表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
恋をあきらめたその時は・・・  作者: 滝沢美月
本編『恋をあきらめたその時は・・・』
1/71

プロローグ  彼の本当の想いを知っているのは、私だけ 



 窓際の角の席、決まっていつもそこに座る。

 注文するのはアイスコーヒー。夏でも冬でもこの一年、注文はいつも同じだった。

 彼が来て少しすると、女性が来る。周りからは恋人同士に見えるだろう。私も初めは彼女だと思ってたけど、しばらくして違うと気づく。彼女には頻繁に電話がかかってきて、話す声は艶っぽく相手に好意を示してることがすぐにわかった。

 そして彼はそんな彼女を好き……

 頬を染めて電話で恋人と話す彼女を見る彼の瞳は、優しさの中にせつなさがちらついてる。そんな彼の“片思い”に気づいたのは私だけだろう。



 私は駅前の喫茶店でバイトをする佐倉(さくら)もも、大学一年生。去年から始めたこのバイトは、常連のお客様が多い。店長は「お客様にとって喫茶店で過ごす時間は生活の一部」って言っていた。確かに、毎朝コーヒーを飲みに来る老齢の男性、ランチを食べにくる駅前のデパートの従業員、勉強をする学生。穏やかに流れる時間の中に、喫茶店に訪れる人それぞれに物語があるように感じられて、それを見ているのが楽しかった。



 ある日、彼が珍しくずっと一人だった。外は、雨。風が強く吹き、大粒の雨玉が地面を打ちつけていた。彼は時々アイスコーヒーを飲む以外はずっと窓から外を眺めている。その瞳は大切な人を想って、時折揺れる。

 気が付いたら目線はいつも彼を追っていて、彼女を思って切ない顔をする彼を見ては、胸が締め付けられるように痛んだ。



 名前も知らない彼。


 何をしてるのかも知らない彼。


 好きな人がいる彼。


 だけど、気付いた時には好きになっていた。

 


 気持ちを伝えようとは思わない。

 

 ずっと片思いで構わない。

 

 ただ、彼の恋が報われますように……その時は、そう願うばかりだった。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ランキングに参加しています。ぽちっと押して頂けると嬉しいです!
小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ