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小説1周年


この『社長はやらかす女子高生』が1周年になったので記念に書いたものです。少し長くなっております。本編に関わるかといえば、少し内容は入っておりますが読まなくても大丈夫です。ほとんどのメインキャストを入れてあります。


「ねえねえ、今日は1周年だよ!!」


私、白雪誠は朝の会議でそう叫んだ。


「えっと、社長…それはなんの1周年なのでしょうか?」


書記が難しい顔をして私に聞いてくる。周りを見渡せば、7人の小人全員が不思議そうな顔でこちらを見ていた。


「…えっと、あれの1周年だよ?」


「その『あれ』とはなんだ?」


おじさんが眉を寄せてこちらを睨んだ。


「く、口では言い表せない何か!私の第六感が1周年だと叫んでるの!」


私は立ち上がり、足を開き、手を上へと上げた。


「ふっ、社長もとうとう仕事で狂ったか」


珍しく茜が笑いながら口を開いた。


「おい、茜!そんなこと思っても口にしちゃダメだろ!?俺も狂ったと思ったが、きっと社長は繊細な心の持ち主だから今の茜の言葉で心が粉砕されてるかもしれないぞ!?」


はい。間違いなく、進の言葉で私のガラスハートにひびが入りました。後で、何か仕事増やしてあげよう。


「あの、1周年とかどうでもいいので新しくスルメの商品の開発の話しません?」


「いや、スルメより明らかに1周年の方が大切だから!!!」


琴音の言葉に鋭いツッコミを入れて、私は再び席についた。


「1周年って…まさか…」


亮くんが青ざめた顔で呟いた。


「まさか…社長に彼氏が出来てリア充になってから1周年ってこと?」


「な、なに!?」


純が驚いて立ち上がった。


「しゃ、社長…彼氏いたのか?」


えっ、まさか。


「…いるわけないよ。どうせ私は独り身で一生を過ごすだろうからね…」


そう、これと言って恋愛なんて全くない。高校でも男子とは友達関係でいるだけだから告白も夢の夢だ。ああ、自分で言っていて傷つく。ただ、初恋はあったのかな?9歳以前の記憶があまりないからな…記憶なくしてるし。


「わ、悪い」


純がそう言って静かに着席した。顔がこころなしかほっとしているのが気になる。


「はあ、とにかく今日の会議は終わりね。書記、さっさと学校連れてって」


「かしこまりました」


…そういえば、今日は葉月見ないな。




書記に見送られた路地を曲がり、キラキラ輝く太陽で照らされている高校生達に混じり、学校へと登校していく。


「お、まこちゃん!おはよう!!」


急に肩に重い衝撃が来て、前のめりになりながら横を見れば、にこにこ顔のなつちゃんがいた。ボブ髪がいつも通りふんわりで可愛らしい。


「なつちゃん!おはよう!!」


「ふふふ。私はまこちゃんマスターだから、後ろ姿見て一目でまこちゃんだってわかったよ」


「ちょっと、変な発言やめなよ。なつ」


なつちゃんと私が後ろを振り返れば、有紗ちゃんと美智ちゃんがいた。有紗ちゃんはロングヘアーをカールさせていて、セクシーさが相変わらず出ている。美智ちゃんは見ている人がほんわかするような笑顔で長い髪を後ろへかきあげた。まるで後ろに蝶が舞っているような、春の雰囲気が漂っている。もう6月だけど。周囲をさりげなく見れば、チラチラと男子も女子もこちらを伺っているのが見える。うんうん。さすが、クラスのトップ女子達。この3人は人目を引く力を持っている。将来、私の会社でモデルやってくれないかな~なんてね。


そして、唐突に思い出した。1周年という単語。


「あ、そうだ!今日は1周年なんだよ!!」


「ん?まこちゃん急にどうしたの?」


なつちゃんが驚いたようにこちらを見た。


「今日は1周年だから、みんなでお祝いしないと!」


「なんの1周年なの?」


少し微笑みながら、有紗ちゃんが聞いてくる。


そう-。私も『1周年』という単語しか思い浮かばず、何が1周年なのかがわからない。とにかく、なにかを…なにかをお祝いしないといけない日なのだ。


「わ、わかんない…。でも、なにかをお祝いしないと…と脳内が訴えてるんだよね」


私は正直に伝えた。


「なにか大事なことがあったけど忘れちゃった感じかな?」


美智ちゃんがそう言って、首をかしげた。どこかから唾を飲む音が聞こえた気がする。


「そうみたい…」


「まあ、それはそのうち自然に思い出せるよ!」


「そうだよね!」


私達は校舎を潜って行った。



昼休み。授業が終わり、お昼となったけど私はまだ何を祝うべきかを思い出せずにいた。

その為昼食は手早に済ませ、校舎をさ迷うことにした。そして何故か校舎裏にいた。


どうやら無意識に校舎を出ていたらしい。靴もローファーになっていた。校舎裏には滅多に来ないなと思って周囲を観察しながら、表に戻ることにした。


…ん?校舎裏にひっそりと生えている木の下に金色の髪の毛が見える。


「…朝日奈くん?」


まあ、そんなわけないか。と思いUターンすると返事が返ってきた。


「…呼んだか?白雪さん」


はい、起きていましたね。日向くん。


「…おほほほ、御機嫌よう。朝日奈くん。昼寝の邪魔をしてしまったようで申し訳ありませんわ。ささっと去るつもりなのでお構いなく~」


いやー、まさか本人だとは。しかも起きているとか思わなかったよ。思わずどこかの副社長を強引に引き抜こうとした会社の令嬢の口調を真似てしまった。


「いや、気にしなくていいよ。丁度目が覚めたところだし。宿題もやらなきゃだからね」


「ああ、それは私のタイミングよかったな!」


「…ところで、白雪さんはどうしてここに?」


「私はちょっと考え事してたらここに来てしまって…」


日向がくすりと笑った。


「ふ…偶然俺のところに来るなんて運命を感じるよ」


そしてゆっくり近づいてくる。What's up?


「ねえ、何を考えてたの?」


そして私の手をゆっくり掴んだ日向。君は何をしたいんだい。


「いや、なにかが1周年だから祝わなきゃなんだけど何かがわからなくて…」


日向が私を見つめた。


「なにって簡単だろ?俺と白雪さんが出会って1周年だよ」


「??まだ会って2ヶ月だよね?」


日向の顔が近くなってきた。一体この男は何をしたいんだ!?


「ねえ、ぽーくん。こっちだって!可愛いお花があったの!」


「こっちに??」


声が聞こえてきた。やばい。このままだと日向がスクープ書かれちゃうよ!私はともかくアイドルが校舎裏で女子の手を握るなんてどこかのゴシップ誌に書かれそうなネタだ。


「朝日奈くん。悪いけど手を離して。私、急用を思い出した!猛烈にダッシュしたくなってて、朝日奈くんを巻き込んじゃうから!そして、巻き込まれた朝日奈くんは私という大型トラックに引かれて、コンサート出れなくなっちゃうから!」


「ん?俺、コンサートは終わったばかりなんだけど…」


「いいから!」


「は、はい!」


日向が手を離したのを見て私は駆け出す。何秒経ったのかわからないけどいつの間にか屋上にいた。校舎裏を見れば未だに日向は硬直しており、そんな日向に気づかないでカップルが校舎裏の花壇のお花を仲良く見ていた。


「…あれ、誠か」


声に反応して振り返れば赤羽くんが立っていた。


「また考え事か?」


「赤羽くんにしては勘がいいな…」


「…いま失礼なことぱっと呟いたな」


「…あれ、口に出てた?」


なんと、私の思ったことが口に出ていたらしい。


「ところでさ、今日はなんか特別な日みたいなんだけど、何の日かわかる?」


赤羽くんが私の横に来て考えるように空を見た。


「…わからねえな」


「だよね…」


まあ、わからないよね。諦めて、教室戻るとするか。


「ありがとう。そろそろ帰るね。雨降りそうだし」


「おう…って雨!?こんなに晴天だぞ!?」


「すぐに大雨降ってくるよ」


「…俺も戻ろう」


私たちが屋上のドアを閉めた途端に雨音が聞こえだした。


「すげえ…当たってる…」


「あはは。すぐに止むから傘はいらないけどね」


そう言って、私は教室へと向かった。赤羽くんと別れて教室へと戻る廊下で葉月とあった。


「あ」


思わず声をあげてしまった。その後すぐに葉月の腕を掴んで誰もいない教室に入る。ドアを閉めて葉月を見れば葉月は無表情で腕を掴まれていた。


「ねえ、葉月。今日はどうして朝会議来なかったの?」


「…用事があったから」


「それとさ、今日は何かの1周年らしいんだけどなんの1周年か知ってる?」


そう聞いてみれば葉月に腕を掴み返された。そしてそのまま、窓際へと追いやられる。


「な、なに?何か知ってるの?」


「今日は」


葉月が窓に手をついた。か、壁ドン!?女子が憧れる壁ドン!?な、なぜ今私に!?葉月の綺麗な顔が私に近づく。彼の瞳には私の顔が映り込んでいる。


「っ…」


私は自分の顔に熱が集まるのを感じた。


「『社長はやらかす女子高生』の1周年記念だ。俺も誠も1歳になった記念だ」


葉月の美声が耳を掠る。思わず身を縮めた。


「おめでとう。誠」


それと同時に意識が薄れていった。



再び目を開ければベットの上だった。いつも自分が寝起きしているベット。横の時計を見れば4時。


…夢か。あ、あれが夢か…。


異様に心がが疲れた気がする。えっと、とりあえず起き上がりいつも通りに支度をしようとする。ふとよぎる夢。恥ずかしい。あんな夢を見るなんて私はどんな変態なんだ。そして、彼らのことを私はあのように考えていたのか?


鏡の自分の顔は真っ赤だった。元通りにさせるかのように顔を洗った。


ああ恥ずかしい恥ずかしい。


こうして私は会社へと通勤していく。あの夢が本当にならないように祈りながら。恥ずかしい思いはもうごめんだ。




皆様のお陰で小説が1周年になりました。ここまで続けられたのも読者様のおかげです。ありがとうございます。これからも書いてまいりますのでぜひお暇な時に読んで下さいませ。では、また次の話でお会いしましょう。

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