第6話
ここは大陸の北に位置するノーザリア国。
時は少しだけ遡る。
スザクとホウオウの姉妹はエルドランドからノーザリアに向かっていた。
険しい山を登り国境を越えると一面の雪景色が広がる。
「スザク、行くわよ」
「行きましょう、姉さん」
二人は木の板を両足に括り付け、雪上に立った。
急斜面を滑り降りていく。
新雪をかき分け、美しい弧を描きながら、二人は滑り降りて行った。
「あそこに城が見えるわ!」
「スザク!あれに向かうわよ!」
二人は、ノーザリアの城下町を目指す。
ノーザリアの城下町。国最大の都市であり、国民の8割が住む雪上の大都市。ほぼ一年中雪に覆われた雪上に浮かぶ城である。
スザクとホウオウの二人は軽々と城壁を登り、城下町に侵入する。
城下町は、かなり発達している。何故か雪も無く、城壁の外よりも温かい。
「ここがノーザリアの町......」
スザクが周りを見渡す。
「遊んでいる暇は無いわ。城に向かうわよ。スザク」
ホウオウはスザクに言った。
ノーザリア城。
雪原にそびえる美しい城。その守りは堅牢で鉄壁である。
スザクとホウオウの二人は、城門の裏側から潜入することにした。
壁をよじ登り、敷地内に潜入。
侍女が通り掛かる。
二人は手際良く侍女を気絶させて着ている服を奪う。
「気を抜かないで、スザク」
「大臣を探しましょう」
二人の目標は、最近来たと言う新しい大臣だ。身長3メートル近い大男。城内でも目立つ存在の筈だ。
「雪山の中とは思えないくらい温かいわね」
スザクが言う。
「魔力で町全体を温めているようね」
ホウオウが答える。
王の間に近い広間。一際大きな山のような男が歩いている。綺麗に剃り上げた頭、筋肉質の体、片目に眼帯をしている。
「国王陛下に話がある」
男は王の間の護衛に低い声で言う。
王の間の扉が開き、男は中に入る。
「バロール大臣よ、何か用事か?」
国王は面倒くさそうに言った。
バロールは、王の顔を真っ直ぐに見て言う。
「イストリアが軍備を整えつつあります。我がノーザリアが目的との情報を得ました」
「イストリアが?何の得がある?」
国王は怪訝な顔で聞く。
「この国の魔石鉱山が狙いかと存じます」
「魔石鉱山か......」
国王は歯軋りをした。
「こちらから先手を打ちましょう。今ならイストリアは油断しています」
バロールは、王の顔を真っ直ぐに見据えて言う。
「わかった。バロール、其方に任せる」
「御意」
バロールは王の間を出ると、ニヤリと笑った。
その一部始終をホウオウとスザクは聞いていた。
「ノーザリアとイストリアが戦争になる......」
「大変だわ、姉さん」
「大臣をつけるわよ、スザク」
二人はバロールを尾行した。
バロールは執務室を通り過ぎて、地下に向かう。
長い階段を降りると扉があった。バロールが扉に手をかざすと、赤く輝き扉が開いた。
遅れてホウオウとスザクがやって来る。扉に耳を当て、中の様子を伺う。
バロールが床に手をかざすと魔法陣が現れた。その中心に小柄な少女が姿を現す。三司祭の一人メルティナだ。
「メルティナ、全て順調だ」
バロールが言う。
「きゃは。戦争だね!楽しいね!」
メルティナは無邪気に笑う。
「俺は、もう少し火種を増やしてから、ここを離れる」
バロールが言うとメルティナは少し不機嫌になった。
「バロール、あなたも戦うのよ。あたしがあげた力を試さなきゃ」
「......わかった」
「楽しみにしてるね。じゃあねー」
メルティナは消えた。
入れ替わりで白い仮面の人物が現れる。三司祭の一人アズラエルだ。
「バロール、そちらは頼んだ」
アズラエルはすぐに消えた。
バロールは一瞬だけ苦虫を噛むような表情を見せたが、すぐに真顔に戻った。
部屋を出たバロールは執務室に篭もる。
スザクとホウオウは、ノーザリア軍の動きを探ることにした。
戦争の準備は着々と進み、どちらが先に仕掛けてもおかしく無いほどに緊張が高まっていた。
「一旦、丸太小屋に戻った方が良さそうね。」
「三司祭......何を考えているの?」
ホウオウとスザクは、丸太小屋に戻ることにした。
数週間後。
ホウオウとスザクは丸太小屋に戻った。
「三司祭は、ノーザリアとイストリアの戦争を起こそうとしてる」
ホウオウが言った。
「私たちになにが出来るかしら?」
「戦争は、沢山の人が死ぬ......嫌だよ、そんなの」
フィーネとリリィは真剣な顔で聞いている。
「バロールはノーザリアに残ってる。多分、戦いは避けられないわ」
スザクが言う。
「私がお父様に仲介を頼んでみますにゃ」
エリーゼが言う。
「エリーゼ、頼むわ。私たちがノーザリア国王と謁見出来るように手配してくれる?」
フィーネがエリーゼの顔を見て言う。
「わかったにゃ。」
「エリーゼが家族で良かった。頼りになるね」
リリィが言うと、エリーゼは少し照れて笑った。
「三司祭......メルティナ。好きなようにはさせないわ。」
フィーネたちは、世界の命運を決める戦いに身を投じることになるのである。
(探して......)
メルティナの残滓の声は、何を求めているのだろうか?




