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恋をあきらめたその時は・・・  作者: 滝沢美月
続編『きっと恋が始まる、その瞬間』
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第7話  合コン <佐倉side>



 友達の亜美に飲みに行こうと誘われて、女友達四人で居酒屋にしてはお洒落な場所に連れて行かれた。こんなお店もあるんだなって感心して、案内された席には……知らない男性が四人。

(えっ、何、どういうこと?)

 亜美に耳打ちすると。

(合コンよ)

 ってあっさり返されて……唖然とする。

(もも、最近失恋したって言ってたでしょ。失恋には新しい恋よ! だから、合コン! バイト先の先輩に、イケメン揃えてもらったから!)

 そう言ってウインクした亜美は。


「こんばんは~」


 可愛らしく会釈して座る。他の二人はちゃんと合コンって知ってたみたいで。

(ホント、みんなカッコイイ~)

 そう囁いてるのが聞こえる。

 一人、立ちつくしてた私の服を亜美が引っ張る。


「ほら、ももも座りなよー」


「う、うん」


 頷きながら、向かいに座る男性に視線を向けると、確かにみんなカッコイイ人達だった。


新庄(しんじょう)のバイト仲間の吉田(よしだ)です。こっちは、俺の大学時代のサークルの仲間」


 新庄とは、亜美の名字。亜美の言ってたバイトの先輩ってことかな。整った顔立ち、サラサラの少し染めた髪が頬にかかって色っぽくて、王子様がいたらこんな感じかなっていうくらいの美男子。


真駒(まこま)です。吉田先輩の大学の後輩で、今四年生です」


 そう言ってにこっと笑ったのは、四人の中では小柄な、でも百七十くらいはあるのかな。癖のある髪、くっきりした二重の瞳、ふっくらとした唇が女の子のように可愛いくて、少し幼さの残る美少年。


中原(なかはら)です。俺も大学の後輩で四年」


 少しぶっきらぼうな話し方だけど、何かスポーツをやってるって分かる逞しい体格、短めの髪、ノンフレームの眼鏡の奥の瞳は切れ長で優しそうな雰囲気。


柳沢(やなぎさわ)です。吉田とはサークルが同じで、今は建築現場で働いてます」


 長く後ろでまとめた茶色い髪が少し暑苦しい印象だが、 顔の彫が全体的に深くて格好良く、気さくな雰囲気を漂わせている。

 自己紹介を終えて、最初のお酒が運ばれてきて乾杯を済ますと、それぞれ好きに話しだす。席順的に、中原さん、柳沢さん、亜美と私の四人で会話し、ひたすら話し続け色んな話題を話す柳沢さんに対して、中原さんは無口で相づちを打つだけなんだけど、そんな二人でちょうどバランスが取れてて、おかしかった。


「亜美ちゃんとももちゃんは何学部なの?」


「家政学部です。健康栄養学科っていう」


「へぇ~、女の子っぽい!」


 おどけて言う柳沢さんはとても話しやすい。


「女の子っぽいんじゃなくて、そうなんですよ。だって女子大だし」


 亜美が笑って言う。


「おっ、女子大生。いい響きだね~」


 その言葉に、私も亜美もくすくす笑う。


「柳沢さんと中原さんは何学部なんですか?」


「俺は工学部の建築学科」


「工学部、機械学科」


 にこにこ答える柳沢さんに対して、簡潔に答える中原さん。


「二人とも工学部なんですね」


「そう! 工業大学だから女子は少なくて……しかも、今の職場も女子はパートのおばちゃんだけだからねー」


 あっ、おばちゃんは女子じゃないか?

 そう言ってわざとらしく肩を落としてがっかりする柳沢さん。


「先輩、仕方ないっすよ。工業大学に入った定めです」


 苦笑して中原さんが言う。


「中原さんは、機械学科……なんですよね? どんなところに就職するんですか?」


 そう聞いた私の言葉を遮って。


「わー、今日はそういう固い話はナシにしようよ! 俺、中原の就職の話とか興味ないし。それよりも、二人の話聞きたいなっ」


 首を傾げて笑った柳沢さんは、年齢よりも子供っぽくみえてちょっと可愛い。


「私達のことですか?」


 亜美がくすっと笑って聞き返す。


「そうそう、例えば、彼氏はいるのか、とか。どんな人がタイプか、とか」


「彼氏がいたら、合コンなんて来ないですよ。ももも、最近失恋して、新しい恋を見つけるために来たんだよね」


 亜美がこっちを見てにこっと笑う。


「う、うん……」


 そんな顔で見られたら、頷くしかないじゃない。


「えっ、そうなの? じゃあ、俺! ももちゃんの彼氏に立候補する!」


 立ち上がって右腕をまっすぐ上げて、はいっはいって言って、左手で自分を指さす柳沢さん。あまりにも大きな声で言うから、横で話してた他の四人もこっちに視線を向けるから、私は苦笑した。

 そんなこと言われても、ねぇ……

 いくら失恋には新しい恋! って言われても、合コンに来ていきなり彼氏に立候補とか、あり得ないし。そんなすぐには恋できないよ……

 まだ、もうちょっと失恋の余韻に浸らせて下さいよー。

 心の中で愚痴って、ほとんど口をつけてなかった、ビールジョッキを手に取り、口をつけて一気に飲み干す。

 ぷはっー。


「おおー、ももちゃんいい飲みっぷりだね! どんどん、酒のお代わり頼もう!」


 そう言われて、次々に運ばれてくるお酒を片っ端から飲んでいく。


「いいね、いいね」


 そんなことを言いながら柳沢さんも、私の飲むペースに合わせて、ガブガブ酒をあおり、どんどんテンションが上がっていく。

 付き合おう、とかなんとか言ってうるさくまとわりついてくるのが気持ち悪くて、どんどんお酒のペースを上げていく。

 隣で亜美が。

(もも、ちょっと飲みすぎじゃない? 大丈夫?)

 心配そうな顔で囁くのに、大丈夫と答える。

 お酒は強い方だし、まだ意識ははっきりしてる。ただ、素面(しらふ)じゃ、柳沢さんの会話をスルーできないから。



 でも後になって、亜美の言葉を聞かなかったことを後悔するんだけどね――




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