アリィたちの現状
その日がやってきた。作戦は三部隊による進軍と捜索である。
「飛行魔術を用いて上空から魔力探知を行っている魔術師からの報告が入りました。森のこの箇所に高めの魔力を感知できたみたい。ナキ君は部隊をこの地点へ向けて真っ直ぐ前進してください。そしてもう二部隊は左右から進んでもらいます。これでこちらの動きを察知して横に逃げましたら遭遇できますし、後退しましたらそのまま進みます。森の奥は崖でありその先はもうどこにも行けません。よって袋の鼠となりどのみちおしまいであり、よってここで仕留めます」
ロニは総指揮官として地図を広げて説明をし現場の部隊長三人は最後の調整として話を聞いていた。隣の地区のワカは私よりも年上のベテランの戦士であり戦後に勇者の地位を継承した者。そして勇者アリィは……不在であり代理として戦士ルッサが話を聞いていた。
「あの人は……引退したのか?」
説明会議が終わった後に私はルッサに久々に挨拶を交しそれから近況を尋ねた。ようやく聞けたがしかし……
「……そんな感じですね」
バツの悪そうな表情でルッサが答えた。その表情を見て私は最悪のことを想像する。
「けどお前は勇者の称号を継承していない。あの人は正式には引退していないがここにいない。集合が掛かったのに来ないはずがない。来られないのなら勇者の称号を譲らなければならない。そしてあの人が来ないはずがない……お前まさか」
「ナキさん、俺の話を聞いてください」
「私があれほど言ったのにお前は……」
「ナキさん、落ち着いて!」
「どうして今日まで堪えてくれなかった! 勇者アリィの晩年が! その最後が部下からの追放だなんて!」
「追放はしてねぇよ! 頼むから俺の話を聞いてくれ!」
ルッサの叫びに私は口を閉じた。そして彼の苦悶の表情に私は同情した。
「ナキさん! これでも俺達は我慢したんですからね! そこは分かってくれよ、なぁ! 追放はしていません。でも、あんたの言葉が無かったらとっくに追放だよあいつ! いいかあんたとの義理を俺はちゃんと守ったんだ。これでもじゃなくてこんなにもだ。悪く捉えてもらったら嫌だぜ」
「すまなかった。私との約束をそこまで守ってくれて感謝する。それで現状はどうなっているんだ」
「もう一緒に仕事をしなくなっている。あの人は単独で動いてなんかやっている。何をやっているのかわかんねぇけどさ。こっちは言い方は悪いがかなりラクになったよ」
「足手まといがいなくなって、か」
「……ああ、そうだよ。事実だからしょうがないよ。でもそのほうがかえってあの人にとっても良いかもしれないよな。部下や後輩にダサいところを見せずに済んでさ。一応この作戦のことは知らせておいたよ。だから先に単独で行っているんじゃないかな。だからまぁ参加はしているとは思うんだ。いない可能性もあるけどさ」
「いや、絶対に参加はしているな……そうか一人でか」
「ああ一人だな。それとあの人は離婚したようだ。奥さんも我慢の限界だったようで」
「ああ……そこに驚きはないな。ついにやっと、というところだ。よくもったもので残念でもなく当然か。職場でも立場が無くなり家庭でも立場が無くなった男が一人で戦場に」
「死に場所でも求めているんじゃないですかね。まぁ俺達がもうどうこうする段階の話じゃないんですよ。あの人は自分の思うがままに生きてそして死ぬ、自ら望んでのことです。俺にはもうこれ以上何も言えない」
「……じゃあ行こうか。私たちのも最後の戦いになるかもしれないしな」
こうなったか、と私は思った。使命のために独りで戦うことを選んだ、それもまたあの人らしいなと。私はそう思うしか、なかった。それ以外の言葉は必要ない。でも、結局これしかできないのか?
私があの勇者に出来ると言うことはただ見捨てて……見捨てるように命令され強制され、そしてのちにその死を確認することしかできないのか? それだけなのか? たったそれだけしかないのか?
……そうであることを受け入れるしかないのか?




