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10年ごしの引きニートを辞めて外出したら自宅ごと異世界に転移してた  作者: 坂東太郎
『第八章 開拓団長ユージはパストゥール領ホウジョウ村村長を兼務する』

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第五話 ユージ、水場とため池造りに取りかかる

「よーしアリス、この辺にしようか!」


「うん、わかったユージ兄!」


 ユージが家に戻ってから三日目。

 異世界に来てからは4年目の夏のこと。

 ユージとアリス、コタローは家の南西、獣人一家のテントの近くにいた。


「よし、ここなら家から水も届くしオッケーだな! じゃあアリス、よろしく!」


 どうやらユージはここに水場を造るつもりのようである。

 造るといっても、アリスの魔法に頼るだけのようだが。仕方あるまい。人間重機と化しつつあるユージよりも、アリスの土魔法で地面をへこませたほうがはるかに効率的なのだ。魔法幼女さまさまである。


 コタローは、そんな二人のやり取りを見守っていた。木製とはいえ柵ができたこと、人が増えたことで柵の内側の警戒はゆるめになり、最近はこうして二人について歩くことが増えていた。


 いまや開拓地には、ユージとアリスとコタロー、獣人一家、元3級冒険者パーティの夫婦、斥候、盾役、木工職人のトマスとその弟子二人、6世帯12人と一匹が住んでいるのだ。さらに、早いうちに針子も含む一世帯。そしていずれ鍛冶職人たちとケビンも居を構えることが予定されている。確定しているだけで9世帯、人数にして20人弱。

 ケビンのアドバイスを受け、まずはユージの家の水道を利用した水場と溜池を造るべくユージは動き出したのだった。いや、アリスとコタローは動き出したのだった。



「よーし、土さん、たくさん下にいってー!」


 アリスが両手を上げ、振り下ろしてペチッと地面を叩く。


 直径にして3メートル、深さ2メートルほどの円形に地面がへこむ。アリスの位階が上がったことで、どうやら火魔法同様に土魔法の威力も上がっているようだ。


「すごい、すごいよアリス! これならすぐに造れそうだ!」


「えへへー、ほんと、ユージ兄? アリスすごい?」


 締まりのない笑顔でニコニコとご機嫌なアリス。はしゃぎまわるのは抑えているが、褒められるのは単純にうれしいようだ。お姉さんぶっていてもしょせん8才であった。ちょろいものである。いや、褒められて喜ぶのに年齢は関係ない。アリスはすでに乙女なのだ。もっとも普通の乙女に魔法は使えないが。


 コタローはわんわんっとアリスの周りを駆けまわっている。すごいわありす、と褒めているようだ。それはまるで妹の成長を喜ぶ姉のようであった。犬だが。


 ユージは持ち出したバールのようなものを手に、地面に線を引いていた。この辺には水瓶を置いて、あふれたらこの辺に溜めるからここまで地面をへこませて、と呟きながらガリガリと線を引いている。アリスに大穴を造らせ、水瓶を置く場所はユージの奴隷の犬人族のマルセルに整備をお願いするつもりのようだ。役に立たない男である。いや、自分は動かず指示することに挑戦しているのかもしれない。なにしろ開拓団長なのだ。ユージだが。


「よしアリス、じゃあ次はこの辺だ!」


 ユージの言葉に、はーい! とアリスが両手を上げて返事をする。素直ないい子である。


 こうして、ユージの家の水道とホースを活用した水場と溜池は、三日間という驚異的なスピードで完成するのだった。アリスの活躍で。



  □ □ ■ ■ □ ■ ■ □ □



「おお……。嬢ちゃん、すげえんだな……」


 完成した水場のまわりに、開拓地に住む全員が集まっていた。

 全開にした水道から、ホースを通してドボドボと瓶に水が注がれ、あふれた分は溜池となった大穴に流れ込んでいる。

 元冒険者パーティのリーダーを筆頭に、集まった一同が口々にアリスを褒める。ニコニコと得意気な笑みを浮かべるアリス。コタローもご機嫌な様子である。


「ええ、アリスはすごいんですよ。それで、水はひとまずこれで大丈夫ですかね?」


「そうですね、ユージさま。ただいずれ人が増えることを考えると、早いうちに川と繋ぐか、井戸掘りに取りかかったほうがいいと思います。どちらも時間がかかりますから……」


 パタパタと嬉しそうに尻尾を振る犬人族のマルセルが、ユージにそんなアドバイスをする。開拓地を大きくする場合、生活のため、農業のため、いくらでも水は必要になるのだ。いかにアリスの魔法が優秀とはいえ、用水路造りも井戸掘りも莫大な時間がかかる。それを踏まえてのマルセルの言葉だった。あと5年程度で自分を買い取ることが見えてきたマルセルだが、開拓地の先のことを考えてアドバイスを送っていた。どうやらこの地に愛着がわいているようだ。


 マルセルの横にはその息子、犬人族のマルクがいた。お父さんとお母さんとアリスちゃんを守るんだと決意して訓練をはじめたマルク。顔つきは凛々しさが増したようだが、体つきは変わらぬままだった。二足歩行するゴールデンレトリバーである。アリスが魔法で溜池を造ったと聞き、少し悔しそうな表情を見せていた。自分があまり役に立っていないのでは、と考えているのだ。真面目な男の子である。


「そうですよねえ。この溜池も、排水をどうするかっていうのもありますし。柵造りは一段落しましたし、これからはトマスさんと元冒険者のみなさんは家造り、マルセルたちは農作業、俺とアリスとコタローは用水路造りに取りかかりますね。もちろん誰かが大変なときは手伝う方向で」


 ユージの言葉に、はい、うーす、わんっ、などと口々に了承の言葉を返す一団。

 曲がりなりにもユージは開拓団長として機能しているようだ。

 そしてこの開拓団、さりげなくコタローが返事をしていることにはもはや誰も突っ込まない。慣れとはおそろしいものである。


 ユージの家から川まで、森を歩いておよそ一日。

 こうして、掲示板住人たちの暴走を他所に、ケビンが針子を連れてくるまでユージは用水路造りという大事業に取りかかるのであった。



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