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誠の休日、第1課

ドタバタした学校生活一週目が終わり、社長としての土日2日間が始まる。


今日の私は、茶髪で一つに髪を結った鬘を被り、黒い四角フレームの眼鏡、黒い真面目に見えるスーツに身を包み、書記に自宅から会社まで運んでもらう。


…いつも迎えいらないって言ってるのに。何故迎えに来るんだ。書記よ。


会社に到着し、書記と別れ、玄関ホールから入って、いつも使っている社長専用エレベーターではなく、反対側の社員エレベーターに乗る。その前に本人確認ゲートを通り、社員カードを警備員に見せる。それでようやくエレベーター。


エレベーターからいつも朝議をやる階で降り、朝議をする部屋へ向う。そして、扉を勢いよく開ける。


「おっはよー!」


見れば、私が最後だったらしい。駐車場に車を置きに行った書記も何故か席についている。


「社長、2秒遅刻です」


おじさんが真顔でそう言った。


謝りながら席につけば、葉月がいない。また、お寝坊なのかな。


「じゃあ、早速だけど朝議を始めます。今日と明日は私は臨時社員の白霧しらぎり せいとして仕事をするのでそのように対応してください」


そう言えば、社員達は了承したと頷く。


「では、第1課から…」



「では、本日の朝議は終了します。本日、第2課は新コスメのプレゼンテーションを行います。副社長に原稿は渡してありますのでよく打ち合わせて成功させてください」


書記が口を開いて、第2課を見た。茜が嫌そうに頷いた。葉月…来なかったな。


そして、朝議がお開きになり、それぞれ仕事場へ。私は第1課の臨時へ。


おじさんと一緒にならないように、間を開けて部屋を出る。


「いってらっしゃい、社長」


書記が涙ぐんでそう言った。そんなに私が仕事に行くのが嫌なのか。


第1課は食に関する課である。


そのため、清潔をモットーに第1課はとても清貧な様子になっている。社員も心無しか女性が多い。


「みんな、おはよう」


ふと、おじさんがおじさん専用の仕事部屋から出てきて、甘い微笑みで挨拶をした。


「おはようございます!課長!」


「朝からお美しいです…」


「課長!素敵ですね!」


キャーキャーと囲まれる課長おじさん。私は軽く会釈して、自分がいつも座る席に着く。早速仕事だ。


私は、第1課の仕事と同時に監視も請け負っている。社員の様子を見て、サボっている人がいたら私の判断で首にできる。過去に何人かはそうやって会社を首にされた。


さて、最初の仕事は新しい事業…ファミリーレストランの企画案か。


第3課は既に設計を書き終わっていて、図案が出ている。見た感じ、家族団らんを重視している作りだ。ってことは、お子様ランチとか凝っていた方がいいよね。


心理学とか使って誰もが寛げるようにするといいよね。これは社長として言おう。料理は、王道からアレンジまで入れるべきなんだよね。


「あ、白霧さん。その企画、あまりにも幅が広いので、分担しているんですよ。白霧さんはこのサンドイッチ系をお願いします」


ふと、隣の席の織田さんが教えてくれた。ショートカットに黒い眼鏡、以下にもOLエンジョイしてます風の優しい女性だ。


ちなみに我社は8個の机を給食風にまとめている。


「ありがとうございます」


お辞儀をすれば、いえいえと返され仕事に戻る織田さん。人を重んじ、仕事熱心。素晴らしいよね!社長の権限で給料増額してあげたい!


…まあ、やったらおじさんに睨まれるだろうけど。おじさん、給料については厳しいもんな。


改めて、辺りを見回す。私の付近は…あ、あの女の人マニキュア塗ってる。仕事やれ。仕事を。


「やっぱりプリンスカッコイイよね」


「だよね!まだ若いのに上の方の人だし。超優良物件だよね!」


「やば!私、狙ってみようかな…」


「そしたらライバルだね!」


ヒソヒソと小声で会話が聞こえる。


おじさんんんん!?狙われてますけど!?


彼女達は見たことないので、おそらく新入社員である。後でおじさんに告げ口してお灸を据えねば。


いけない、いけない。仕事、仕事。


えっと、サンドイッチ系か…。ベーコンサラダでしょ、玉子でしょ、カツでしょ。

とりあえず、種類を挙げていく。


そう言えば、サンドイッチって手づかみなんだよね。なんか前に爪楊枝とかで刺してあるの見たことあるな。それを可愛いデザインのやつにして…。


ざっと絵を書く。仕入れるならどこが良いかな?パンは白雪社の特製食パンにしよう。具材も白雪系列が安全かな。そうすると、白雪牧場でほとんど手に入るね。野菜は地産で提案してみよう。


サンドイッチをいくつか書いて、その隣に原材料、調達に関することを書く。よし、こんなものかな。さっさとおじさんに預け、次の仕事場へ向かおう。


立ち上がれば、織田さんが私を見た。


「…相変わらず、仕事早いですね。白霧さんは」


「…ありがとうございます」


ここは褒めて貰ったので無難にお礼を言い、おじさんの所へと向かった。



扉の前で3回ノック。コンコンコン。


「白霧です。課長」


「入れ」


許可が下りたので扉を開ける。両脇は仕事のファイルの本棚に囲まれ、ブラインドを背にして書類を書いているおじさんがいる。


「課長。仕事が終わったのでご確認を」


そう言えば、おじさんは顔を上げて私の手にある書類を受け取る。パラパラと紙をまくる音だけが響く。


「…いいな」


おじさんが口を開く。


「ありがとうございます」


「これで第1課の仕事は終わりだ」


「お疲れ様でした」


「それで…どうでした?」


おじさんの言葉が敬語に変わる。これは、社長の私から見ての仕事場の事だ。


「マニキュア塗ってる人がいましたよ。今度やっていたらクビにします」


そう言えば、おじさんが抜の悪そうな顔をした。


「それは…注意しておく。あとは?」


ん~おじさんが狙われてるのは…話さないで良いかな?めんどくさいし。


「会話していた人もいたからそこはよろしく。じゃあ、私は行くね」


おじさんよ…。強く生きろ。


そして、私はおじさんの言葉を聞く前にそそくさと退室した。


めんどくさくて逃げたんじゃない。



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