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地獄の新入社員選考6


今更ですが、あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。


とりあえず、面接官の組み合わせは決まった。要注意人物として挙げられるのは葉月、茜。もう、この2人は面接官任せられないだろうレベルで要注意だ。なのになぜ面接官になってるんだろう…。社長の権限でさせてはならないって言っておけばよかった…。まずは葉月。遅刻魔、無気力魔。面接官として一番いけないやつだ。緊張している面接者に好きにしてとか、面接しないとか、勝手に何しだすかわからない。もし、葉月と社員を組ませたら、社員はそんな葉月を見て愕然とするだろう。白雪社の信用度が落ちるかもしれない。でも、やる時にはやる男。こればっかりは私が土下座するしかない。土下座して葉月に真面目にやってもらおう。


第2に茜。茜はとにかく笑わない。初対面の人が見ると、冷徹、無表情。そんな茜が面接官をする。どう見ても圧迫面接にしか見えないだろう。これには理解がある第2課の人をペアに選んでおいた。

まあ、これで上はどうにかなるだろう。あとは、私の説得にかかるね。


「よし、終わりましたね!では、青田せいでん大学へ行きましょう!」


小金沢くんが立ち上がり、荷物を取り意気揚々と出張板に名前を記入していく。この出張板というのは、仕事で用がある場合にどこに行くかを書いていくホワイトボードのことだ。私もそれに習って、名前を書いて部屋を出た。


「よし、青田大学へ行こう!」


小金沢くんが敬語を使わなくてはならない仕事部屋から、出たからかイキイキした様子で話しかけてきた。私はとりあえずニコリとして頷いておく。





青田大学の建物はバード大学の建物をモデルにしたらしい。バード大学に来たような既視感を感じながら私は足を踏み入れた。結構大きい大学だからか1棟1棟が大きい建物でかなりの面積を有しているのがわかる。学生達がキラキラとした笑顔で歩いていたり話していたりするのを見かけた。小金沢くんの先導でまずは学生センターのところへ行く。学生センターは門から1番近い所にある為だ。一番近い棟に入り、すぐの所の窓口へ行く。中はとても広く、綺麗だった。少しベージュの床で、壁は塗りたてのように白い。掃除にお金をかけてますと言っているかのような綺麗さでゴミ一つ落ちていない。それでいて、少し古い感じのデザインなので最近壁などを塗り直したのかな?そう思いながら、学生センターの窓口に行く。


「すいません、白雪社の人事部の者ですが」


小金沢くんが窓口にそう話しかけると、窓口の人が


「少々お待ちください」


と言って慌てたようにどこかへ駆け出した。しばらく2人とも無言で窓口の前で待つ。


「お待たせしました。わざわざ忙しい中、この青田せいでん大学へ来ていただきありがとうございます。私はこの大学の学長を務めます、春田 あきらと申します。よろしくお願いします」


窓口の隣のドアから出てきた爽やかな男性。歳はおじさんだと思う。40歳すぎくらいのダンディなおじさんだ。スーツをビシっと来ていて、黒髪を後ろへ撫でつけている。


小金沢くんがニコリと微笑んだ。


「初めまして。白雪社人事部の小金沢と申します。本日はよろしくお願いします」


私も微笑んで、自己紹介をしよう。


「同じく白霧と申します」


春田さんはニコリと微笑んだまま、私たちを案内してくれる。けれど私は見逃さなかったよ。1番最初に私たちを見た時、一瞬だけ眉をあげてたことを。

恐らく、相手をする私たちが思ったより若かったのだろう。そうなると、白雪社は若い人ばかりだということを知らないと推測できる。社員の平均年齢は26歳だからね。


「まずはこの青田せいでん大学の紹介をさせていただきます。本学はアクティブラーニングを主体とした自主的な授業を主に行っております。その代表授業がこちらです」


そう言って、学生センターから右側に歩き出す春田さん。たどり着いた部屋の扉をゆっくりと開けた。


「えー、皆さん、結論は出ましたか?」


中のざわざわと共に教授らしき人がマイクで話しているのがわかる。学生達はそれぞれグループになり何かを話し合っている。


なるほどね。これがアクティブラーニングか。学生達が主に主体となり行う授業。


「このように初対面の人とも組み、話し合いをさせる。青田大学の特徴的な授業です。現在、義務教育にも必要ではないかと検討されている授業内容でもあります」


「そうなんですね」


「はい。学生の自主自立を促すとともに主体的に動く能力、他人との円滑なコミュニケーションの発達を青田大学は主に重視しております。では、応接室までご案内します」


春田さんは扉をゆっくり締め、今度は右側のエレベーターへと行く。エレベーターに乗り、4階のボタンを押し閉まるのボタンを押す。



4階につき、エレベーターを出れば目の前に少し大きな扉があった。


「こちらが応接室になります」


扉が開かれれば小綺麗な部屋が見えた。下には赤い絨毯が敷かれ、白いソファが2つとローテーブルが見える。壁には棚が綺麗に飾られている。青田大学の雑誌や可愛いマスコットが見えた。


「失礼致します」


小金沢くんが一礼して入っていくので私もそれに習う。


「失礼致します」


そもそもこちらが教えてあげる立場なんだから、そんなに下から出なくてもいいと思う。でも、こちらからしてもいい人材をこちらに出して欲しいから、いい印象を持たせるのは大事だと思う。まあ、結局のところ出すぎず出なさ過ぎずってやつだね!


「こちらへおかけになってください」


そう言われ、ソファーにゆっくりと座る。座るにしても寄っかかってはいけない。


「青田大学について何か聞きたいことはありますか?」


「そうですね…、青田大学さんは就職活動に特に力を入れていらっしゃると聞いています。どのように力を入れているのですか?」


小金沢くんがいい質問をした。


「青田大学はセミナーを主に1年の時から心構えをしてもらい、資格取得に力を入れています」


なるほどね。資格があると就職活動に有利だからね。


「私から質問してもいいですか?」


春田さんにそう聞かれ、小金沢くんが私を見た。私は無言で頷いておく。


「どうぞ」


「白雪社さんは新入社員採用の時に面接者のどのようなところを見て、採用しているのですか?」


私はその質問を聞いた時に今までの新入社員採用試験を思い出した。青田大学は白雪社が出来て3年の中で結構応募が来ていた。でも、受かったのは数名だった。春田さんの言葉を意訳すると、どうして今まで応募してきた青田大学の人達は落ちたのですか?と聞いているようだ。


「我社は他の会社と採用形式が違います。まずは、面接試験、その時には自己アピールと質問に対する考え方を見させていただきます。そして、時折抜き打ちで社長自らが試験をしています」


質問に対し、小金沢くんが答えた。


「ほう…抜き打ちですか…。それはどのような内容か聞いてもいいですか?」


春田さんが驚き、さらに質問してくる。小金沢くんは堂々として答えていた。流石、速人が押す新人。


「構いませんよ。内容は面接者が廊下を移動する際に様々なトラップを仕掛け、どのように対処するか見せてもらっています。トラップはペンを落としたり、ぶつかったりなど多岐に渡ります」


「…」


春田さん絶句。ちなみに、このトラップはランダムであって、私の気分次第で変わる。気が向かなきゃ、別の人にやらせたりもするからね。


「これらを踏まえて総合的にいい人が新入社員として入社できます」


小金沢くんがそう締めくくる。


「なるほど…色々とありがとうございました。今後も青田せいでん大学と仲良くしてください」


春田さんが降参とばかりに立ち上がり、お辞儀をした。私達も立ち上がりお礼をする。


この青田大学は有名だから、春野高校でも目指している人いそうだよね。今度聞いてみようかな…。


青田大学に背を向けて歩きながら私はそう考えた。



タイトルに地獄のが抜けていたため、つけさせて頂きました。(9/13)

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