表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
恋をあきらめたその時は・・・  作者: 滝沢美月
本編『恋をあきらめたその時は・・・』
2/71

第1話  桜は美しく、人を魅了する



「佐倉、こっち手伝ってくれる?」


 ホールで片付けをしてた私は、そう呼ばれてキッチンに戻った。


紅谷(べにや)さん、何を手伝えばいいですか?」


 紅谷雪路(ゆきじ)さん、大学三年生。シフトが一緒になることが多く、私がバイトを始めた時からいろいろと教えてくれるバイトの先輩である。


「これとこれ運んで」


「はいっ」


 注がれたコーヒーとサンドウィッチをトレンチに乗せてホールへ戻る。


「お待たせしました」


「佐倉ちゃん、ありがと」


 そう言って、常連の老齢の男性が笑う。数年前に奥さんを亡くしてから、この喫茶店でコーヒーを飲むのが日課になっているらしい。毎日顔を合わせるうちに名前を覚えてくれた。

 そうして少し話してると、視線を感じて振り返る。

 ばちんっ。

 なんと彼が私を見てて、目があった。今日も彼は一人だった。


「なにか御注文ですか?」


 私は彼のテーブルに近づき、尋ねる。彼は私が話しかけてきたことにビックリしたようで、少し戸惑ってから言った。


「いや、違います」


「そうですか……」


 私はそう言って、小首をかしげながらキッチンに戻る。確かに彼は私を見てて目があったのだけど……見られてたと思ったのは気のせいだったのかしら。

 夕方の混雑する時間帯になり、ホールとキッチンを行ったり来たりして……その間も彼からの視線を感じる。

 やっぱり、見られてる?

 あっ、もしかして、いつも盗み見てるのがばれたのかしら? そう思って焦ってはみたのだけど、それだったらさっき文句を言ったはずだと思い、とりあえずバイトに集中する。

 やっと注文と提供が落ち着き、キッチンに戻ってはぁーっとため息をつく。すると、紅谷さんが。


「なぁ、あの客」


 そう言って、目線で窓際、角の席を見て。


「佐倉の知り合い?」


 って、聞くの。私はえっと紅谷さんを見る。


「えっと……」


「さっきからずっと、佐倉の事見てる気がするんだけど、俺の気のせいかな?」


 そう言うの。

 私は心のなかで、やっぱり? と思わずにはいられなかった。


「気のせいですよー」


 紅谷さんにはそう誤魔化したのだけど、私は彼に見られているということを確信した。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ランキングに参加しています。ぽちっと押して頂けると嬉しいです!
小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ