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必殺技図鑑

【必殺技図鑑】アイアンプレッシャー(『特防美少女騎士ミロック』ep1より)

作者: 特防美少女騎士(ナイト)ミロック
掲載日:2026/02/11

「ガベギヘアッ! バホ~……!」


 鎖に絡め取られたイノシシ頭の巨漢、サカナイノシシの体躯が宙に舞う。

 身を包むウロコが現代都市の日射に照らされ、波打つヒレが場違いなキラメキをチカらせた。


「──う、ォらァ!」

「ガベヘアッ! ギッ」


 長い髪を翻したミロックは、軽装鎧に包んだ小柄な体を力一杯に駆動し、マッチョ巨体をアスファルトへと叩きつける。

 ミロックと比較して縦横厚みが3倍にもなる超巨体だ。魔術防護のかけられたアスファルトに沈むのさえ、サカナイノシシの強靭筋肉を柔らかくするには充分な威力を発揮した。


 けたたましい金属音を立て、胸から伸びた鎖を籠手付きの両手で引き寄せ、手のひらほどの魔法鉄球を回収するミロック。

 潰れたままのサカナイノシシを前にして、小さな女騎士は背後に魔鉄球を振り回し、カン高い金属音は次第に唸りを帯びた重啼音へと切り替わる。


 いつかミロックの胴体ほどの直径まで膨張した鉄球は、振り回る鎖を軋ませ、サカナイノシシが何とか起き上がる頃には、おぞましい雄叫びを上げる鉄の台風と化していた。


「オ~バホホ! ブヘア──」

「っ、そら!」


 サカナイノシシが何やら音を発しながら立ち上がると、ミロックは間髪入れずに投げ出すように身をよじり、鎖に繋がった鉄球を空高く放る。

 それはイノシシ頭より更に高く、またかなり手前の、筋肉魔獣には届かない上方へと飛び上がった。


 ミロック騎士は攻撃を外したのか? 当の本人は鎖に引っ張られ、中空まで小柄な体を投げ出される。

 この攻撃は失敗か? 中天に身を横倒したミロックの体に、サカナイノシシの豪腕が伸びる。


「ギヘィア! バフオォ~!」

「──"身体鋼鉄化"! ふッ!」


 水掻き付きの破壊手が殺到する中、ミロックが鎖を手繰り寄せて空中で体を回し、金属音を立てて引き寄せられた鉄球を蹴りつける。

 広げられた巨漢の両手間をすり抜けて、膨らんだ鉄の球がサカナイノシシの胸を打った。


「ギィ! バ、ハ──」


 伸ばされた鎖は軋み、もう片端の小柄を引き寄せる。反転しながら引っ張られたミロックは、片足を突き出す体勢になりながら、もう一息の魔法をかけた。


「"身体鋼鉄化"! はあぁあああっ!」

「バヘ──ガベハァアッ!」


 鋼鉄化の魔法は使い手に鉄の堅さと、重量をも与える。速度、質量、堅牢な体。

 鉄の足により、鉄の砲弾が蹴りつけられ、サカナイノシシの胸は再びの衝撃に撃ち抜かれた。


 巨体が微細に跳ね、制御を失った殺人力が雷となって辺りに飛び散る。ミロックは鉄球を引き寄せながら、もんどり打って転がり、アスファルトに片膝を立てて着地した。


「ガァ、ア……ギョブハアッ! ブホァアア~!」


 サカナイノシシが倒れると同時、ビル立ち並ぶアスファルト路上にて、大爆炎が立ち上がる。

 ミロックは燃え残りの塵を見るまで警戒して、息をつき鎖を握ったまま視線を向けた。


 向かいのカフェ店内では魔術障壁越しに戦いを見届け、眼鏡をかけた長髪の女性が安心して、静かな読書へ視線を戻す。

 ……これが魔法都市ターミナルバークの日常なのだ。


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