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地獄の新入社員選考3


 「部長、終わりました」


嵐山君の所から逃げるように書類を速人に持ってきた。速人は足を組み、腕を組み、パソコンを睨みつけていた。 


 「お疲れ。とりあえず、定時になるし、終わりだ。あとは、また明日、同じ仕事をやり、様子見て、進めていくから、よろしくな」


パソコンから目を離さずにそう言う速人。


 「わかりました」


そう言って、私は去る間際に速人のパソコンをチラ見する。…なるほど。他社からの引き抜きか。どうやら、私の会社は結構な有名な会社だと認識されている。事実、仕事ができる面々、浮かぶアイデア。そして、業績。それらを知っているからこそ私の社員を引き抜きたくなる。実際に、何人かが引き抜かれてたりする。でも、引き抜かれたところで彼らが成果を出しているかはわかんないな…。またファザーとかに聞いてみようかな。まあ、聞くというより情報を盗むだけどね。


 「なあ」


速人がふとこっちを向いた。茶色の髪がその際にきらきらと輝く。


 「なんでしょうか」


私は去ろうとする足を止めて振り返った。速人の声が大きいからか人事部みんなの視線がこちらへ向く。


 「社長ってどんな奴?」


…え?それを白霧静が知っているとでも??別に私がばれたわけではないよね?


 「いや、私も知らないです。部長こそ社長をどのような人か知っているのでは?」


 「はあ…。だよな」


ため息をつく速人。どうしたのかと首を傾げれば速人に手招きをされた。疑問に思いながらも行ってみれば、パソコンを見せられた。


 「たまにこういうのが来るんだが、今回は社長のことが書いてあって、こいつは面識あるのかなと」


見せられたのはさっきチラ見した、引き抜きのメール。私が見た時点では見れなかったところが載っていた。


 『先日、私はそちらの社長を拝見いたしました。わが社の社長はそちらの社の社長よりかっこよく、できる男です。ぜひ、興味があればわが社へ来てください。歓迎いたします』


はい。一目でわかります。これはあからさまに嘘!!ダウト!!思う言葉は一つ。なんていう馬鹿な文章なんだ。これに引っかかる人いるのかな…?


 「部長、社長はどうされていると上の方から説明がありましたか?」


 「ん?裏方に徹するだったが」


 「まさにその通りです」


 「ってことは、社長には会ってないってことだよな…思いっきり嘘じゃねえか」


そもそも男と断言している時点でアウトだよね!!


 「…しかし、社長の正体が明らかじゃないのは不安だよな」


 「まあ、それはそうですね…。ですが、社長にもきっと理由があるのでしょう」


私だって好きで顔を出さないわけじゃない。あの7人の小人がうるさいんだもん!あの過保護達め!


 「そうだよな。社長には悪いことを言ってしまった。今のはなかったことにしてくれ」


速人は小さくため息をつくと、仕事を始めた。疲れてるんだなと思いながらも、お辞儀をして、部屋を退室した。



 ゆっくりと、廊下を歩いていれば、後ろから声をかけられた。


 「し…りさん!」


少し息を切らしている感じから、人事部の人だとわかり、立ち止まって振り返った。見れば、九条君がいた。


 「九条さん、どうしましたか?」


一瞬忘れ物をしたのかと心の中で動揺したけど、すぐに九条君のお陰で心配は消えた。


 「あの、もう終わりなんですよね?お仕事」


 「はい。一応、用事を済ませて帰宅しようかと…」


まだ、仕事あって、速人に呼んで来いとぱしられたのかな?


 「あの、俺、きちんと時間には上がるんで、よかったら飲みに行きませんか?同僚があと2人いるんですが」


おお、飲みにか。でも、私、未成年だしな…。一応、上の人の評価を新人さんに聞くのもやりたかったんだよな…。明日も学校だしな。どうしよう。


 「あの、私、お酒飲めないのですが…」


私の言葉を聞いてか九条さんはにこりと笑った。爽やかな顔で笑うから、嫌味を感じない。


 「大丈夫ですよ。お酒はそんなに飲みませんし、ただの雑談です。そして、今が18時なので22時くらいまでですから」


うーん。それなら行ってもいい気がする。今日は学校で、私が人事部にいたのは1時間くらい22時なら帰って、お風呂で23時には寝れるよね。


 「わかりました。行きます」


そう言えば、九条君の顔が綻んだ。花が開花したみたいな感じで本当に驚いた。


 「あ、待ち合わせどうします?」


そんな私の内心は知らずにその顔のままそう言った九条君。私は慌てて表情を隠して答えた。


 「そうですね…会社のエントランスでいいのでは?」


 「そうですね。終わり次第、向かいます。きっと他の社員も一斉にエントランス行くんで混雑しますよね。ですので、エントランスの右端で待ち合わせましょう」


 「わかりました。では、私も用事が終わり次第向かいます。お仕事頑張ってください」


 「はい。では、ありがとうございます」


九条君がそう言ってお辞儀をし、手を振って来た道を戻っていく。私も手を振り、しばらくして、歩き出した。まずは、葉月に今日のことを問い詰めなければ!!



補足:ファザー

白雪社最上階、秘密機器管理室にあるパソコンの1つ。誠が作成したパソコン。最新技術を超えているとアメリカもびっくりするほどハイスペックパソコン。3台で基本1つとなっており、左がソン、真ん中がファザー、右がマザー。ソンは世界のあらゆる情報を集め、マザーは社内情報を。ファザーがそれを統括している。隠密性に優れるため、ハッキングにも使ったりできてしまう。

*詳しくは第45部、現状を解決す!!証拠集め編2で。


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