第7話
ここはウエスの森の丸太小屋。
ノーザリアの偵察から戻ったホウオウとスザク。イストリアとノーザリアとの戦争が秒読み段階だと知ったフィーネたちは、その裏の三司祭の陰謀を防ぐために行動を起こす。エリーゼの力を借りてウエス国王にノーザリア国王との謁見の仲介を依頼した。
「お父様から返事が来ましたにゃ」
エリーゼが手紙を読む。
「ノーザリア国王の了解を得た。謁見を許可する。ただし、フィーネとリリィ、エリーゼの3名のみ」
「とりあえず、謁見は出来そうね」
フィーネはホッとした顔をした。
「でも、面会する人を指定して来たのは気になるな」
イブが言う。
「気をつけた方がいい。油断は禁物だ」
ゴブローが真剣な顔で言った。
「戦争か。人間は懲りないな」
ミカがつぶやく。
「とにかく、まずはウエス国王と会って、ノーザリアに向かおう」
ホウオウが言う。
「ところで、フィーネ。その左手の指輪は何?」
スザクが目ざとくフィーネの左手に煌めくリングを見つけた。
フィーネは、一度オルガの方を見る。オルガは無言で頷く。
「実は、私とオルガは婚約したの」
フィーネが顔を赤らめて言うと、
「おめでとう!」
その場の全員が声を合わせた。
「フィーネ、オルガ。本当に良かった」
リリィは、目に涙を浮かべてフィーネに抱きついた。
「オルガ!やるじゃないか!」
ゴブローがオルガの背中を叩く。
「よく分からないけど、良いことなんだよな?」
ハクは、状況を理解していないようだ。
「フィーネ、覚悟を決めたんだな」
イブが言う。
「エルフと人間か。わらわには分からんな」
ミカは、腕組みをして少し離れた場所から見ている。
「皆んな、ありがとう。私たち幸せになるわ」
フィーネが恥ずかしそうに言う。
リリィは、オルガにウインクした。
(私の夢が叶った......!)
「家族キー!」
「おめでとうキキー!」
モックとドンキーも喜びを爆発させた?
その日は、皆んな興奮して夜まで騒いでいた。
リリィとフィーネは、小屋の裏で星空を眺めている。
「フィーネ」
「何?リリィ」
「オルガには、前に言ったんだけど」
「ええ」
「私ね。フィーネとオルガの子供になるのが夢だったの」
「そうなのね」
「その夢に手が届きそうで、私、こんなに幸せで良いのかな?って思う」
リリィは涙声だ。
「リリィ、あなたは大切な家族よ。それは変わらない。ずっと」
フィーネはリリィの頭を撫でる。
「私ね。前世は良いことが無かった。友達も家族も、味方が誰もいない。ひとりぼっちだったの。だから、今の幸せが怖い......」
リリィの目から涙が溢れる。
「リリィ。私たちはずっとリリィの味方よ」
「私、この幸せも"嘘"なんじゃないかって、無くなっちゃうんじゃないか?って、いつも不安なの。」
「うん」
「ねぇ?フィーネはいなくならないよね?」
リリィはついにボロボロと泣き出した。
「リリィ、安心して。私はもういなくならない。リリィがお婆ちゃんになって孫が出来るまで、ずっと一緒よ」
フィーネはそう言って、リリィを抱きしめた。
「......絶対だよ、フィーネ......」
「もちろんよ」
フィーネとリリィの姿を離れた場所からオルガが見ていた。
オルガは指で涙を拭ってその場を立ち去った。
ノーザリア国。
城の執務室で窮屈そうにしているのは大臣のバロール。その正体は魔神教三司祭の一人軍事司祭バロールである。
「いよいよだ。」
その真っ赤な目からは狂気が滲み出る。
「ゲンブ......弟よ。お前の仇は撃つ」
ドンッ!
バロールは机を叩いた。
魔神城。
その最深部の研究室。
一人の少女が研究に没頭している。
「もうすぐ、おもちゃが完成する、楽しい!」
研究司祭メルティナは、無邪気な笑顔で何かの薬を調合している。その背後には、巨大な影が蠢く。
「バロール。ゲンブみたいに簡単に壊れちゃダメだよ。あなたもあたしのおもちゃなんだから。きゃははは!」
その目は狂気に満ちていた。
ウエスの森の丸太小屋。
フィーネたちは、旅の支度を進めていた。
「わらわのツノカバーはどこじゃ?」
「ぼくの荷物の中に変なものを入れたのは誰だ!」
「わらわの荷物を触るな!イブ!」
「ぼくのカバンに入れたのはお前だな!ミカエル!」
「何を言うか!」
「やるか!」
「いいだろう、表に出ろ!」
イブとミカエルが部屋を出ようとする。
が、ドアの前にはフィーネが仁王立ちで立っている。
「イブ!ミカエル!」
フィーネは鬼の形相で二人を睨む。
「ごめんなさい......仲良くします......」
イブとミカエルは大人しく旅の支度を進める。
「キー!」
「キキー!」
「にゃー!(猫)」
「待てー!(竜)」
留守番のモックとドンキー、エリーゼとハクが追いかけっこをしている。
「ハク!エリーゼ!準備は終わったの?」
フィーネが立ちはだかる。
「おいらとエリーゼは終わったよ」
「終わりにゃー」
「じゃあ大人しくしてて」
フィーネに促されて、ハクとリリィは人の姿に戻る。
賑やかに旅の支度を進めるフィーネたち。それぞれの想いを胸に、ついに世界の命運を賭けた旅に出発する。




