高校入学式前のマーケティング(笑)
続きです。ここから社長目線です!
「ここが、県立春野高校か…」
私の目の前には大きな建物が広がっている。ざっと見たところ小学校の時の校舎と同じ感じ。バード大学のような赤レンガのカラフルな感じでなくシンプル。今の現在地は校門前である。
多くの学生が突っ立ってる私の横を通り抜けていく。男子は青いブレザーにチェック柄のズボン、黒いネクタイ、女子は青いブレザーに無地の紺のスカート、赤のネクタイ。
「よしっ」
息を吸って踏み出す。
そう言えば、勝手に入学手続きして怒られたな…。まあ、仕事も学校も両立させるし、マーケティングにもなるし、絶対行きたかったから何言われても聞かなかったけどね!まあみんなもそう思ったのか最終的に約束として私が社長という事をバラさないで通う。バレたら退学ということに落ち着いた。まあ、バレないでしょ。そもそも社長は名前も性別も年齢も明かしてないし。葉月の名前の方が知られてるしね。入試だってオール65点にしたしね。
フフフ、私に隙無し。
さーて、さーて私は何組かな。クラス割りが貼ってある前まで来た。人で溢れかえっていてよく見えない。少し飛んで見てみれば2組でした。2組!最初でも無いし、最後でもない。至って普通の!これは幸先いいよね!クラスに着いたら早速マーケティングを開始だね。
校舎の中は普通だった。小学校と同じ感じで。そして、2組の教室を恐る恐る開ける。
一瞬教室のみんなが私を見るけどすぐに目線を戻した。とけ込めてるっぽいね!その中で何人かはチラチラと私を見てるけど…話したいのかな?
とりあえず、黒板の座席表を確認して席に荷物を置く。
「こんにちは!!」
そうしたら後ろの席の子が話しかけてくれた。明るそうな子だ。ボブのカットに、前髪に花のピンを付けている。あれ?このピンうちのじゃね?
「こんにちは!!今日から色々宜しくね!白雪 誠って言うんだ」
無難な挨拶を返してみる。我社のピンを使ってくれてる子ははにかみながら自己紹介をしてくれた。
「私は須川菜摘。なつって呼んでね!まこちゃんって呼んでいい?」
超可愛い!だからもちろん頷いた。
「私さ、隣の地域の中学出身なんだ。まこちゃんは?」
「私?私は少し遠いかな」
中学の事を聞かれた私は窓の外を見ながらバード大学を思い出した。中学の歳に通ってた訳じゃないけど、別に中学扱いでいいよね。
私の様子を見たのか、なつちゃんはそれ以上は何も聞かなかった。
そこへ、2人女子がやって来た。
「なつっ!良かった!同クラだね!」
「あーりん!これからよろしくね!」
「なつっ!私もだよ!」
「みっちゃんもよろしく!」
どうやらなつちゃんの友達らしい。
「あっ!まこちゃん。紹介するね。私と同中の下山 有紗、通称あーりん。で、こっちは山田 美智、通称みっちゃんだよ」
「白雪 誠です!よろしくね!」
なつちゃんに紹介され、2人に挨拶。っていうか、みんな美人だわ!
「白雪さん、よろしくね!!」
そう言った有紗ちゃんは黒い髪を胸元まで伸ばし、少し巻いていて色気がある。
「よろしくね!誠ちゃん!」
美智ちゃんはストレートの髪で有紗ちゃんと同じくらいの長さ。こっちはヤマトナデシコって感じ!早速マーケティングを開始しよう!
「ねえねえ、なつちゃんの前髪のピンって可愛いね!」
よし、何もピンのこと知らないふり!
商品☆ フラワーピン
白雪社 第2課の案を少しアレンジして、私が採用した商品。売れ筋はまあまあ。色んなカラーバリエーションに虹やグラデーションを多用し、100は種類がある。そのため、個性が出しやすいという評価を得ている。
さあ、なつちゃんはなんて答えるかな?
「ありがとう!これね、私のお気に入りなんだ!オレンジのグラデーションが可愛くてお気に入り。最近は自分でキラキラを散りばめたりするアレンジが流行ってるんだよ」
ありがとう!親切に色々と!
つまり、そういうアレンジが流行っているってことは売れ筋はいいって事だよね!
「そうなんだ。どこで買ったの?」
「ツリーっていう店だよ」
ツリー … 茜が手がけたお店。服屋。最近は
雑貨にも進出している。
「へえ~!」
「そう言えばさ、ツリーって言えば白雪社だけど、雑誌見た?」
有紗ちゃんが口を開いた。
あっ、そう言えば、白雪社の出版雑誌、アップルは売れ行きいいよね~。多分、茜がモデルやってたり、亮君プロジュースのモデルが出たり、葉月がビシッと決まってたり、なぜか人気のおじさんが出てたりするからだと思うんだよね。
「え?なになに?見てない」
「なんか、亮の大きなプロジェクトが始動するらしいよ!」
「「まじ!?」」
有紗ちゃんの言葉になつちゃんと美智ちゃんが反応する。
うんうん。知ってるよ~。新しい男子アイドルユニット作るんだよね。なんかめぼしいのが4人いたって言ってたから、4人組のユニットらしい。ちなみにニューシングルは亮くんが作曲して私が作詞~。
…って亮くんはどうして私にばっかり作詞させるかな~。唯一の救いは作詞の名前の欄が社長ってなってる所だけど…。たまに作曲も依頼してくるけど、社長って結構仕事多いんだから自重して欲しいよね。
「それは楽しみだな!」
「私、メモリアルにハマっちゃってさ!亮の思惑にハマってるんだよね!」
メモリアル。それは男性5人組のユニットである。お決まりの挨拶セリフは
「今日という出会いを君の記憶に刻むぜ」
である。これは、私と亮くんが悩みに悩み脳細胞を使いまくったせいでハイテンションとなり、決まった名前とセリフだ。
なんか…もう…2人の中では黒歴史として扱われている。ううう、こんなセリフ履かせてゴメンよ。メモリアルのメンバーさん…。言われたファンは嬉しくて恥ずかしいだろうけど、言ってる本人達は死にそうな程に羞恥心を抱いてるよ。ステージ終わったあと、たまに裏見るけど、死んだ魚の目してるもん。
ほんとに、なんで売れたんだろう。メモリアル。
「あれ?まこちゃん?」
遠い目をしていたのか、なつちゃんが顔を覗き込んでくる。
「え?あ、何でもないよ!ただぼうっとしてただけ!」
「そっか」
「あ、あのさ美智ちゃんはさ、なんでメモリアルにハマったの?」
「あ~。あの、メモリアルのセリフあるじゃん?あれ、カッコよすぎて!!」
そう言った美智ちゃんの顔は真っ赤だった。
そして、私はそれを聞いてなぜか、メモリアルのメンバーが青ざめた顔をしているのが浮かんだ。
…どうしてこうなった。
「えっと、他は?」
「他?うーんとね、衣装…かな?あの、白い軍服みたいなカッコイイ王子様みたいな服がいいよね!」
その衣装はせめてもの償いとして、私と茜と亮くんで共同開発したものです。せめて、彼らがそのセリフを言いやすくなるように。
「異世界の人間みたいに衣装しちゃえば、きっと現実感なくて、メンバーも割り切れる」
亮くんがそう言って、彼らに渡した。受け取った彼らは悲壮な顔をしていたが、それを着て仕事だと割り切っている。だからなのか、俳優をしてみようとなった時、全員美味かった。もう…俳優顔負けの演技。
「そうなんだ!」
私は他人事のように割り切ることにした。
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