アイドル同級生
マーケティングを開始し、メモリアルの話に移り、今度はなつちゃん達の中学の話になった頃、扉が開いた。
いや~、しょっちゅう開いてたよ?でもね…今度のはなんか違うんだ。周囲の人がザワザワしてる。
なんだ?なんだ?となつちゃん達と言っていると、キャーという女子の黄色い声が上がった。全くわからめ。なにがあった。
ふと、立っていた有紗ちゃんがあっ、と呟いた。
「え?何だったの?あーりん」
なつちゃんが不思議そうに有紗ちゃんを見た。有紗ちゃんは目を泳がせて真っ赤な顔で言った。
「うちのクラスにアイドルがいる」
「「「え!?」」」
私も思わず驚く。うちの事務所の人じゃないはずだよね!?
「誰?誰がいるの!?メモリアル!?」
美智ちゃんが興奮したように言った。
美智ちゃんよ…。彼らは私立の芸能学校に通ってるよ。
「オクロックの日向…」
有紗ちゃんは視線を黄色い歓声の中心に向けている。
「ファンなんだよね…」
オクロックかぁ~。うちも贔屓にさせて貰ってるよね~。亮くんは目つけてて、
「オクロックの事務所のスカウトの目が良すぎる!」
って羨ましがってたよね。オクロックの日向って言えば、金髪に少しつり目で笑顔が優しい王子様系だった。うちは、お願いして結構コラボしてもらってる。その時、スタッフとして入ってたんだけど…凄いクールで無口だった記憶がある。
「行ってくれば?」
なつちゃんがそう言って、有紗ちゃんを促す。有紗ちゃんは嬉しそうに頷いて、人だかりへと入って行った。
「…まさか、アイドルがこんな県立にいるなんてね」
美智ちゃんが信じられないように言った。
「偽物なんじゃないの?」
なつちゃんはそう言って、冷めた目で人だかりを見ていたけど、いきなり人だかりが閑散とし始める。
おお、巻いたのか。そう思って視線をなつちゃんに向ければ、なつちゃんは顔を真っ赤にして、日向を凝視していた。
「ヤバイ。私、オクロック知らないけど日向に惚れた」
「え?まじ?」
美智ちゃんが驚いたようになつちゃんを見ている。私も同意見だよ。
「あ、アタックしてもいいのかな?」
「別に…まあ、何か言われなきゃいいんじゃない?」
なつちゃんの言葉に美智ちゃんは戸惑いながらも答えた。…どうやら、なつちゃんはかなりの肉食女子みたいです。
「絶対落とす」
そう言ったなつちゃんの目は凄く輝いていた。南無南無。日向、お粗末。
「が、頑張ってね。なつちゃん…」
私は心の中で日向に合掌しながらそう言った。なつちゃんはニヤリと笑って、ありがとうと言った。おおお、恐るべし。
それにしても、日向が同級生でクラスメイトなんて…。大丈夫だよね?バレないよね?スタッフとしていたけど変装してたし、気づかないよね?
凝視し過ぎたのか、ふと、座って携帯を弄っていた日向がこちらを見た。そして、驚いたように固まっている。
「ねえ、なつちゃん、日向がこっち見てるよ!」
「え?マジ!?」
…なるほど。なつちゃんの視線に気づいたのか。なつちゃんが可愛くて一目惚れって所かな?罪だね~、なつちゃんも。
そう思ってワイワイしていると、教室のドアが開いた。
「HR始めるぞー」
ここでクラスの女子が黄色い歓声をあげたのだ。やって来た先生は超イケメンだった。