちゃんは帰宅部。彼女の凄さが垣間見れるわけだ。
パンとピストル音が鳴る。その途端、隣に居た美智も踊るのをやめ、席に座り真剣な表情で走っている姿を見つめている。100メートル走はほんの一瞬で終わった。数秒でみんなゴールへと吸い込まれていく。
『1位…11秒23。1年2組北田君』
「え?北田1位!?」
木村君がそう言った途端、クラスが歓声に包まれる。ワーと皆が喜ぶ中、美智も私に抱き着いてきた。
「あーりん!幸先良いね!」
満面の笑みでそう言う彼女に私はくすりと笑ってそうだねと返した。
『2位…11秒54。1年3組堀川君』
1-3がワッと喜ぶ。
『3位…11秒56。1年2組阿部君』
「え!?めっちゃ惜しいね!阿部君」
美智が少し悔しそうな顔をして言った。
「でも、総合的には1年の中で1位だよ」
私はそう言って、女子の方を見る。発表が終わり2年が準備している。
「そうだね。誠ちゃんに期待だね」
~
そうしていよいよ1年女子の勝負が始まる。
「あーりん!一番端が誠ちゃんだよ!」
美智の声で私は一番端を見る。両手を地面につけて構えている女子生徒は黒い髪を上でポニーテールにしており、表情はうかがえないけれど落ち着いているのが見える。
「よーい…」
大きな声が聞こえ競技の参加者が前を見据える。すぐに合図が聞こえ、全員が反応しスタートしだす。その中でも一番端…つまり誠ちゃんが一番速かった。音と同時に走り出し、速くてあまり見えなかったけど、フォームがとても綺麗に感じられた。真横に来た時に陸上部、バスケなどの短距離の得意な選手たちに比べてずば抜けて速かった。
放送の人も興奮したように速い速いと叫んでいた。真っ先にゴールを切った誠ちゃんは速度を落としながら最後尾へと進んでいく。私達応援席の人は誠ちゃんの走りに恍惚とした表情を浮かべていた。誠ちゃんの速さの余韻に浸っていた頃、2位の選手、3位の選手とゴールして行った。
『1位、素晴らしい走りを見せてくれました。10秒59』
このタイムに会場は騒然とする。
「…すごくない?男子よりも速いよね?」
美智が驚いたように呟いた。私は頷きながらも放送を聞く。
『1年2組白雪さん』
やっぱりというようにクラスが喜ぶ。
「流石誠ちゃん!!」
美智も私の腕をつかんで笑顔で喜ぶ。ほら、男子が美智の笑顔に反応してこちらを見ている。私も誠ちゃんが1位になって誇り高い!気が付いたら頬が上がって笑っていた。誠ちゃんは本当にすごいと思う。
『2位、12秒11。1年2組鳥羽さん』
『3位…』
放送は順位を発表して言っているけれどクラスの女子出場者2人が1、2位という結果にクラスは大盛り上がり。
「ヤバイ!私たちのクラス本当に1位目指せるんじゃない!?」
誰かのつぶやきが聞こえる。私たちも周囲の子たちと優勝目指そうと話している。
「なんなの!?」
突如大きい声が聞こえ、シンとなる応援席。隣のクラスの応援席を見ればMAIが立っていた。気が付いたら選手が退場を始め、二人三脚が始まろうとしていた。
今回、有紗ちゃんに視点を当てたのは、誠の走りを外から見せたかったからと菜摘が二人三脚で不在、美智が視点だと流れるメドレーの曲一つ一つに注釈が入り、話が脱線してしまうからです。またMAIでもいいかなと思いましたが、MAIだと感情が暴発しそうなので有紗ちゃんにしました。また、有紗ちゃんはとても良い子なのもその際に伝えたかったのでというのもあります。
今回から一つの話の後に人物紹介を入れて行きたいと思います。量により紹介する人物の人数は代わると思いますが、今回は話の主役の白雪誠です。知ってるよ!って人は読まなくても大丈夫です。
白雪 誠(16)
この物語の主人公。身長165㎝の美人。なんでもできるスーパーガール。白雪社という会社で社長をやっている。バード大主席。高校1年生。県立春野高校に入学。社長として裏で活躍している。両親はすでに他界しているが海外旅行へ行っている設定となっている。クラスは1-2。考え事をしているとテンションが高くなるタイプ。仕事中毒者。写真脳。クラスの人気者で一目置かれている。クラスで副委員長を務める。握力45、上体おこし34、長座体前屈67、反復横跳び62、持久走1000m3分11、50m4秒23、立ち幅跳び239㎝、ハンドボール投げ43m。見事に体力テストの成績は満点。
いつも読んでいただきありがとうございます。




