地獄の新入社員選考4
お嬢様が出てくる小説を読んでる結果、ごきげんようが言いたくなってしまいました。というわけで、ごきげんよう、皆様。
今回視点が変わりますが、前半は九条君、後半はバカップルの話になっております。リア充爆発しろ!と思いながら書いてなんていませんからねっ!!!
早朝、白雪社人事部の俺、九条は会議室に来ていた。というか、白霧さんに言われなければ、そんな仕事知らずに普通の時刻に来ていた。
「…来たな」
そう言って現れたのは白雪社7人の小人の1人、発芽茜課長。
「おはようございます」
なんでこんな大物の人が俺の所に来たんだろうなどと疑問を感じながらもぴしっと挨拶をする。
「おはよう。九条…だったか?頼みたいことがある」
「えっと…頼まれるのは大丈夫ですが、なぜ俺なんですか?」
それが疑問だ。俺なんかより上の人なんかいっぱいいるし、なんで7人の小人の1人の発芽課長の頼み事を俺がやることになっているんだ?結構重大じゃないのか?
「風山に頼んだら、忙しいと言われ、お前が名指しされた」
部長!!!!!!
「…な、なるほど」
「で、肝心の頼み事なんだが、今新入社員の選考しているだろ?デザイン系の大学、専門学校の人の書類を分けてこちらに欲しい」
つまり、募集してきた人の中からデザイン系出身の人を分類して第2課に提出しろという仕事だな。
「わかりました。書類を今…」
「書類なら、もうここに置いてある」
会議室の机を見れば、昨日頑張って仕分けした書類がそこに置かれていた。
「ここから抜き出せばいいんですね?」
これをまた1から分類しなおせなんて言われたら俺は少なくとも死んでしまう。
「ああ、デザイン系の書類もきっちり等分されてるとしゃ…ああ、あのやけに元気な部長…名前…人事部の…」
「…風山部長ですか?」
発芽課長が急に顔を顰めて、名前がわからないとばかりに俺を見たので、俺は自分の部の風山部長を挙げる。
まあ、色々とつっこみたいところがあるので、心の中でつっこませてもらう。なぜ、風山部長のはずなのに、しゃという言葉が出てきた!?そして、風山部長の名前は冒頭に出してただろ!?さらに、部長はやけに元気なイメージなのかよ!!!はあはあ、スッキリした。すべてつっこみを終えて達成感を感じた。
「そう、風山部長だ!」
指をパチンと鳴らしてスッキリとした顔で発芽課長が顔を上げた。そして、少し視線を逸らして、口を開いた。
「まあ、そういうことだ。よろしく頼んだ。ボーナスはつけとくから、今日はずっとこの仕事を頼んだ」
「え、ずっと…ですか?」
「このあと、第1課、第3課と他の課にも頼まれるから、よろしく頼んだ」
「え!?…前年度もそんなのありましたか?」
「ああ、前年度は違う奴がやってた」
ある意味地獄のだな。このグループ事に分けたのはなんだったんだ…。そして、今年はなぜ俺なんだ。
「あと、このグループは壊すなよ。面接じゃ、このグループのまんまやる。ただ、有望株などを各課が絞るためにその資料を渡すんだ。資料が戻ってきた時に元の通りに戻せるよう、付箋なども入れとくんだな。あと…お前が選ばれたのは……みだと思うがな。じゃあ、頼んだ」
何故か俺の心の声を読んだように発芽課長が俺の疑問に答え、去って行った。
最後の俺が選ばれた理由だけよくわかんなかったな…。まあ、頑張るか。
~
「お前、危なすぎだろう。しゃ、で止めたのはなんとかセーフだが、その後の誤魔化し方が面白いほど誤魔化せてなかったな。1回、そいつの名前言ったんだから、急に忘れるとかわざとすぎるぞ」
「…仕方ないだろう。他にいい案が浮かばなかった」
会議室から数m離れたところの柱で男女2人が会話をしている。1人は美女で、1人はワイルドなイケメンだ。美女と野獣と呼ばれる2人組は周囲を警戒しながらも話を続ける。
「それに、茜。他にいい案が浮かばなかったって言うのは、良いとして、少し動揺していただろ。1回恥ずかしそうに視線逸らしやがって。あの九条は気づかなかったから、よかったものの、気づいていた奴がいたら、キュン死にしてたぞ」
「…なんだ?妬いてるのか?」
「妬いてなんかいない。ただ、次は気をつけろと忠告したまでた」
ここで茜がふっと笑った。その笑みは女神の如く、ビーナスの如く、あ、女神とビーナスに大差はない!つまり、見ている者すべてが、魅了されるほどの、少し混乱するほどの、美しさだった。茜の背景と前面には綺麗なピンクの薔薇が入る。
「嘘をつくな」
美女の微笑み、すなわち茜のオーラに当てられた進は顔を手で抑えた。
「頼むから、それを他の奴に見せるなよ。そんなの見せたら、俺が……」
「俺が?」
ふと口をつぐんだ進に茜は首を傾げながら聞き返す。その破壊力は言葉に表せない。
「俺が…妬いてしまう」
口から溢れるように出た言葉に茜は一瞬驚いたような顔をし、きりりといつもの顔に戻った。
「…別に他の奴に見せる気は無い」
平常運転のツンデレモードだ。つまり、進の前では見せるけどねが副音として後に続く。
「全く、お前って奴は」
進は嬉しそうに、そしてワイルドに笑った。 2人は仲良く肩を並べて歩き出す。
「そう言えば、最後、九条が選ばれたのはなぜなんだ?」
「社長のお願いと七海と藤堂と夏目と東原と副社長からの怨み」
「…恐ろしいな…」
進は凄く同情的な目をして虚空を見つめた。その相手が誰なのかは想像通りである。
読んでくださり、ありがとうございます。名字に心当たりのない方がいるかもしれないので、ちょっと載せておきます。
七海→書記、藤堂→おじさん、夏目→第5課の亮くん、東原→警備課の純
もしこれでも心当たりのない方は第1話に全員詳しくあるのでそこを参照してください。
もうそろそろ用語解説とか載せようと思っております。




