お疲れ様です
本日2回目投稿です。
「赤羽くん?どうしたの?そんな疲れて」
「…MAIが」
君も被害者か。
私は心の中で赤羽くんに合掌した。
今現在私たちは屋上にビニールシートを敷き、ご飯を食べている。
屋上のフェンスにもたれかかって黄昏ていた赤羽くん。昼食を購買で買ってここで食べようとしていたらしい。
私は念のためビニールシートを持ってきていたので敷き、彼にも座ってもらい、弁当を開けて食べ始めた。それを見た赤羽くんはため息をついて焼きそばパンを食べ始める。
そして、最初のセリフになった訳だ。
「…MAIがどうしたの?」
一応聞いてみる。赤羽くんは苦虫を噛み潰したような顔で答えた。
「うざい」
「…」
分かるよ。男の人にとってはそうだろうね。たまにMAIの仕事現場にスタッフとして働いて偵察してきてって亮くんに言われて働くんだけど、男性、特にアイドルや俳優へのMAIの態度。ぶりぶりのぶりっ子なんだよね。魚のブリもびっくり並みだよ。それを笑顔で躱そうとするアイドル、俳優さん達。残念、彼女は蛇です。1度ターゲットロックオンしたら何しても絡みつきます。赤羽くんにもきっとそうなんだね。
少し憐れみの目を向ける。
「…なんだよ。その目は」
赤羽くんが食べるのを止めて私を睨んだ。
「いや、なんでもないよ」
「どう見てもありまくりだよな?」
ツッコミが入るが、無視。
はあ…。
赤羽くんがため息を吐いた。
「どうすればあの女撒けるんだよ…」
独り言ですか?そうですよね?私に聞いてないですよね?
赤羽くんがチラリと私を見た。
「なんで私に聞くの!?」
え?今の私は普通の女子高生!MAIの事なんてモデルぐらいにしか知らないよね?そういうの聞かれても困るかな?
「いや、お前ならなんか知ってそうだなって」
「どうして!?」
ちょっと待って。私、普通のJK!赤羽くんは何かのエスパーですか!?
赤羽くんが真剣な顔で口を開いた。
「だって、俺をモデルにしたのはお前だろ?俺がMAIに絡まれているのも元はお前のせいになる。責任取れ」
確かに…ぐうの音も出ない。
亮くんとの会話を思い出す。
『社長。お願い。MAI主演の映画のスタッフやって』
『え?また?MAIやだ。女子に当たり厳しいし、男子にはねちっこいし』
『はあ…。MAIの対処法を教えてあげる』
『え?亮くんもMAIに言い寄られたことあるの?』
『…いっぱいあるよ。MAIは無視しても追っかけてくる。そんなMAIが関わって来なくなるのはお前の父さん…』
『お前の父さん?』
MAIのお父さん?
『ヅラなんだって?ってボソリと呟くんだよ』
『MAIのお父さんヅラなのか…』
『MAIはファザコンでもあるから、父親がヅラなのを気にしているのを気にしている。だから、MAIはそれを言うと絶対に誰にも言わないでと言ってくる。そこで、その代わり関わらないっていうのを約束すれば守ってくれるよ』
『それって…言ってよかったの?』
『ヅラのことは俺はこっそり調べて知っただけ。MAIに関わるなみたいな事も言ってないし、MAIは俺が知っているのを知らない。誠がもし嫌がらせとかうんざりしたりしたらそう言いなよ』
『…ありがとう』
『別に、仕事のためだし。』
ということがあったな。
「MAIにこう言うといいよ。お前の父さんヅラなんだって?って」
急にそう言った私に驚いて目を見開く赤羽くん。
「そう言えば、MAIは絶対にその事を言わないでって言うみたいよ。その代わりに関わらないでって言えば、絶対に関わらなくなるって」
「なんだ…それ」
「まあ、とにかく信じられなくてもやってみるといいよ。言ったら、きちんとMAIとの約束は守りなよね」
偉そうにそう言って、卵焼きを食べる。
あ、おいし。
赤羽くんは視線をあちこちにやって口を開いた。
「分かった」
「私もあくまで伝聞だから実行したことないし、本当かどうかはわからないけどね」
「いや、ありがとう」
衝撃だ。赤羽くんにお礼を言われた。赤羽くんをマジマジ見れば、ほんの少し頬が赤くなっている。
照れてるのか?これは照れてるのか?
「おい、そんな見るなよ」
赤羽くんがそっぽを向いた。
「いや、その感じ、ますます売れる予感」
「…」
無言で睨まれる。
いや、さっきの照れは写真集の中に1枚入れとけば確実にギャップ萌えのファンが増える。ワイルドイケメンの照れシーン。売れる匂いがプンプンする。
「さっきの表情は写真撮影でするべきです」
真面目な顔でそう言えば、頭にチョップされた。
くそ…金の匂いがするのに。
5/15微修正




