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メランコリック・バレンタイン 2 <佐倉side>



 好きと自覚して、黒沢君のおかげで花火の大会で告白して付き合いだした私と紅谷さんだけど。社会人と学生という壁は意外と大きくて、とにかく会える時間がほとんどない。

 紅谷さんは社会人二年目、マネジャーとしても多くの仕事を任されているし、私は今年大学四年で卒論に就職活動がある。

 ほとんど休みのない紅谷さんに、私が予定を合わせる感じになるけど、月に二、三回しかない休みを毎回私の予定で潰すのも申し訳なくて、月に一度会えればいい方ってカンジだった。

 もちろんクリスマスもなし。いちお喫茶店の稼ぎ時だし?

 私もバイトだったからお互いさまってカンジで、仕事あがりの二十五日の夜に、二人で少しあってケーキ食べたくらい。あっ、これってクリスマスやったってことなのかな?

 とにかく、なにが言いたいかって言うと、紅谷さんはあまりイベントごとに興味がないっていうか……

 だからね、もちろん二月十四日だって仕事なんだって。一月の後半になってシフトが出されて、そうメールで言われた。私はもちろん……バイトは入れてないけど。

 仕事なんだから仕方ないとは思うし、もう両思いなんだから、片思いの時みたいにこの機に告白しよう! みたいな勢いもないし? でもさ、女の子にとってバレンタインデーってクリスマスの次に大事なイベントじゃない?

 やっぱ、手作りのチョコを贈って、愛を伝える日じゃない?

 まあ、十四日に渡せないのは妥協して、それでもチョコは渡すことを決める。

 紅谷さんってさ、カッコイイ上に優しいから、モテモテじゃん? バレンタインデーも女の子からいっぱいチョコもらいそうじゃん?

 だからこそ、彼女として頑張らなきゃって思うわけですよっ!

 そんな意気込みで買出しに行き、紅谷さんと会う約束をしている前日にチョコ作りに励みましたっ!

 チョコケーキにしようか迷ったけど、雑誌で作り方を見つけた石畳チョコ?――まあ、生チョコですよ――を作ることに決定。

 ふっ、まあ、家政科部の手にかかればこんなものねっ。不敵に鼻を鳴らしてひとりごちる。

 っということで、明日二月一日は約一ヵ月ぶりのデートなのです。

 付き合いはじめて半年ってことも含めて、ドキドキして眠れない夜を過ごす。それなのに……急きょ仕事だなんて、恋の神様はなんて意地悪なんだろうか……

 バイトの子が無断で休んでその穴埋めで紅谷さんは出勤。

 チョコを渡すぞって、何日か前からテンション上げてたのに、気分は一気にどんより曇り空ですよ……

 仕事って言われたらね、仕方ないって諦めるしかないじゃん……

 聞きわけ悪いとか思われたくないし。

 でも、いまこんな調子で、これから先、私と紅谷さんは大丈夫なのかなって不安に襲われる。

 三月には大学卒業して、四月には私も紅谷さんと同じ会社に就職して社会人。でも、同じ会社って言っても、最初は本社研修があるし、あちこちに店舗を構える大手チェーンの喫茶店、紅谷さんと同じ店舗に配属される可能性は極めて低い。

 もし同じ店舗に配属されたとしても、シフトは違うだろうし、学生みたいに暇ではなくなるだろう。今以上にすれ違いになりそうで、正直不安だった。

 ほら、四月危機っていうじゃん……

 はぁーっと大きなため息をついて、私は思考から不安を追いだす。デート用に気合い入れてしばった髪を解いて、コートを羽織って駅に向かう。

 会えないって言われたけど、いちお手作りだし、そんなに持たないだろうからと、紅谷さんにチョコだけ渡しに行く。

 ちょっとお店に行くか迷ったけど、お店に行って迷惑かけるのは悪いと思って、紅谷さんのアパートに向かった。

 紅谷さんのアパートはドアポストの他に、アパートの入口にポストがあったから、そこに入れればいいかなっと思って。

 チョコとメッセージカードを入れて、そのことをメールで伝えて、家に引き返した。

 あーあ、はじめての彼氏とはじめてのバレンタインなのに、当日会えないどころか、チョコさえ手渡し出来ないなんて、なんて憂鬱なんだろう……




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