お土産渡し
社員旅行が終わり、残りの1日を後処理として終え、久々の学校。
「おっはよ!」
そう言って大量の荷物を持ってなつちゃん達の所に行けば、クラスのみんなが目を丸くしていた。
「まこちゃん、おはよ。…すごい荷物だね」
なつちゃんは頬杖をついていたのだが私を見た途端バランスを崩し、今はもうやっていない。
「お土産買ってきたよ!」
「え?どこか行ったの?」
美智ちゃんが驚いたように声を上げた。
「アルバイトで旅館に泊まった」
予め用意していた言葉を言う。
「アルバイトがお泊まり?」
有紗ちゃんは眉を顰めてそう言った。…あれ?なんか変だった?
「まこちゃん、それ風俗とかじゃ…」
やばい…そっちに勘違いされたのか…。恥ずかしくて顔が火照った。
「違う違う!いつもアルバイトやってるお礼にってただで行かせてくれたの!温泉もあったし楽しかったよ!」
ホントは温泉入ってないし、社長だからお金出した方なんだけど。はあ。個室風呂じゃなくて温泉入りたかったよ。
「いいな…そのバイト」
美智ちゃんがふと呟いた。
「ねえ、いいバイトだね」
有紗ちゃんがそう言い、 なつちゃんも頷いている。
あ、お土産早く渡した方がいいよね!
「という訳でお土産渡すね!3人にはこのチョコレートだよ!」
可愛いパッケージがある包装紙に包まれたチョコレートの箱を渡す。全部で16個入っている。
「わあ、ありがとう誠ちゃん!」
美智ちゃんが嬉しそうに笑った。え、笑顔が眩しい!
「美味しそうだね」
有紗ちゃんもクールに言いながら頬は緩んでいた。
「大切に食べるね」
なつちゃんもチョコレートの箱を抱きしめてそう言った。
今の男子の心境はこうだ。俺もチョコレートの箱になりてえ。きっとそうに違いない。ぽかんとなつちゃんを見ている男子がちらほら見えたからね。
「ねえ、クラスのみんなにも買ってきたんだけど全員来てからでいいよね?」
「え?買ってきたの?…ああ、だからそんなに荷物が」
有紗ちゃんが足を組んで色気たっぷりにそう言った。
「あれ、このチョコレートって…西園寺家のグループのチョコレート?」
美智ちゃんがパッケージを凝視してそう言った。
なるほど。西園寺家のか。西園寺家は古くからある伝統的なグループであり、昔は神社を持っていたとか。あ、昔って平安時代とかそういう系だよ?ずっと貴族とかしていたし華やかな生活を送っているらしく、平民を差別するとかしないとかの話を聞いている。書記が言っていたのもこの家のことか。
平民が大企業を作ったのが気に入らないんだろうな。今はベンチャーとか出来てるからそういう観念は時代遅れなのに。
「西園寺家って言えばさ、私達と同い年の令嬢がいるみたいよ」
なつちゃんがそう言って、チョコレートを早速食べていた。
「ああ、マジお嬢さまな令嬢でしょ?ごきげんようとか普通に言うらしいよ」
有紗ちゃんがそう言って、なつちゃんのところからチョコレートをかっさらった。奪われたなつちゃんは眉を寄せて有紗ちゃんを睨んだ。おお、食べ物の恨みか。
「いや、包装とくの面倒だからね。後であげる」
「まあ、それならいいよ」
一瞬険悪なムードが漂ったもののすぐに終わった。美智ちゃんと顔を合わせてほっとしていると、先生が入ってきた。あ、先生のお土産忘れてた。…ま、いっか。
~
昼休み。みんながいなくならないうちに呼びかけて1人1人にお土産を配っていく。受け取った人は硬直しているか、涙を流しているかの二択だった。
…あれ?私ってクラスの嫌われ者…?いや別に買ったからって喜んでもらえるとは思ってないけどさ…。なんか目の当たりにすると悲しいよね。
少し気分が落ち込みながらも昼食を食べる。
「まこちゃん…あのお土産って結構高くなかった?お金大丈夫なの?」
なつちゃんがお弁当のオムライスをつつきながら聞いてきた。
「別に大したことないよ?」
「本当に?」
「それに、喜ぶ顔が見たかったから」
まあ、クラスのみんなは喜んでくれなかったけどね。
有紗ちゃんが唐突にスプーンを弁当箱に乗せ口を抑えた。え?気分悪いの?大丈夫?
心配そうに見ていれば肩が震えている。あれ?笑ってるの?泣いているの?私の言葉がおかしかった?
周りを見ればみんながシーンとしている。え?何?なんか空気が嫌なんだけど…。とりあえず、赤羽くんにお土産渡してこようかな…。逃げたんではない。
「えっと、私お土産渡す人がいるので…」
そう言って、そそくさと教室をでる。教室内がその後ざわついてたのは気のせいだろう。
どこにいるかな…。私のアンテナ的に教室にいる。よし、教室へ行こう。
「失礼します」
そう言って、スカスカの教室でお弁当を食べている人を横切り、勉強している赤羽くんに声をかける。
「赤羽くん」
周囲がざわつく。えっと、なんかごめんなさい。私なんかが勉強の邪魔を…。
赤羽くんの手がピタリと止まる。どうやら数学をやっているようだ。内容的にまだ習ってない二次関数。予習だね。
「…誠?」
赤羽くんが私を見てそう呟いた。そうですよ。誠です。
「これ、お土産!」
私はそう言い、クッキーのバラエティーセットを渡す。
「えっと…どこ行ったんだ?」
赤羽くんはそれを受け取り、じっと眺めながら言った。
「『朝焼け』」
「ああ、あいつが自慢してたのはそれか」
あいつって亮くん?
「クッキー嫌いだった?」
「いや、大好きだ」
赤羽くんはそう言って微笑んだ。周囲の女子がキャーキャー言ってるのが聞こえる。普段笑わない不良が急に微笑んだらそうなるよね。ギャップだ。これは、絶対売れるのに。
「そっか。よかった」
そう言って笑えば、赤羽くんは視線を逸らした。ツンデレなのか、私の笑みがキモイのかどっちだか。
「ちょっとそこのあなた」
赤羽くんを観察しながら思考に耽っていれば、女子の声が聞こえた。げっ…この声は。
恐る恐る後ろを振り返ればMAIがいた。
高いポニーテールに規則に入らない程度着崩した制服。スカートはミニのミニで出した太ももはニーハイで覆われいる。腰に手を当てて私を睨んでいるMAI。相変わらずだな。
「カイトはモデルなの。芸能人なの。芸能人が一般人と仲良くしてると変な噂されるのよ。そういうのはやめてくれない?クラスのみんなも空気を読んでそういうの控えているから」
「そうなの?」
赤羽くんにそう聞けば首を傾げられた。
「ちょっと!無視しないでよ!そもそもカイトが知っているはずがないわ!暗黙の了解だもの!」
声高にそう言われた。MAIに関わられるとか終わったわ。とりあえず、謝ろう。形だけでも。
「えっと、すいません。次からは気をつけます」
「すいませんじゃないの!あなたは今、このクラスの規律を破ったのよ!」
…暗黙の了解なんじゃないの?
「じゃあ、どうすればいいんですか?」
おそらく私の目は死んでいるだろう。とにかく、早くここから出たいわ。自分のクラスに逃げ込みたい。
「土下座よ!ここで土下座しなさい!」
土下座?別にいいけど…。私がモーションに移ろうとすれば赤羽くんがMAIを睨んだ。
「おい、別に俺は」
「あなたの意見は聞いてないわ!」
残念、MAIに被せられましたね。MAIは私を睨んで叫んだ。
「そもそもどうしてあなたがカイトと仲いいの?私は近づくなみたいに言われてるのに!」
あれ?土下座って個人的な恨みも含んでます?え?土下座していいの?腰ちょっと中腰なんですけど!
「もう、怒ったわ!パパに言いつけてやる!あなた、お父さんは何の職業なの!?」
やばい…ついていけない。今まで怒ってなかったのかーい。答える気ないんだけど。じっとMAIを見れば睨まれた。
「お父さんはいないけど…」
「あら、そうなの?じゃあ、お母さんの職業を教えなさい!」
そもそも、社会的抹殺を受けるのにどうしてわざわざ親の職業を教えるバカがいるのだろうか。そして、あなたのお父さんはたかが事務所の社長でしょ。一般人を抹殺する力なんてないと思うけど。でも、睨まれているから正直に答える。これ以上目立ちたくない。
「母もいないよ」
「ふん!そうなの!だったら、あなたはどうやって生活しているのよ!」
MAIが偉そうにそう言った。赤羽くんがばっと私を見た。そう言えば言ってなかったっけ。
「自分で稼いでいるけど?」
「あら、私と一緒ね」
あんたと一緒は嫌だなあ。
「なんのバイトしてんのよ」
たかが一般人のバイトなんてたかが知れている。という表情で上からそう言ってきた。
「いろいろ」
私は正直に答えた。
「ふん、いろいろね。よし、覚えておきなさい!あなたを消してあげる」
お嬢さまな笑い声を上げ、MAIはそう言って去っていった。もう、ボーゼン。呆れて何も言えなかった。赤羽くんは赤羽くんで
「大丈夫か?あいつ」
なんて言ってたし。私も流石に何も言えない。その後の記憶は覚えていない。
気づいたら書記が目の前に立っていた。
「おかえりなさいませ、社長」
とりあえず、ムカツクから殴っといた。
MAIよ。幼稚園児か!Σ\(゜Д゜;)
ふぅ。ツッコンですっきりしました。そして、書記どんまい。




